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豊田市美術館が2021年度の開催予定展覧会を発表

 愛知・豊田市美術館が、2021年度に開催予定の展覧会を発表した。

ボイス+パレルモ 4月3日〜6月20日

概要

 第二次世界大戦以降の最も重要な芸術家の1人、ヨーゼフ・ボイス(1921-1986)は「本当の資本とは人の持つ創造性である」と語り、社会彫刻の概念から社会全体の変革を企てた。

 本展では、60年代の最重要作品である《ユーラシアの杖》をはじめ、脂肪やフェルトを用いた作品、「アクション」の映像やドローイングなど、ボイスの芸術的実践に改めて着目する。

 ブリンキー・パレルモ(1943-1977)は、ボイスの教え子の1人。早世の画家ながら、60年代半ばからの短い活動期間に残した抽象的な作品は、絵画の構成要素を再構築しながら、色彩や形の体験を通して、私たちの認識や社会的な制度に静かな揺らぎをもたらす。ボイスは後に、パレルモを自身に最も近い表現者だったと認めた。

 一見対照的な2人のドイツ人作家の作品は、芸術を生の営みへと取り戻そうと試みた点で共通していた。本展は、両者の1960-70年代の作品を中心に構成される。約10年ぶりとなる日本でのボイス展であるとともに、公立美術館としては初めてのパレルモ展となる。

ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys, 1921-1986)

 ドイツのクレーフェルトに生まれ、オランダとの国境近くの町クレーヴェで青年期までを過ごす。
 第二次世界大戦に通信兵として従軍。ソ連国境付近を飛行中に追撃され瀕死の重傷を負うが、現地のタタール人に脂肪を塗り込まれ、フェルトに包まれることで一命をとりとめる。
 この体験とそこで用いられた脂肪とフェルトが後のボイスの制作における重要な「素材」となる。戦後は、芸術家を志し、デュッセルドルフ芸術アカデミーに学ぶ。
 1961年に同校教授となり、パレルモをはじめ多くの芸術家を育成した。
 「拡張された芸術概念」及び「社会彫塑」を唱えるボイスは、教育活動をはじめ、政治活動や環境問題までをも自らの問題として引き受け、「緑の党」の結党に関わるなど、広く公衆に語りかけ続けた。
 最晩年の1984年には日本に招かれ、展覧会のみならずアクションや学生との討論会を企て、少なからぬ足跡を残した。
 1986年に歿。
 戦争の加害者であり、かつ被害者でもある自身の体験に基づく作品制作と、芸術を社会のあらゆる領域へと拡張しようとした姿勢において、ボイスが今日、最も影響力のある芸術家のひとりであることは間違いない。

ブリンキー・パレルモ(Blinky Palermo, 1943-1977)

 ドイツのライプツィヒに生まれる。本名はペーター・ハイスターカンプ。
 1964年にデュッセルドルフ芸術アカデミーでボイス・クラスに入って早々、マフィアでボクシングのプロモーターのブリンキー・パレルモに由来するあだ名をつけられると、それをそのまま作家名にした。
 学友にはゲルハルト・リヒターやイミ・クネーベルといった現代ドイツを代表する作家がいた。
 アカデミー在籍時より20世紀初頭のカジミール・マレーヴィチやピート・モンドリアンらの抽象絵画、同時代のミニマリズムの動向に影響を受けながら、カンヴァスや木枠といった絵画の構成要素自体を問い直す作品を手掛けるようになる。
 1977年にモルジブで客死するまで、既製品の布を縫い合わせた〈布絵画〉、建築空間にささやかに介入する壁画、小さなパネルを組み合わせた〈金属絵画〉など独自の制作を展開した。
 絵画制作を通して、色や形、空間などの知覚、認識を問う繊細な作品は近年評価が高まっている。

生誕150周年記念 モンドリアン展(仮)7月10日〜9月20日

 本展は抽象絵画を追求したオランダの画家、ピート・モンドリアン(1872-1944)の画業を紹介する日本では23年ぶりとなる展覧会。詳細は、こちら

 初期のハーグ派様式の風景画から晩年の水平垂直線と原色で描いた〈コンポジション〉シリーズまで、モンドリアンの作品は変化に富む。

 会場では、オランダ、デン・ハーグ美術館の所蔵作品を中心に、よく知られる代表作とは一見異なる画風の初期作品が後期にかけてどのように変化していくのか、時代を追って辿る。

 また、直線と限られた色面によるモンドリアンの絵画構成は、テオ・ファン・ドゥースブルフらと1917年に結成したデ・ステイルの基本理念となり、デザインと建築にも影響を与えた。

 デ・ステイルに関わった作家の作品も併せて展示。今日の身近なデザインにまでその影響がみられるモンドリアン芸術の広がりを見直す。

ホー・ツーニェン展(仮)10月23日〜2022年1月23日

 シンガポール出身の作家ホー・ツーニェンは、映像、インスタレーション、サウンド、演劇といったジャンルを横断しつつ、時に妖艶に、時にダイナミックに見る者を魅了しながら、現代につながる近代以降のアジアの問題に光を当てる。

 ホーの日本の歴史をテーマとしたプロジェクトは、2019年のあいちトリエンナーレの豊田会場における喜楽亭の「旅館アポリア」、2021年春の山口情報芸術センターでの《Voice of Void》に続いて、本展が連続する最後のものとなる。

 本展は、第二次世界大戦中にマラヤ(現在のマレーシアとシンガポール)で活躍し、ともに「マレーの虎」と呼ばれた2人の日本人を軸に展開する。

 その1人は、マレー作戦の先鋒であった山下奉文将軍、もう1人は、後に日本軍のスパイとなったマラヤの盗賊で、戦後は人気を博したヒーロー番組「怪傑ハリマオ(マレー語で虎の意)」のモデルとなる谷豊である。

 マレーと日本を舞台として、そこからさまざまに繋がる物語は、アジア全域にまたがる複雑な歴史を浮かび上がらせる。過去の史実は、幽霊のように私たちの前に立ち現れるだろう。

サンセット/サンライズ(仮) 2022年2月15日〜5月8日

「サンセット(日没、夕暮れ)」と「サンライズ(日の出、夜明け)」。

 それは、毎日、誰にでも、平等に訪れる美しい自然現象である。生きとし生けるものはすべて、この宇宙に流れる悠久のリズムに寄り添いながら生きている。

 「サンセット/サンライズ」の豊かさは、眠りと目覚め、終わりと始まり、死と生、闇と光など、さまざまな象徴や解釈の可能性を差し出してくれる。日没と日の出の前後に現れる薄明の神秘的な時間帯は「マジックアワー」とも呼ばれる。心が揺さぶられる魔術のような光景に立ち会う経験は、思いもかけない美術作品との出会いにどこか似ている。

 本展は、こうした「サンセット/サンライズ」から派生する多様なイメージを手がかりに、豊田市美術館のコレクションを紹介する試み。さらに、招待作家として、愛知県にゆかりのある画家、小林孝亘さんを迎え、静けさと強い存在感をもつその数々の作品を案内役に展覧会を構成する。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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