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三波千恵展/馬川祐輔陶展 ギャラリー芽楽(名古屋)で2023年4月8-23日

Gallery 芽楽(名古屋) 2023年4月8〜23日

三波千恵

 三波千恵さんは1980年、大阪府生まれ。2010年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科を修了した。

 ギャラリー芽楽では、2012、2017、2019、2021年に個展を開催。2015年、はるひ絵画トリエンナーレ(愛知・清州市はるひ美術館)、2019年に「ゆくりか」(see saw gallery +hibit /名古屋)にも出品した。

 2021年の個展のレビュー「2021年 三波千恵展 —あき地—ギャラリー芽楽(名古屋)」も参照

三波千恵

 三波さんの絵画は、さまざまなストローク、絵具をぶつけたような乱雑さ、即興感、唐突感で成り立っている。ズレの感覚、不調和と言ってもいい。

 混沌である。少なくとも、整然としている絵画ではない。あえて言えば、エントロピーが高くなって、無秩序、ゴタゴタした方向に行っている。

 自然に任せている感じではある。とはいえ、力に任せて描いたわけでないことは、筆触の重なり、絵具と余白との関係から分かる。

ーあき地ー 2023年

三波千恵

 個展のタイトルは前回も「あき地」だった。あき地とは、目的を持たない放置状態の場所。そこには、再現的な対象物も、あらかじめ、どのように描こうかなどというはかりごとも持っていない。

 実際のところ、三波さんは「何も描いていないような絵を描きたい」「どこにもつながらないような絵が描けたような気がするとき、絵が勝手にすきな方に行ってしまう」と書いている。

 あたかも、絵が生き物であるかのようだ。どちらに行きたいのか、その場、その場で、画面に対応していくのだろう。ただ、それは通常あるような方向を外している。絵画の、絵具の、ストロークの、色の「本能」に対応している‥‥

三波千恵

 なにか意味のあるものを描いているのではないのは当然として、予定調和的でもないのだ。

 「具象画」ではないが、狙いをもって、何かを取り出した「抽象画」でもない。そこには、ただ、剥き出しのストローク、さまざまな色彩、絵具の物質感、ざらっとしたマチエールや、かすれ、垂れ、がある。

 調和にとって必ずしも望ましとは思えない無軌道なストローク、不統一な色彩、荒れたマチエールがイノセントに選ばれ、互いに新鮮に出会ったかのようである。

 その不調和、乱雑さには、具象も抽象も、形象も線もなく、そして、ペインタリーというには、あまりに無垢である。

三波千恵

 ただ、色彩と物質、筆触が、重力と反重力が混在し、「絵画」になっている。天地、左右も、かりそめのものである。

 逆説的ではあるが、こうした「絵画」を描くには、繊細な手並みが必要なのだと思う。出鱈目に色を選び、めくらめっぽうに筆を動かすと、こうはならないのである。

 描くことによる計らいがなく、作家が、描くということの体験そのこと自体を、生きること、自由であること、存在することとして向き合ったような絵である。

馬川祐輔陶展 ーlifeー

馬川祐輔

 馬川祐輔さんは1984年、兵庫県伊丹市生まれ。大阪芸術大学工芸学科陶芸コースを卒業後、2008年に多治見市陶磁器意匠研究所を卒業している。

 2014年以来、芽楽では6回目の個展である。また、2023年3月19日~5月14日に開催されている「isokenの造形 やきものの現在2023」にも出品している。  

 とても多様な作品を展開し、細部まで目配りをしている。形態と装飾が一体化し、そのどちらも、ゆるがせにしない。全体には、カラフルな色と模様、ポップな感覚が展示会場全体を生き生きとしたものにしている。

馬川祐輔

 新しいオブジェは、ドットに覆われながら、地色も変化していくなど、にぎにぎしく、元気がよい雰囲気である。上方に増殖するような形態とドット模様、色彩の広がりが調和しつつ、どこかキッチュ感も出している。

 黒色で植物のイメージや渦巻きを描きつつ、底部には青色も使うなど、プリミティブで同時にポップな土器風の作品もユニークである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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