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庄司達展「空間から空へ」ギャラリー数寄(愛知県江南市)で2023年5月27日-6月25日に開催

ギャラリー数寄(愛知県江南市) 2023年5月27日〜6月25日

庄司達

 庄司達さんは1939年、京都市生まれ。生後まもなく名古屋市に転居した。1962年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)美術学部彫刻科卒業。1964年、京都市立美術大学専攻科彫刻専攻修了。

 1966年、名古屋市立工芸高校デザイン科教諭に着任(1973年まで)。1977年から1985年までは、名古屋造形芸術短大専攻科非常勤講師を務めた。

庄司達

 1979年、第4回名古屋市芸術奨励賞受賞。1999年から2010年まで、名古屋芸術大学美術学部彫刻科教授を務めた。2010年、平成21年度愛知県芸術文化選奨文化賞。

 主な個展は、1995年、新潟市美術館での「浮かぶ布—庄司達展(柔・空間の散歩)」、1996年、下山芸術の森発電所美術館(富山県入善町)での「庄司達展—布・赤い河」、2010年、愛知・碧南市藤井達吉現代美術館での「庄司達展 空間の航行」。

庄司達

 主なグループ展は、1968年の京都国立近代美術館「現代美術の動向」、1970年、東京都美術館などでの「第10回日本国際美術展『人間と物質』」、1991年、米国サンタ・モニカ美術館などでの「セブン・アーチスツー今日の日本美術展」、1998年、愛知県美術館での「久野真・庄司達展—鉄の絵画と布の彫刻—」、2018年、岐阜県美術館での「第9回円空大賞展」。

 「布の庭にあそぶ 庄司達」展が2022年4-6月、名古屋市美術館で開催され、好評を博した。

庄司達

 同じタイミングで、愛知県美術館では、庄司さんが1970年の第10回日本国際美術展「人間と物質」に出品したインスタレーション作品が再現展示された。また、名古屋画廊では、「庄司達 ドローイング展」も開催された。

 庄司さんは、名古屋の桜画廊や京都のギャラリー16などで個展を開き、主に布を使った作品を発表してきた。近年、ギャラリー数寄でも個展を開き、グループ展にも出品している。

庄司達

 作品の中心は、布を張ったときの緊張感や柔らかさを自在にあやつり、造形性と空間性を表した「布の彫刻」、あるいはインスタレーションである。

 造形性、彫刻性と仮設的な空間性は、作品によって、さまざまなバリエーションとなって現れる。布を張って凜とした力をみなぎらせたり、あるいは、緩めてしなやかな空間をつくったり、あるいは、吊るすことによって浮遊感と形の豊かさを共存させたり・・・。

 布を素材とした独特の造形性、そこに見いだされる彫刻性、布と布あるいは布と仮設された場における空間性、光による繊細な陰影と、それらによって導かれる気配のような現れが鑑賞者をひきつける。 

庄司達

2023年個展「空間から空へ」 ギャラリー数寄

 布の作品を中心に、紙のレリーフもあり、とても充実している。ギャラリー数寄1、2階の全空間を使い、14点を展示した。庄司さんは83歳になられたが、これだけのクオリティの作品を継続して制作していることは驚嘆すべきことである。

 庄司さんによると、2022年の名古屋市美術館の個展が過去作を中心とした回顧展であるのに対し、今回の布作品の多くは新作である。

 布の作品は、造形による視覚性のみならず、布素材の変化による触覚性、あるいは空間によって鑑賞者を導く回遊性を備え、現場に来ないと体験できない魅力に満ちている。

庄司達

 メインの作品は、ギャラリー2階に展示された「空へ(GALLERY SUKI)」である。直径約6メートルの大きな作品である。

 ドーナツ型の布がおびただしい糸で吊るされ、その吊るされているラインの隆起が渦巻き状の大きな流れをつくっている。白いポリエステル布によって形作られる形の優美さ、柔らかさとダイナミズム、白く清澄な響きと静けさ、うみだされた空間の魅力と回遊性・・・。

 この作品は、靴を脱ぎ、作品の下をくぐって、ドーナツの穴部分に入ることができる。中から見ると、外から全体を見渡すときとまったく違う光景を体験できる。

庄司達

 内側から外を見て、下からの目線になると、迫力満点である。布の吊るされた箇所の隆起が押し寄せる波のようにも、どこまでも続く山並みの稜線のようにも見える。

 そのほかの作品も、布を水平に重ねるだけでなく、微妙に傾けるなど実験精神が息づいている。布の造形と構成、配置がしっかり決まっている。

 壁に設置された赤い布の作品「SHOJI KITE(GINNAN)」は、1989年の作品で、当時、桜画廊で発表されたものを修復展示したものである。

 庄司さんの布の作品の独自性は、布素材でありながら、そう思わせないほどに精密に組み立てられているところだろう。その緻密な方法論によって、布といえども、繊細さ、しなやかさ、柔らかさと共に、強さと力学、そして建築性をもっているのである。

庄司達

 いわゆるソフト・スカルプチュアの多くが、重力でふにゃりとしたり、垂れ落ちたり、しぼんだりするのと異なり、あるいは不定形であるのとも違い、構築性があるのである。

 だからこそ、彫刻的であるし、インスタレーションのときには構造と、その間隙の空間性が露わになる。それゆえ、庄司さんの作品は建築家などの関心がとても高い。

 そのほか、2016年の作品だが、切り紙を重ねたレリーフ作品が出品されている。1970年代に鉛筆で紙にかいた線描のシリーズ「原形と写形」のコンセプトをもとにレリーフとして制作したシリーズである。

 紙をずらして積み重ねていくことで、紙の縁が線となって現れ、動きをつくっている。紙の縁の陰影が変化していて、白一色のシンプルな作品ながら、とても豊潤である。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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