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愛知県美術館 ミニマル/コンセプチュアル 2022年1月22日~3月13日 

ソル・ルウィット《ストラクチャー(正方形として 1、2、3、4、5)》1978-80 年 滋賀県立美術館 © 2021 The LeWitt Estate

ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術

  1960-70年代のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを、ドイツのフィッシャ ー・ギャラリー旧蔵の作品・資料などで紹介する「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」が、 2022年1月22日~3月13日、名古屋・栄の愛知県美術館で開催される。

 フィッシャ ー・ギャラリーは、 ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻が1967年、デュッセルドルフに開設。類い稀な先見性と幅広い活動から、伝説的な存在として語り継がれている。

 本展では、 同ギャラリーが保管し、近年、デュッセルドルフのノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館に収蔵された貴重な作品・資料と、日本国内に所蔵される関連作品135点を通じて、18作家の活動を振り返る。

 作品とともに、写真や資料が多く展示され、ミニマリズム、コンセプチュアリズムが生まれた当時の雰囲気が伝わってくる。

 フィッシャ ー・ギャラリーの実際の空間スケールも再現。この小さな空間に現代美術の巨匠たちの若き頃の作品が展示され、歴史を紡いだのだという事実に興奮を覚える。

 現在のアートのベースになる思想、アイデアに触れるまたとない機会でもある。

ドロテ・フィッシャーとコンラート・フィッシャー 1969 年 Photo: Gerhard Richter

巡回

DIC川村記念美術館 2021年10月9日〜2022年1月10日
兵庫県立美術館   2022年3月26日~ 5月29日

開催概要

会  期:2022年1月 22 日(土)~3月13日(日)
会  場: 愛知県美術館[愛知芸術文化センター10 階]
開館時間:午前10時~午後6時 / 金曜日は午後8 時まで(入館は閉館の30分前まで)
休 館 日:毎週月曜日
観 覧 料:一般 1,400円 高校・大学生 1,100円 中学生以下無料

フィッシャー・ギャラリーにおけるソル・ルウィット《隠された立方体のある立方体》の展示 1968 年 Photo: Fred Kliché

みどころ

1. 米国、欧州を中心とした1960-70年代の国際的な美術動向を概観する。フィッシャー・ギャラリーでは、ドイツ国内にとどまらず欧米の作家を積極的に紹介した。本展は、日本国内の展覧会では取り上げられる機会の少ない1960-70 年代の国際的な美術動向を概観する貴重な機会となる。

2. 豊富な資料類によって、作品の制作プロセスや発表当時の様子を明らかにする。フィッシャー夫妻と作家の間でやり取りされた書簡や制作指示書などを通じて、作品がどのようなプロ セスで制作されていたかを明らかにする。作品が発表当時、フィッシャー・ギャラリーでどのように展示されていたかについても紹介する。

ソル・ルウィット《隠された立方体のための提案》 制作年不詳 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館 © 2021 The LeWitt Estate; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

3. 現代美術の源流となる価値観や考え方に触れる機会となる。1960-70年代には、直観的で個性的な表現の偏重からの解放、作品制作を担う唯一の存在としての作家の否定、コンセプトやアクションの重視といった、今日の美術にも通じる新たな価値観や考え方が生まれた。 本展は、現代美術をより深く理解する機会にもなる。

展覧会構成と出品作家

1 章 工業材料と市販製品

カール・アンドレ(1935- )、ダン・フレイヴィン(1933-1996)

2 章 規則と連続性

ソル・ルウィット(1928-2007)、ベルント&ヒラ・ベッヒャー(1931-2007, 1934-2015)

ソル・ルウィットの展覧会「4 つの壁の 4 つの縁から生じる線」の招待状 1975 年 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美 術館 © 2021 The LeWitt Estate; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

3 章 数と時間

ハンネ・ダルボーフェン(1941-2009)、河原温(1932-2014)

4 章 「絵画」の探求

ロバート・ライマン(1930-2019)、ゲルハルト・リヒター(1932-)、 ブリンキー・パレルモ(1943-1977)

5 章 場への介入

ダニエル・ビュレン(1938- )、リチャード・アートシュワーガー(1923-2013)

6 章 枠組みへの問いかけ

マルセル・ブロータース(1924-1976)、ローター・バウムガルテン(1944-2018)

7 章 歩くこと

リチャード・ロング(1945- )、スタンリー・ブラウン(1935-2017)

8 章 知覚

ヤン・ディベッツ(1941- )、ブルース・ナウマン(1941- )

9 章 芸術と日常

ブルース・ナウマン、ギルバート&ジョージ(1943- , 1942- )

