過去の受賞者のその後を紹介
「やきもの最前線 国際陶磁器展美濃受賞者の現在」が2024年9月1日〜2025年1月13日、岐阜県多治見市のギャラリーヴォイスで開催される。
セラミックパークMINO(岐阜県多治見市)をメイン会場に2024年10月18日〜11月17日の日程で開かれている「国際陶磁器フェスティバル美濃’24」に合わせ、過去の受賞者のその後の展開を紹介する。
part1は、2024年9月1日〜10月27日、part2は、11月2日〜2025年1月13日で、それぞれ6人を展示する。
10月19日には、大阪中之島美術館の館長、菅谷富夫さんによるレクチャー「現代陶芸の立ち位置」が催された。
「コンテンポラリーアートとしての陶芸」「造形としての陶芸」を目指すなら、陶芸について回る美術と工芸の二重構造や、自分たちが当たり前にしていることの枠組みを疑ってかかる必要がある。美術と工芸の二重構造、上下関係を前提に、現代美術の側からフォーカスされるだけでいいのか。つくられた「伝統」など、枠組みによって作らされていることに無自覚でいいのか。あるいは、ロマン主義的な、魂の発露である自己実現のための表現で足踏みをしていいのかーー。
もう一度、現代陶芸と、作家自身のポジションを相対化し、捉え直さないと、新しい「造形としての陶芸」は生まれないのではないか、という内容。会場に集まった多くの陶芸関係者が熱心に聞き入っていた。
part1 2024年9月1日-10月27日
伊村俊見
1961年、大阪市生まれ。金沢美術工芸大学卒業。岐阜県瑞浪市在住。1995年の国際陶磁器展美濃陶芸部門でグランプリ。岐阜市のギャラリーなうふ現代などで個展を開いている。2023年、作品集制作。2024年、第18回パラミタ陶芸大賞展に参加。
最近は、土を固定した塊でなく、粒子として変容し続ける自然界の現象、プネウマのような存在や生命の原理、いのちのエネルギーと捉え、うつろい続ける一瞬の相として、動きのある形態を作っている。
加藤智也
1972年、岐阜県多治見市生まれ。多治見市陶磁器意匠研究所修了。2008年、台湾国際陶芸展審査員賞、2009年、ファエンツァ国際陶芸展グランプリ、2017年、国際陶磁器展美濃金賞などの受賞歴がある。
うねるように絡みつく、しなやかな形態。立ち上がる力強さの中に生き物のような変則的な動きが感じられる。表面に見られるドット模様の規則性、粗密の変化によってダイナミズムと繊細な感性が共存する作品になっている。
中島晴美
1950年、岐⾩県⽣まれ。⼤阪芸術⼤学デザイン科陶芸専攻卒業。2003年から2014年まで愛知教育⼤学教授を務めた後、多治⾒市陶磁器意匠研究所所⻑。2009年度日本陶磁協会賞受賞。2023年、円空大賞展(岐阜県美術館)。
土素材と徹底的に向き合い、焼成を経て生まれる有機的、生態的な姿を目指している。制作過程の連続する瞬間に成長、増殖する形態は、自分の中の本能と理性、デモニッシュと幾何学性のせめぎ合い、そして人類の進化をも指し示している。
馬場康貴
1991年、長崎県生まれ。多治見市陶磁器意匠研究所修了。陶磁器意匠研究所セラミックスラボコース修了。長崎県波佐見町在住。2017年、第11回国際陶磁器展美濃銅賞。国内外で精力的に作品を発表している。
小さな磁土の白いパーツを幾重にも階層状に貼り重ねることでグラデーション豊かな形態を作り出す。器、オブジェとも、そのうつろうような形態は、うちからの鼓動を感じさせるような強さと、細やかな陰影を帯びている。
森綾
1989年、愛知県生まれ。2012年、愛知教育大学造形文化コース卒業、2014年、同大学院教育学研究科芸術教育専攻修了。現在、名古屋造形大学の非常勤講師。2014年の国際陶磁器展美濃で審査員特別賞。2021年に京都の「現代美術 ⾋居」で個展。
ぬるぬるした触覚性を感じさせる生っぽい質感と、動きを感じさせるたたずまいが特徴。揺らぐような襞状の造形や、うねるような膨らみ、微妙な色彩が、内なるエネルギーで変化していくような生体的な存在感を放っている。
山浦陽介
1982年、福井県生まれ。静岡文化芸術大学卒業。多治見市陶磁器意匠研究所卒業。岐阜県土岐市で制作。2021年、国際陶磁器展美濃で坂崎重雄セラミック賞。2022年、「ホモ・ファーベルの断片―人とものづくりの未来―」に出品。
鋳込みによる磁器土の板を緻密に積み重ねたような形態は、シャープで、張り詰めたような緊張感を醸している。角や武器を想起させるように鋭角的。同時に細部に目を移すと、制作過程で出たバリのような突起が随所に残り、手技の温かさを感じる。