名古屋市民ギャラリー矢田 2022年10月26~30日
愛知の3美大の在学生、若手卒業生の現代美術展
愛知県にある愛知県立芸大、名古屋芸術大、名古屋造形大の3大学の実行委が、在学生、卒業後10年程度までの若手を2-3人ずつ選出した現代美術展である。
2020年に開催されたmotion#5も見応えがあったが、今回も充実している。7人が意欲作を展示し、見ていて楽しい。可能性も感じる。
作家の選定などのオーガナイズは、名古屋芸術大が松岡徹さん、名古屋造形大が佐藤克久さん、愛知県立芸大が平川祐樹さんである。
愛知県立芸大
浦野貴識
顔、アバターをモチーフにしている。デジタル的なイメージを使い、等身大の顔出しパネル、ラグなどの形式に落とし込んで空間に展開している。
河合雅
量産品のカラーボックス、テーブル、たんす、テレビボードなどの体積を合板の箱状の立体に置き換えた。
いわば、日常的な家具の容積の可視化。筆者は、レイチェル・ホワイトリードを連想した。しかも、それを元の家具の上に積み上げることで、ミニマルながら、ユニークな形態が生まれている。面白い。今後の展開が楽しみである。
名古屋芸術大
飯田美穂
名古屋市生まれ。名古屋芸術大学洋画2コース卒業。愛知県を拠点に制作している。主に名画をモチーフに油彩画を描く。2021年6、7月にYEBISU ART LABO(名古屋)で個展をしている。レビューはこちら。
過去の名画を引用し、簡略化、抽象化するなど独自の解釈でイメージを変容させる。今回は「貴婦人と一角獣」のタペストリーのシリーズがモチーフ。支持体やイメージについて実験的なことに挑戦し、クオリティが上がっている。
伊藤公子
2018年、名古屋芸術大学大学院同時代表現研究修了。同サイズの画面をユニットとして組み合わせ、並列、グリッド状にした2つの開放的な作品を出品した。
1つは、食器や花瓶などが空を浮遊し、そこに描かれた絵柄も抜け出て、空を自由に飛び回っているイメージ。別の作品では、静物画を題材に舞台のようにストーリーが展開する不思議な光景をつくっている。
両作品とも、あえて、背景の紙を貼り合わせたときのつなぎ目を空間や時間の境界にしているところがユニーク。日常に潜む非日常が美しいイメージになっている。繊細で透明感のある作品である。
名古屋造形大
田中しゅう
2022年、名古屋造形大学洋画コース卒業。
かすかな音や揺らぎを起こす小さな装置、素材が見せる意外な表情、はかない美しさをすくいあげるように展示した小オブジェを展示。研ぎ澄まされた感性が魅力である。
林みらい
1999年、三重県生まれ。2022年、名古屋造形大学洋画コース卒業。2022年に名古屋市市政資料館で個展「解散集合解散」を開いた。また、長者町コットンビル GROUND(名古屋)で7月にあった「BLACK TICKET 2022」にも参加。集合写真、記念写真など、ささやかな日常/非日常的な時間を写真や映像にしている。
今回は、映像で、人づきあいをことのほか大切にして、知り合いと食べ物等のやりとりを繰り返す祖母の、表に現れない一連の瑣末な出来事を俯瞰的に捉えている。
松葉奈々帆
2022年、名古屋造形大学洋画コース卒業。「BLACK TICKET 2022」に出品した。「正」の字を使う画線法で1日の睡眠時間を画面に刻む絵画を描いている。今回は、他者の睡眠時間を記録した絵画の新作シリーズを発表した。柔らかい色相でたゆとうような層状に構成された画面が美しい。記憶と忘却のはざまにある夢をモチーフにした絵画の新シリーズも展示した。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)