ギルバート&ジョージとコンラート・フィッシャー 1973 年 Photo: Konrad Fischer Galerie

フィッシャー・ギャラリーとは

 ドロテ・フィッシャー(1937-2015)とコンラート・フィッシャー(1939-1996)の夫妻によって、1967年、デュッセルドルフに立ち上げられた。当初は約3m×11mの小さな展示空間しかなかったが、先見性のある活動から、すぐに名が知れ渡った。

 夫妻没後も、ギャラリーは現在まで運営を続けている。オープン当初から継続してきたカール・アンドレらの展覧会のほか、若手作家の展覧会も企画している。

展示内容

ソル・ルウィット《モデュラー・ストラクチャーのためのワーキング・ドローイング》1970 年 © 2021 The LeWitt Estate; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

 ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻は、1967年にデュッセルドルフにギャラリーを開き、同時代の国際的な動向をいち早く紹介した。

 当時の若い作家たちは、1950年代に米国を中心に大きな影響力をもっていた抽象表現主義に対して、憧れを抱きつつも同時に反発もしていた。

 彼らは、 抽象表現主義の絵画に認められる、直観的な色彩やフォルムの配置、絵具に残された身振りの痕跡といった作家の個性を示すような表現性を捨て去って、幾何学的で単純なかたちの絵画や彫刻を制作した。こうした新たな動向は、批評家たちによってミニマル・アートと呼ばれ始めた。

 その代表的な作家のひとりであるカール・アンドレを、フィッシャー・ギャラリーは最初の展覧会で取り上げた。アンドレは工業的に生産された金属の板やブロックを用いて制作した。

ギルバート&ジョージ《アーチの下で(ボックス)》 1969 年 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館 © 2021 Gilbert & George; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

 従来、作家によって完成された作品は、確固たる存在として、その地位が保証されたが、互いに接続されることのないアンドレの作品は、彼自身やほかの誰かの手によって容易に解体され再構成されうるもので、作品や作家の地位を大きく揺るがすものだった。

 同様に、1960年代にフィッシャー・ギャラリーで紹介されたダン・フレイヴィンは、既製品の蛍光灯を用いて作品を制作した。人工の光を用いて制作する作家はほかにもいたが、多くの作家が自由に変形できるネオン管を用いたのに対して、フレイヴィンはあえて規格化された蛍光灯を用いて、制作に直観的な判断が入り込む余地を排除した。

 ソル・ルウィットが、1968年にフィッシャー・ギャラリーで発表した新作《隠された立方体のある立方体》を実現するために、コンラート・ フィッシャーに送った作品の制作指示書は、当時のミニマリストの作品制作のあり方をよく示している。

 作品はもはや作家の手を一切介さずに、各部の寸法や塗装の方法などが記された制作指示書を通じて、 技術者によって実現された。

ゲルハルト・リヒター《エリザベート(CR104-6)》1965 年 東京都現代美術館 © Gerhard Richter 2021 (07042021)

 ミニマリストによって、新たなアートのあり方が提示されていく中、芸術制作において最も重要なのは、作品の構成を決定するコンセプトであるという考え方が現れはじめた。

 ソル・ルウィットは、1967年に「コンセプチュアル・アートに関する断章」というテキストを発表してコンセプトの重要性を 説くとともに、制作のコンセプトそれ自体を積極的に公開した。

 1975年のフィッシャー・ギャラリーにおける個展の招待状には、同展で発表された壁面ドローイングを制作するために、技術者に伝えら れた制作指示が記されていた。

 物理的な作品よりもコンセプト自体を重視する態度は、数字の計算という思考の過程を提示するハンネ・ ダルボーフェンや、起床時間を記した絵葉書を知人に毎日送り続けた河原温にも認められる。

 ギルバート&ジョージは、自らを「生きた彫刻」とみなして、彼らの日常それ自体がアートであると考えた。物理的な作品として残されるのは、彼らの行為の記録であって、例えば、《アーチ の下で(ボックス)》は、「歌う彫刻」として彼らが各地で実演した際の記録写真や招待状などを収めたものである。

 1960-70 年代は、社会的な変革と連動しながら、アートにおける新しい価値観が次々と生まれた時代だった。

 そこで生まれた価値観や考え方は、今日の現代美術の源流をなすものであると言っても過言ではない。

 本展では、デュッセルドルフのノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館の全面的な協力のもと、フィッシャー・ギャラリーが保管していた貴重な作品や資料、ならびに日本国内に所蔵される主要な作品を通じて、18作家の活動から、1960-70年代のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを振り返る。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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