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編む—桑名・MARUYO HOTELにて Gallery NAO MASAKI

 Gallery NAO MASAKI(名古屋)によって、2020年8月20〜23日、三重県桑名市にできた新しいホテル「MARUYO HOTEL Semba」で開催された、4日間限りの特別企画展である。

 MARUYO HOTEL Semba があるのは、三重県桑名市船馬町。JRと近鉄の桑名駅から東に1キロちょっとの、宿場町、城下町の古い街並みの面影が残るエリアである。

 歩くと、駅から15分ほどの距離。タクシーなら5分。江戸時代の桑名宿は、伊勢の国への玄関口として栄え、ホテル近くには、旧東海道の七里の渡跡がある。式年遷宮ごとに伊勢神宮宇治橋の鳥居を移して建て替える「伊勢国一の鳥居」も。

 揖斐川、長良川の河口を望む広大な敷地に、洋館と和館、蔵などと池泉回遊式庭園で構成された六華苑や、ユネスコ無形文化遺産「石取祭」で知られる春日神社も近い。

 ホテルの大門をくぐり、ヒノキの板塀に囲まれた敷地に入ると、大きな暖簾が出迎えてくれる。いにしえと現在、外と内をつなぐ結界のような見事な演出である。

 ホテルは、10年近く空き家になっていた明治創業の「丸与木材」の築70年になる木造2階建ての本家をリノベーション。 施主と妻であるGallery NAO MASAKIの正木なおさんが、かつて栄えた宿場の来歴、堆積した時間への深い思いとともに、美しい空間へとよみがえらせた。

 内部は落ち着いていながら変化に富み、それぞれの空間からの眺め、外光、ランプの光と影、土壁や床、天井、内装などの色彩と質感が多声音楽のように響き合っている。しつらえられた調度品もバランスよく配され、うつろいゆく空間との出合いがとても心地よい。ぜいたくな非日常の時間である。

 室内や廊下など日本の伝統的な建築ならではの空間には、現代アートとアンティークがアクセントになっている。

 ラウンジの土壁に掛けられた抽象画らしき平面は、昔の土蔵の漆喰の扉が長い年月の中で風化したものだという。こうしたさりげない発見があるのも楽しい。この温かく静謐なたたずまいの中にに身をおくと、空間のゆったりした呼吸がそこにいる人の生のリズムを静めてくれるようである。

 宿泊する場合は、一棟貸し切り。ラウンジ、2つのツインルーム、大広間、露天風呂などが利用できる。2階の大広間からは、揖斐川と住吉神社を望む。

 ツインルームの1つは、鹿鳴館やニコライ堂、六華苑で知られ、明治以降の日本の建築の礎を築いたジョサイア・コンドルへのオマージュとしてデザインした洋室。

 漆喰の白壁と瀟洒なインテリアがロマンチックな雰囲気を醸し、夜、大門を閉じると、仏蘭西アンティークのガラス戸越しにプライベートガーデンが美しく映えるという。

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 一方、黒漆喰の床の間が印象的な主寝室は、雪見障子越しにみえる苔の坪庭が印象的。洗面室から緩やかにつながる戸外にはヒノキの露天風呂があり、夜は月明かりに美しく照らされる。

 2階は、眼前に広がる揖斐川河口の絶景を眺めながら、至福の時間を楽しめる大空間。その景観から、過ぎし日の旅人たちの往来の風景が浮かび上がるのではないか。

今回は、こうした魅惑的な空間の各所に作品を展示。「編む」というタイトル通り、竹籠のコレクションが中心になっている。三重県四日市市の陶芸家、内田鋼一さんの陶板、中西洋人さんの木彫、長谷川清吉さんの金工も空間を引き立てた。

 竹籠コレクションの中には、戦前、竹工芸を芸術品の域まで高めた天才的な作家、飯塚琅玕齋の作品も。

 まだまだ進化しそうなホテルである。詳細は、公式サイト

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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