sharphardstrong(名古屋) 2025年3月14日〜4月29日
文谷有佳里
文谷有佳里さんは1985年、岡山県生まれ。2008年、愛知県立芸術大学音楽学部作曲専攻卒業。2010年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。
主な展覧会に、「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」、瀬戸現代美術展2019など。2022年1-3月の「愛知県美術館 若手アーティストの購入作品公開第3弾」でも作品が展示された。
2022年には、ギャラリーヴァルール(名古屋)で個展を開催。「ONーものと身体、接点から」(愛知・清須市はるひ美術館)にも参加している。
空間、環境に対する自らの現在性の感覚、身体性による応答によってドローイングを展開。連鎖、広がり、深度を伴ったパースペクティブを生成させる。

白い地に対して、多様な黒い線が引かれ、そこに空間が生まれる。文谷さんの作品の魅力は、線によって、地の空間の多様性が開かれることにある。
シンプルだが、同時に豊かである。即興性と疾走、浮遊、律動の感覚、自在さと、形式性、構築性、精緻なシステムが共存している。
緩みなく、凛として張り詰め、繊細にして大胆。運動と静止、瞬間性と反復性、パルス、永遠性、強さとしなやかさ、凝集と拡散、分離と結合など、相対する表情を併せ持つ、Aであり、同時に非Aである多元空間である。
「fw: drawing」 sharphardstrong 2025年
今回は、Part1の2025年3月14日-4月1日に「本と原画の展示」、Part2の4月4-15日に「本の展示と壁画制作」があり、Part3の4月18-29日に壁画展示があった。

これまで公共施設の窓ガラスに制作したことはあったが、白い壁に展開した作品を筆者が見るのは初めてである。
矩形の支持体に描かれた作品とも、窓ガラスの向こうに現実世界を透視するときの見え方とも明らかに異なる。
広がりの中、鑑賞者の移動、視線のうつろいによって、見え方が次々と変化する。斜めに見ると、視線を引き込む深度、スリリングな空間性が発見される瞬間があって、その変容、包摂的な世界、新たなランドスケープに引き込まれる。
建物の空間や構造との関わりも興味深い。今後を期待させる巧みな展示であった。