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奈良美智さん(Yoshitomo Nara)の新作展示 杉戸洋さん、村瀬恭子さんの作品と 豊田市美術館

奈良美智さんの新作展示 杉戸洋さん、村瀬恭子さんの作品と 豊田市美術館

 豊田市美術館(愛知県)で2020年10月17日に始まる「開館25周年記念コレクション展 VISION—DISTANCE いま見える景色」のプレス内覧会が10月16日に開かれ、同美術館が収蔵した奈良美智さんの新作《Through the Break in the Rain》がプレス関係者に公開された。

 一般公開は10月17日から12月13日まで。

奈良美智

 奈良さんの新作は、愛知県豊田市が1億1千万円で購入した。2020年に描かれた未発表作品で、縦220センチ、横195センチの大作である。

 コレクション展のうち、「豊田市美術館25年のあゆみ—展覧会ポスターとコレクション」の中で展示された。

 アクリル絵の具による作品は、繊細な色調のハーフトーンで描かれた正面向きの少女像。つり上がった目は左右に離れ、口を真一文字にしている。

 さまざまな美しい色彩のしずくが髪の毛に重なり、瞳は、世界の不思議さを映したように柔らかな光を集めて、神秘的。ともに、とても美しい。

 カットソーや肌の色は、とても複雑でニュアンス豊かに塗られている。

奈良美智

 同じコーナーには、奈良さんの別の収蔵作品《Girl on the Boat》(1994年)も展示された。

 大きな頭に比べて、首元や足の細い少女が、小舟の上に立っている。舟も少女も、アンバランスである。少女はうつむき、視線は、沈みがちである。弱々しく、不安定ながら、秘めた思いを感じる作品である。

 豊田市美術館では2017年、奈良さんの過去最大級の展覧会を開いた。

杉戸洋

 奈良さんの作品と同じ一角には、同じ愛知県立芸大出身の杉戸洋さん、村瀬恭子さんの絵画も飾られ、全体に、充実した展示空間になっている。

 奈良さんの新作と向かい合うように、杉戸洋さんの大作《untitled》が展示された。とても、いい作品である。

 画面全体が淡い色彩で、シンプルな印象を与える半面、形象や線、色彩は多様である。そこに揺れるような軽やかな動感が生まれ、とても豊かな空間になっている。

 上方の歪んだ格子柄、そこから左右に伸びるリボン、山のような大小の三角形、蝶のような形、湖か大地を思わせる色面など、具象と抽象のあわいにある形象が結びあい、自律した絵画空間をかたちづくるとともに、物語と詩情を響かせている。

杉戸洋

 村瀬恭子さんの作品も、《Swallows 3》《Nap(L)》の2点が展示された。

 流動感を伴った空間の中に、樹木とツバメ、うたた寝しながら漂うような少女や羽虫が描かれている。

 渦巻くような動き、流れるような勢いのある筆触によって、幻想的でありながら、皮膚感覚のある空間の中で、不穏さをはらんだナラティブな世界が展開している。

村瀬恭子
村瀬恭子
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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