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津市の彫刻家、中谷ミチコさんに第43回中原悌二郎賞

撮影:若林勇人 提供:アートフロントギャラリー

最年少受賞 女性としては青木野枝さんに続いて2人目

 第43回中原悌二郎賞に、津市を拠点に制作している彫刻家、中谷ミチコさん(42)の作品「デコボコの舟」を選んだと、主催の北海道旭川市が2023年8月9日に発表した。同賞の受賞者としては最年少で、女性としては、青木野枝さんに続いて2人目。

 6月24日に選考委員会が開かれた。選考委員は、青木野枝(彫刻家)、植松奎二(彫刻家)、酒井忠康(美術評論家)、佐藤友哉(美術評論家)、建畠晢(美術評論家)の各氏。贈呈式は10月14日に旭川市内で開かれる。

 選考委では、事前に448名(505件の作品発表)の資料リストから、各委員が10人ほどの作家の名前を挙げ、33作家が選考候補となった。その中から、中谷さんが近年、表現領域の深度を深め、新しく繊細かつ豊かな表現に挑戦していることが評価された。

撮影:若林勇人 提供:アートフロントギャラリー

デコボコの舟

作 者:中谷ミチコ
制作年:2022年
素 材:石膏、木材、水彩、アクリル、漆喰
寸 法:155cm、320cm、100cm(舟及び台座)
    606cm、541cm(床)

 受賞作品「デコボコの舟」は、最初に舟の原型を石膏で作り、それを型取り することでできた雌型の内側に、人や鳥、樹などのモチーフを粘土でレリーフ 状に配置。その雌型にもう一度石膏を流し 込んで成形することで、舟の輪郭の上に凹型のモチーフが現れ、何もない空間として人や鳥や樹が存在する、不在と実在が同居した状態を作り出している。舟の土台となる白亜の漆喰は、ふんわりと舟を支え、重力から解放されていくような印象を与える。

撮影:若林勇人 提供:アートフロントギャラリー

中谷ミチコ

撮影:若林勇人 提供:アートフロントギャラリー

 中谷ミチコさんは1981年、東京都生まれ。2005年、多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。2014年、ドレスデン造形芸術大学マイスターシューラーストゥディウム修了。現在、多摩美術大学准教授。

 2010年、VOCA2010奨励賞、2020年、第31回タカシマヤ美術賞受賞。
 
 展覧会は、2016年、「生きとし生けるもの」ヴァンジ彫刻庭園美術館 / 静岡、「再発見、ニッポンの立体」群馬県立館林美術館(巡回:静岡県立美術館/三重県立美術館)、2018年、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」/ 新潟・津南町、2019年、「その小さな宇宙に立つ人」三重県立美術館柳原義達記念館、2021年、「空間の中のフォルム」神奈川県立近代美術館葉山館 / 神奈川、2022年、「春を待ちわびて」三重県立美術館コレクション展ーーなど。

受賞者のことば

 『デコボコの舟』という作品で、中原悌二郎賞をいただきました。 この作品は、今まで自分が制作してきた中でも、最も、「彫刻」を作るという事を意識した作品であったと思うので、心から嬉しいです。

 長い間、私にとって「彫刻」はコンプレックスでした。今も、そうかもしれません。作りたいけれど作りきれな いものです。だから手を変え品を変え、なんとか自分なりの表現を手探りしてきました。

 何故なら私にとって「彫刻」は、この世界でマテリアルと現実で闘う事、形づくる事であったからだと思います。実態のないイメージをどうしたらそのまま、この世界に実現できるのか。現実の時間や重力や素材や、私たちが暮らすこの地球の環境と時代の中で、形を与えてしまった瞬間にもとにあった浮遊するイメージの存在感は私の中から消えてしまうと感じ ていたからです。

 その儚い、しかし、どうしようもなく確実に存在する何かの在処を相変わらず探り続けているのですが、やっと正面から、(少しまだ無骨ではあるのですが)この手でそれを「彫刻」にすることができたのではないかと、『デコ ボコの舟』が完成したときに思ってしまいました。

 大きくて、重い上に、繊細で壊れやすいし、変化しやすい。そのままの姿でこの舟が今、ここで地面に持ち上げられている事を現実に表したかったのです。

 まだまだこれから、何かを凹凸の中で探しながら、私なりの方法を見つけていきたいと思います。 改めて、私の生活や、環境や、今まで頂いてきた出会いや、支えや、教えに心から感謝します。本当に有難うご ざいました。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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