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奥田美樹展「Natural drawing」IDF(名古屋)で6月27日まで

GALLERY IDF(名古屋) 2021年6月12〜27日

GALLERY IDFで奥田美樹展

 奥田美樹さんは1970年、名古屋市生まれ。 1995年、愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業、1997年、同大学院修了。

 一貫して、 草花、小枝、葉、種子など植物のイメージを造形化した作品を制作している。

 絵画、版画、立体、インスタレーションなどのバリエーションがあるが、共通するのは、植物を基にしたシンプルな形の装飾的構成をベースにしている点である。

奥田美樹

 植物の形は、リアルな描写と対極的な単純化、抽象化されたイメージである。植物といっても、豊かな自然というよりは、何げない草花、雑草の印象に近い。

 そのあたりは、奥田さんが生まれ育った名古屋市内の環境も反映しているのだろう。

 奥田さんは、それを自分の中で簡略化、記号化して、作品の装飾的イメージのパターンにしている。

奥田美樹

 おおらかな形といってもいいし、面白い形といってもいい。きっちり整った精緻な形というよりは、天真らんまんという言葉がふさわしいデフォルメがある。

 奥田さんは、あえてそうすることで、内なる命に導かれるような生動感を出したいと願っている。だからだろう、作品は、そうした形の装飾的展開によって空間にリズムと潤いを与えてくれる。

エッチング

奥田美樹

 会場の壁に、美しい青色のインクによるエッチング作品が展示されている。それぞれ矩形の美濃和紙に植物をイメージした形が数個ずつ配置されている。

 採集された植物の形が標本のように並べられた雰囲気だが、それぞれに形が面白く、単純化されていることもあって、どこかかわいい。

 銅板でなく、真鍮板を使い、さらにそれを1つ1つ、はさみで切って版にしている。

 そのため、 真鍮板を切り抜いた植物の形を厚めの和紙に押しつける型押しの効果によって、エンボス風に微妙な凹凸がつくられている。

絵画

奥田美樹

 絵画は、横長の形になっていて、3点が互い違いに壁に並べられた。それぞれのへりの部分に、にじみ出るような鮮やかな植物の形が配されている。

  植物の形が白みがかった空間の中で律動するように美しく現れている感じだ。

 アクリル絵具で地塗りをしてから、テンペラを重ねている。 それを削って線を引くことで、下層の色彩を浮かび上がらせている。

 さらに塗り重ねた白色のヴィトラーユが全体をつややかに覆いつつ、下の層が見え隠れすることで、装飾的でありながら、複雑な模様がある石のような作品になっている。

空間への展開

奥田美樹

 奥田さんは、公共の施設など広い空間で展示する場合は、インスタレーションを出品することが多い。「ながくてアートフェスティバル2019」を参照。

 今回は、ギャラリーの限られた空間ながら、キャンバスを鮮やかなアクリル絵具で塗ってから麻布を貼っているが、そこから、蔓植物のようなイメージをくり抜いている。

 切り抜かれた細長い形が支持体から空間へと飛び出している。

 奥田さんの作品は、平面、立体、インスタレーションのいずれの作品でも、植物的なユニークな形と装飾性、反復性が共通している。

 プリミティブでシンプルな形態、その装飾的な配置によって、ほとばしる生命そのものが記号となって広がり、心地よい。

 それらは、たおやかに、リズミカルに空間に動きを生み出すのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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