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吉川正道 GALERIE hu:(名古屋)で2021年11月27日-12月18日

GALERIE hu:(名古屋) 2021年11月27日〜12月18日

吉川正道 Masamichi Yoshikawa

 吉川正道さんは1946年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。白磁、青白磁を制作してきた、「常滑」を代表する作家の1人である。

 現在は、常滑の南、知多半島の先端に近い山海で制作している。

 2005年、常滑沖にある中部国際空港のエントランスロビーに[Water of life 渚(Migiwa)]を設置した。

吉川正道

 高さ3m、幅28mほどの大陶壁と球体の立体で構成。青白磁による海のイメージのインスタレーションは、ダイナミックであると同時に清新な印象を放っている。

 2006年、愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞した。

 朝日陶芸展大賞、朝日クラフト展グランプリ、京畿道世界陶芸ビエンナーレ国際公募展審査員賞、台湾国際陶芸ビエンナーレグランプリなど、数多くの受賞歴がある。

吉川正道

 2011年、茅ヶ崎美術館で「個展 –陶思考-」を開催。2020年、『青か、白か、青磁×白磁×青白磁』展 (茨城県陶芸美術館)に出品した。

 GALERIE hu:によると、近年は、ヨーロッパでの作品発表が多い。GALERIE hu:での個展は5年ぶりである。

親愛・慈愛 – infinity 2021年

吉川正道

 作品は、オブジェを中心に器類も展示した。シンプルながら力強く、吉川さんが青磁、青白磁に可能性を感じてきたことがひしひしと伝わる展示である。

 オブジェは、壁のような形、建物のように構築された形態が主。白磁が多く、一部に青白磁もある。

 肉厚な土が確かな存在感を主張。底部に不定形な部分を残すなど、下から上に立ち上がった力強い造形性が見て取れる。

吉川正道

 上に向かう形は放胆にして気高く、横へ伸ばされた形は空間を包むようにおおらかである。

 内側から膨張するエネルギーを押しとどめたような生き生きとした量感をもつのも特長。

 脈打つような力を内に秘めた形態に、 したたるほどに豊潤にかけられた釉薬が滑らかな風合い、ぬくもりをも与えている。

 壁よりも構築物の印象が強い立体は、重量感をもちながら、線の傾き、裂け目や、面、形の変化、空隙が周囲の空間に柔らかく作用している。

吉川正道

 これらの立体のイメージは、俑(よう)、あるいは 明器 といわれる中国古代墳墓の副葬品が基になっているようである。

 人間像や器具、動物が普通だが、吉川さんの造形は、そこから独自の展開を見せ、建物、あるいは城砦、モニュメントの形を精神的なものの象徴として造形化しているように思える。

 「親愛・慈愛 – infinity」という、祈りにも似た今回の個展のタイトルもそこに由来するものではないか。

吉川正道

 どっしりとしながら柔らかな形態、滑らかなテクスチャーにはダイナミズム、剛直さ、テンションと、静謐さ、気品、あたたかさが共存する。

  制作の意思をしっかり打ち込んだと思える表面の指の痕跡は、土のみなぎるような力との対話のあかしである。

吉川正道

 今回は、意表を突くような白磁による大甕も展示された。

 吉川さんは、デザイナーとして出発した。イサム・ノグチ、バックミュンスター・フラー、杉江淳平、鯉江良二、金子潤、中川幸夫井上有一辻晉堂など、数多くの先達、その作品から刺激を受けてきた。

 さまざまなものを吸収することで、一般に磁器がもつシャープさや冷たさ、繊細さとは異なる、迫力と、おおらかさ、包み込むような静穏さがもたらされた。

吉川正道

 それは、この世界の豊かさに応答する力であると同時に、私たちの内側にまで届く澄明な光、温かさ、広がりと静けさの感覚といっていいものである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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