目黒陶芸館本館(三重県四日市市) 2021年10月24〜31日
中島晴美
中島晴美さんは1950年岐⾩県⽣まれ。⼤阪芸術⼤デザイン科陶芸専攻卒業。2003年から愛知教育⼤教授を務めた後、現在は、多治⾒市陶磁器意匠研究所所⻑。
これまでの作品や、経歴などは、2020年10、11月に開催された「中島晴美:50年の軌跡 京都 現代美術 ⾋居 ⾋居アネックス」にも詳しい。
2021年12月5日まで、ギャラリーヴォイス(岐阜県多治見市) で開催中の「美濃からの発信 やきものの現在」のレビューも参照してほしい。
2021年 目黒陶芸館
目黒陶芸館の開設は1992年で、来年は30年という大きな節目を迎える。
中島さんの目黒陶芸館での個展は、1996年が最初で、今回はちょうど10回目となる。
展示会場の目黒陶芸館本館(八郷・旧平田邸)は、国登録有形文化財(建造物)である。
平田家は、江戸時代末期から庄屋の家柄。その後、三重郡議会議員や八郷村村長を務め、今も明治から大正にかけての名士の屋敷構えを保っている。
筆者は、久しぶりの訪問である。初めて公共交通機関で訪ねたが、近鉄富田から三岐鉄道に乗り換え、2つ目の平津下車で徒歩十分ほど、思いのほか便利であった。
展示は、庭園に向き合う広い和室空間に、「ざわざわするかたち」など、新作、近作が展示され、見応え十分である。
台座に置かれた作品は、ドットのついた突起部分が上に伸び上がるように増殖する。この下から上へ向かうエネルギーが実に生々しく、豊かな造形性を見せてくれる。
生命的形態がダイナミックであると同時に繊細で、あたかも律動するようである。
中島さんの作品が、美術館、ギャラリーの展示室のみならず、和室の空間にも合うことを発見した。
床の間などに置かれた作品は、小型で、横に伸びるタイプの造形であるが、こちらは、もう少し落ち着いた趣である。
普段、現代陶芸のオブジェをこうした場所で見る機会はなかったが、とてもしっくりと合っている。
縦方向の掛け軸と横方向の中島さんの作品が均衡し、調和した空間をつくっている。
その隣の部屋は、過去の作品で楽しませてくれる。
1996年、愛知県陶磁資料館で開催された「現代陶芸の若き旗手たち」に出品されたリング状の形態をした作品や、中島さんが形を見つめ直す中で、表面のドット模様なしで制作した作品なども展示されている。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)