報道によると、 名古屋のミニシアターで、優れたラインナップでシネフィル(映画通)の聖地だった名古屋シネマテークが2023年7月28日で閉館することになった。背景にあるのは、慢性的な収益の低迷。近年は経営がいっそう厳しさを増していた。映画の多様性への危機が加速している。
2022年7月には、ミニシアターの草分け的存在だった岩波ホール(東京)が閉館。2023年3月には、名演小劇場(名古屋)も休館となった。各地のミニシアターでも苦境が続く。
シネマテークの前身は、1970年代に自主上映を展開した「ナゴヤシネアスト」の活動である。名古屋大学映画研究会のメンバーらが中心となり、ホールを借りて自主上映を続けた後、1982年、今池スタービルに映画館を開館させた。
2003年12月には、アッバス・キアロスタミ監督の「10話」公開中に別件で訪日していたキアロスタミ監督が突然、シネマテークに現れ、観客と支配人を驚かせた。
だが、大手資本によるシネコンの増加やインターネットの普及などで、市街地の映画館の閉鎖はかなり前から始まっていた。2000年代には、映画と地域社会を結びつけるコミュニティシネマの運動が全国で展開したが、窮状は続いた。
日本では、映画の上映本数が増える一方、話題昨やアニメーションなど、大手の大ヒット作と採算が取れない小規模作品への二極化が一層進んでいる。
動画配信サービスを使い、家庭やスマホで映画を見る環境が広がった影響も大きい。時代の変化で、若者の足が映画館から遠のいた。
映画雑誌や情報誌等で一覧的、網羅的に作品情報を見る機会が減り、衰退に拍車をかけた。コロナ禍では、支援活動も展開されたが、さらなる窮状に追い込まれた。