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「道川省三・瀬口吉則 THE INBETWEEN 火山と湖のあいだで」GALERIE hu:(名古屋)で2024年11月23日-12月15日に開催

GALERIE hu:(名古屋) 2024年11月23日〜12月15日

道川省三

 道川省三さんは1953年、北海道生まれ。洞爺湖や活火山・有珠山に近い大自然の中で育った。1975年、青山学院大学卒業。20代のときに愛知県瀬戸市で陶芸を始め、同地と静岡県島田市の笹間地区を拠点に活動する。

 今回の展示は、長年、道川さんの作品を撮影してきた写真家、瀬口吉則さんとの2人展。瀬口さんは1952年生まれ。日本写真専門学校を卒業し、名古屋の画廊・ガレリア ファイナルテでの個展を中心に作品を発表してきた。

THE INBETWEEN 火山と湖のあいだで

 大地が隆起するようなダイナミズムを感じさせる造形である。ただ、造形といっても、一方的に人間の力で土をコントロールしようというものではない。

 もともと、陶芸においては、プロセス自体に土素材の本源性と人間とのやりとり、そして轆轤による回転、焼成による変容などが複雑に働き、人為を超える。

 だが、ここでいう道川さんの作品の造形力は、それら以上に、土が自然の力を自ずからあらわにするような造形過程を、作家自身を見つけ出したことによっている。

 無垢の角柱状の土の塊を縦横に大きく切り込み、内側から土塊をこじあけるように手を入れることで、その圧力によって、土が分離方向に向かう動きをつくっていく。

 さらに、轆轤にのせられた土塊は、上から角材が入れられ、回転の力によって、ねじれるように造形される。つまり、内側からの力と轆轤の回転によって、土が切り離され、解体されるようになりながら、同時に構築されるという過程で形態が生まれる。

 これは、土の外側に手を当て、人間の意思のコントロールで造形され、轆轤の回転力、遠心力によって、外に引き延ばされる通常の器作りとは本質的に異なる。

 人間と土素材の協働ではある点では同じだろうが、道川さんの作品は、内側から土が外に押し出されながらねじれる力、それによる可塑性、解体、土自体の重さによるゆがみ、轆轤の回転など、まさしく自分以外のものと人間の力が切り結ぶように、ズレがズレを生む連鎖の中で造形される。

 そして、このとき、人間もまた自然の一部であることが示されるのだ。

 つまり、ここでは人為的な構成、イメージは後退し、格闘のような作家と素材との緊張関係が極限化、瞬間化される。それは、ある意味で、陶芸の従来の造形形式を破壊するものであるともいえる。

 それは、言うなれば、1つの制作のためのアクションである。クリエイションの現場、行為自体が主題ともなるのである。

 つまり、轆轤の上にある制作現場は、作品が生成する劇場、出来事、事件、現象である。だからだろう、道川さんの作品は、完成後、ギャラリー空間に展示されても、制作の時間の余韻を常にまとっているのだ。

 それは、まさに解体と構築、回転によるねじれ、反作用の力によって、人間のコントロールを超えたものとして、その人間の身体さえ自然の一部となるように、現象として現れる。自然そのものが、ぶつかり合いながら、和合した、その瞬間をとらえているのだ。

 そこには、陶芸なるものと、陶芸ならざるものとの、せめぎあいがある。

 それは、北海道の雄大な自然からインスピレーションを受けて制作するという作家が、その大いなる自然と、開放した自分の身体性という自然を、相互に接触させることでもある。

 人間の都合に良いばかりの、従順な土ではない。創造するとは、自己の都合で造形することではなく、世界を受け入れること、そこに予期せぬコミュニケーション、変化が起こり、コントロールを超えた、ある種の霊力が働くことである。

 そうして初めて、土の本能、土という他者が姿を現す。決して、外から手なづける自然ではない。いわば、静謐な自然と、その深奥に秘められた荒々しさである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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