杉浦非水『ツーリスト』第19年第2号 1931年 印刷・紙 ヤマザキマザック美術館
非水の生きた時代と足跡を約240点の作品で多面的に紹介
日本のグラフィックデザインの先駆者、杉浦非水(1876-1965年) の魅力と足跡、時代背景を紹介する「レトロ・モダン・おしゃれ 杉浦非水の世界」が2023年10月27日から2024年2月25日まで、ヤマザキマザック美術館(名古屋)で開催される。
愛媛県松山市出身の非水は東京美術学校日本画科を卒業後、師と仰いだ近代洋画の巨匠、黒田清輝がフランスから持ち帰った1900年パリ万国博覧会の絵葉書や資料等によって、アール・ヌーヴォーのデザインを知った。
1922-24(大正11-13)年には、ヨーロッパに留学。アール・デコをはじめとするヨーロッパ美術・デザインの潮流に触れた。
こうしたさまざまな影響の中で、特徴を的確に捉える鋭い観察眼、時に繊細優美、時に大胆で力強い変幻自在な作風で、近代化される日本の商業デザインの世界を非水は彩っていく。
そして、カルピスやヤマサ醤油、東京地下鉄道(現・東京メトロ)、鉄道省(現・JR)名古屋鉄道局などのポスター、ジャパン・ツーリスト・ビューロー(現 ・JTB、日本交通公社)の機関誌『ツーリスト』、たばこのパッケージなど、名デザインの数々を生み出すことになった。
特に三越との結びつきは強く、1908(明治41)年の入社以降、1934(昭和9)年の退社まで、三越のポスターや広報誌のデザインを一手に引き受け、「三越の非水か、非水の三越か」と言われたほどだった。
この展覧会では、ポスターや書籍・雑誌のデザイン、広告・商標・パッケージデザイン、写生を旨とした非水が丹精込めて制作した木版画集『非水百花譜』などの作品を分野別に展観、非水の魅力に迫る。
また、非水の旅行鞄やヨーロッパ日記、滞欧スケッチ、『三越』表紙デザインを柄模様とした長襦袢、非水のポスター中の女性をほうふつとさせるレセプション・ドレスや、シャネルのデイ・スーツなども合わせて展示。
非水が憧れ、旅した100年前のフランスの邸宅を思わせるヤマザキマザック美術館4階展示室で、非水の生きた時代と足跡を約240点の作品によって多面的に紹介する。
なお、出品作品のうち約7割は前期・後期で展示替えとなる。
展覧会概要
展覧会名:「 レトロ・モダン・おしゃれ 杉浦非水の 世界 」
会 期: 2023年10月27日(金)~2024年2月25日(日)
※状況によって会期等、開催内容が変更となる場合がある。
※最新情報は同館ホームページの「お知らせ」欄で確認する。
会 場:ヤマザキマザック美術館 4 階展示室
461-0004 名古屋市東区葵 1-19-30(地下鉄東山線「新栄町」下車 /1 番出口直結)
TEL 052-937-3737 URL www.mazak art.com
開館時間:平日 10:00~17:30 土日祝 10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休 館 日:月曜日(1月8日、2月12日は開館)、1月9日(火)、2月13日(火)
年末年始(12月29日~1月4日)
入 館 料:一般1,300円(10名様以上1,100円、小・中・高生500円、小学生未満無料
〔音声ガイド無料サービス〕
主 催:ヤマザキマザック美術館、中日新聞社
特別協力:愛媛県美術館
協 力:株式会社カセットミュージアム
後 援:愛知県教育委員会、岐阜県教育委員会、三重県教育委員会、名古屋市教育委員会、名古屋市文化振興事業団
見どころ
1 非水が表紙をデザインした三越広報誌の数々が大集合!
『みつこしタイムス』『三越』『大阪の三越』『時計と指輪』『御註文の栞』。非水が表紙デザインをてがけた、三越の広報誌の数々は単なる広報誌というだけでなく、通信販売カタログの役割も果たし、まさに三越の顔ともいうべき存在。
都会だけでなく、地方にまで届けられ、最新流行の上質な品々がそろう三越のブランドイメージを定着させていった。
本展では、69冊の三越広報誌を前期・後期に分けて紹介。時にファッショナブルな、時に季節感あふれる、時に絵本の挿絵のような、美しい表紙絵の数々を楽しめる。
2 隠れた名品『非水百花譜』45点を展示!
デザインを本業としながらも、制作の基本として写生を大切にしていた非水。その非水が原画を描き、完成させた木版画集『非水百花譜』のうち、愛媛県美術館所蔵の45点を、前期・後期に分けて展示する。
こまやかな描写、繊細な色彩で表された花々には、植物図鑑的な正確さがあるのみならず、それぞれの花々の持つ情趣や可憐さ、力強さが生き生きと表され、私たちを魅了する。
3 非水のデザインをもとに制作された長襦袢を紹介!
非水の『三越』第3巻第8号(1913年8月刊行)表紙デザインがそのまま使われ、とてもモダンなデザインの長襦袢を紹介。
この長襦袢の元々の持ち主は、島根県出雲市の造り酒屋の令嬢で、1916(大正5)年に鳥取市に嫁いだ女性。婚礼に際して仕立ててもらった数多くの着物類のうちの一着だそう。
非水のデザインが着物に活かされているものは非常に稀なので必見!
4 約100年前の長良川鵜飼の観光ポスターを紹介!
鉄道省(現・JR)名古屋鉄道局と岐阜市の依頼で、非水がデザインした長良川の鵜飼いのポスター2点(前期・後期1点ずつ)を紹介する。
非水が制作したのは、今から94年前の1929年。長良川の水面に勢揃いした鵜舟と屋形船(観覧船)。暗い山や川面を背景に幾重にもたなびく白い煙を単純化して表現し、写真とはひと味もふた味も異なる迫力が感じられる。
イベント
講演会「杉浦非水の目と思考-『非水百花譜』を中心に」
日 時:2023年12月2日(土)10:00受付開始 / 10:30~12:00
講 師:長井健氏(愛媛県美術館専門学芸員)
申 込:11月2日(木)より電話(052-937-3737)で。
定 員:60名
参 加 費:無料、ただし要本展鑑賞券(半券でも可)
開催場所:マザックア ートプラザ(美術館北側隣接ビル)4階会議室
ガイドツアー(会期中第2・4土曜日開催)
ヤマザキマザック美術館学芸員によるガイドツアー。展覧会の見どころをわかりやすく解説する。
日 時:次の日程の10:30から約1時間
2023年10月28日、11月11日、11月25日、12月9日、12月23日
2024年1月13日、1月27日、2月10日、2月24日
予 約:不要
定 員:15名(先着順)
参 加 費:無料、ただし要当日鑑賞券
参加方法:本展鑑賞券を呈示の上、参加証を受け取る。開始時刻5分前までに美術館1階ブールデルの彫刻《果物を持つ裸婦》の前に集まる。