タイルのまちをあるいてみた スタジオレコード展
岐阜県の多治見市モザイクタイルミュージアムで2023年2月18日~5月7日、「タイルのまちをあるいてみた studio record展」が開催されている。
大正11(1922)年に日本で「タイル」という呼び名が統一されてから100年がたったのを記念した企画展。
タイルの魅力を問い直し、新たな方向性を模索する動きがある中、第12回国際陶磁器展美濃(2021年)で、タイルの作品を出品し銀賞を受賞した「studio record(スタジオレコード)」にフォーカスした。その活動を通して、タイルのこれからを考えるのが狙いである。
スタジオレコードは、岐阜と名古屋が拠点の工房。陶芸家・造形作家の宮部友宏さんを中心に、陶芸や木工という複数のジャンルの作家が参加している。店舗などの内装タイルや什器の制作、アートイベントの企画運営など、幅広い活動に取り組んでいる。
今回は、多治見市笠原町を中心に、東濃地域のタイル生産現場を歩き、感じたことや考えたことを展示によって表現している。
単に自分たちの表現をするということにとどまらず、産業の関係者や研究施設とも協働。タイルの新しい可能性を示す意欲的な展示になっている。
展覧会概要
会 場:多治見市モザイクタイルミュージアム 3階ギャラリー
会 期:2023年2月18日(土)~5月7日(日)
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分)
観 覧 料:一般:310円、高校生以下無料(常設展料金で観覧できる)
休 館 日:月曜日(休日の場合は翌平日)
スタジオレコード:2000年、造形作家・宮部友宏と金工家との共同工房としてスタート。現在は、常勤の陶芸家・髙山愛や数名の若手作家のほか、陶芸家の小澤順一、加藤真美らが部分的に参画し活動している。栃木県那須塩原市の美術館や愛知県一宮市のカフェ、岐阜県大垣市の住宅のタイル制作、企業とのコラボ製品も手掛ける。
展示
スタジオレコードの宮部友宏さんは、多治見市笠原町を中心とする生産現場を巡り、タイルに深い関心を寄せた。
タイルメーカー、原材料工場、粘土鉱山、リサイクル処理工場などを巡り、それらの過程の全体を展示に組み込んでいる。
単に技術の更新に注目するのではなく、アーティストとして、タイルの生産、循環の中に新たな価値を見出すような視点が見られ、新鮮で、そして、おしゃれである。
その1つが展示の最初にある小屋「タイルハウス ミノとレコード」である。
タイルの製造過程で使われる、はり板やネット、紙張り用の紙、型、リサイクルタイルなどが素材に使われ、内部は、スタジオレコードの制作現場風の展示になっている。
外壁の下部に、スタジオレコードメンバーで陶芸家の小澤順一さんが作った黒猫のやきものがいる。この黒猫は、展示空間の所々にいる。
「土と木のタイル」は、タイルとテーブルの化粧板を区別なく組み込んでいる。土と木という異素材が等価に並び、豊かな装飾性を生んでいる。
「タンク ファクトリー ビルディング」は、タイルの原料製造設備をモチーフに、架空の工場のイメージで作られた立体作品である。中には、ミニチュアのテーブルや椅子、トイレが見える。
「黒板タイルハウス」は、外壁に「黒板タイル」が張られた、かわいいとんがり屋根の小屋である。外壁に、チョークで落書きができるなど、遊び心のある作品である。
「橦木町長屋のタイル」は、第12回国際陶磁器展美濃(2021年)で銀賞を受賞した作品。古民家を工房として改装する際に出た土壁を再利用している。淡い青色の変化が美しい。
「青サバ」と呼ばれる粘土素材は、不純物が多く、これまでタイルに使われてこなかった。現在、ザラついた土の風合いを生かした用途が模索されている。産業界、研究施設と連携したこうした展示も、興味深い。