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岡田昌也個展「猫貴族」ギャラリ想(名古屋)で12月1-11日

ギャラリ想(名古屋) 2022年12月1〜11日

岡田昌也

 岡田昌也さんは1974年、愛知県岡崎市生まれ。名古屋造形芸術短大洋画コース卒業。岡崎市を拠点に制作している。短大では、新制作協会会員で名古屋造形大学名誉教授の加藤鉦次さんから指導を受けた。

 自身は二紀会所属。団体展のみならず、個展での発表にも精力的である。

 当初、ファン・アイク兄弟が15世紀に描いた技術を引き継いだウィーン幻想派の混合技法を学んだ。テンペラと油絵具を併用する方法である。現在は、その描法に近い感覚で、アクリルを使っている。

 以前は、人物などさまざまなモチーフで制作。5年ほど前から猫を描いている。その描き方が独特である。

岡田昌也

 中世末期からバロックの時代の肖像画からとった貴族の衣装をアレンジして描き、顔を猫に置き換えたシリーズである。

猫貴族

 岡田さんは、古典絵画に引かれ、こうした方法をとるようになった。

 古典技法と細密描写で、格調高く華麗な衣装に猫の顔を調和させているところが心憎い。癒やし、かわいいというだけではない猫の姿がなんとも不思議な感覚へと誘う。

 ベースにした肖像画では、ルーベンスの作品も使っている。古典絵画のエッセンスを借りながら、顔を猫にすることで、猫と貴族を重ねている。つまり、猫の性格に貴族的なものをみているのだ。

岡田昌也

 猫は、犬と違って、人間に合わせることなく、本能に素直である。並の人間が縛られる社会のバランス感覚を気にすることもなく、瞬間、瞬間を自由に、気ままに生きている。

 岡田さんが描く猫は、一見、エキセントリックだが、ペットという人間から見た綺麗事の対象ではなく、命であることが独特の方法で具現化されたものである。

 言い換えると、猫の生存戦略としてのあり方の表象であって、その意味で人間と対等のポジションにある。

 そこに、作者は、貴族の裏の顔、つまり、表向きはエレガントにしながら、生きるためのしたたかさを隠し持った姿を投影している。

岡田昌也

 猫は猫で、人間の思惑を知っていて、抜け目なく利用している。愛くるしい目の奥には、たくましい本能と野生があるのだ。

 かわいいということを除けば、実用的に人間の役にたつことがなくても、こびることも、人間に合わせることもなく、自分のペースを崩さない。

 猫は高貴で、したたかである。だが、都合が悪くなって人間に捨てられた猫は、衰弱死、餓死、行政による殺処分へと至るリスクもある。猫貴族は、人間のエゴを映していて、アイロニカルである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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