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諏訪未知「Floor Plan」ガレリアフィナルテ(名古屋)で2024年4月2-27日に開催

ガレリア フィナルテ(名古屋) 2024年4月2〜27日

諏訪未知

 諏訪未知さんは1980年、神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域修了。ガレリアフィナルテでは、2021年に続いて、2回目の個展となる。絵画を中心に制作している。

 諏訪さんの作品は、正方形の支持体に描かれることが多い。今回、16点が展示されたドローイングも、同サイズの正方形に描かれ、整然と4行4列に並べている。

 一見、幾何学風の雰囲気もある抽象的なイメージである。ドローイングでは、同じ絵柄の色違いもあって、そのバリエーションも興味深い。

諏訪未知

 油彩画も、横長のキャンバスに描かれた1点を除いて、ほとんどの作品は正方形に描かれている。円形と三角形、線の組み合わせ、画面の分割、形や線の均衡、拮抗や連続性・・・。

 シンプルな線、明快さなどから、図案っぽく見える側面もある。他方で、布地のような装飾的な反復のパターンというよりは、むしろ、正方形の四辺との関係や、正方形の上下左右、対角線方向の対称性、対応関係や、回転性が意識されていることに気づく。

 フラットでありながら、塗りや線のニュアンスが意識的に出してあり、物と物の位置、前後関係や重なり、空間における布置が捉えられているようにも思える。

諏訪未知

 『歴史・批評・芸術 003』(D/C/F/A、2024年)の沢山遼さんの論考「対称性のトポスー諏訪未知」で、諏訪さんの作品の背景が詳しく分析されていた。

 4人の俳優が正方形の4辺や対角線上を歩くサミュエル・ベケットの作品「クアッド」や、だまし絵のM.C.エッシャーの絵画、マルセル・デュシャンなどに触れながら、射影幾何学や次元の変換の問題から諏訪さんの作品を読み解いている。

「Floor Plan」2024年

 今回は「Floor Plan」と題された個展である。Floor Planは通常、間取り図、平面図などの意味となる。諏訪さんが、足元を見下ろす俯瞰的な視点から制作を開始すると語ったこととも関係しているのだろう。

諏訪未知

 諏訪さんは、「壁に掛かった絵と床に置かれたモノの間に身を置く」「床に置かれたビンがどれほど安定してそこに有るかを確かめる」とも書いている。

 なかなか分かりにくい言葉ではある。配置された物と物、それらと自分自身、空間の関係をひとつながりの広がり、深度と捉えたときの曖昧さ、亀裂、歪みを身体感覚、知覚、意識として絵画という二次元にどう還元していくか、その豊かさが試されているのではないか。

 実際のところ、諏訪さんの作品を見ていると、地と図、凹凸の反転や、全体や部分の回転、移動、隆起、沈降、衝突、歪み、拮抗など、さまざまの動きが感じられる。

諏訪未知

 諏訪さんの作品では、そういう多次元的な空間の感覚が絵画平面に射影されつつ、それでもなお元の空間の息づかいをできるだけ新鮮に保とうとしているように思えるのである。

 それは、正方形の支持体と、形や線、色彩の対称性、均衡、対応関係とともに、フラットな塗りと意識的な質感、ニュアンスの使い分け、ナチュラルな形の歪み、辿々しい線の重なり、微かな陰影などによってもたらされている。

 それゆえ、図形的なフラットな画面であっても動きが感じられ、穏やかな色彩のバランス、手描きの形や線の微妙な緩さが相まって、開放系としての均衡、豊かさに導かれている。全体性があり、動きも固さがなく、温かく、柔らかい。

諏訪未知

 空間的な広がり、厚みを射影するように包み込んで平面化しつつ、その抽象化のプロセスがとても感覚的、身体的である。

 それが諏訪さんが世界に向き合うときの姿勢なのだろう。

 諏訪さんにとって要約不可能性をはらんだ空間が、それでも息づくように平面化(射影化)された作品は、シンプルでありながら、日常の中で繰り返される瞬間と同様、美しく、豊かである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

 

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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