ムラティ・スルヨダルモ「Exergie-butter dance」
Melati Suryodarmo, “Exergie-butter dance” (2000), performed at the VideoBrazil, Sao Paolo, Brasil in 2005 ©Isabel Matthaeus
「えーっと えーっと」がキーワード
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」が2024年10月5~27日、京都市内のロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTOなどで開催される。前売チケットの発売開始は8月9日正午。
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭は、2010年から毎年開催している京都発の国際舞台芸術祭。今年で15回目を迎える。
国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を、新しい形の対話でつなぐことを目指している。
演劇、ダンス、音楽、美術、デザインなどジャンルを横断した実験的な表現が集まり、舞台芸術の新たな可能性を開く。
今回は、「えーっと えーっと」がキーワード。「えーっと」と言いながら、断片的な記憶を寄せ集めて言葉にするように、他者とのあいだを埋めながら、記憶と対話をつなぐ場にしていく。
今回も、関西地域をアーティストの視点で探究する「Kansai Studies」、上演プログラム「Shows」、ワークショップやトークなどのSuper Knowledge for the Future [SKF]」の3つのプログラムがある。
KYOTO EXPERIMENT 2024 メインビジュアル ©︎小池アイ子
開催概要
会 期:2024 年10 月5 日(土)– 10 月27 日(日)
会 場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、京都府立府民ホール“アルティ”、京都市役所本庁舎屋上庭園、堀川御池ギャラリーほか
主 催:京都国際舞台芸術祭実行委員会[京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、京都芸術大学 舞台芸術研究センター、THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)]、一般社団法人KYOTO EXPERIMENT
参加アーティスト
・ムラティ・スルヨダルモ
[スラカルタ(インドネシア)|展示・パフォーマンス]
・アレッサンドロ・シャッローニ
[ローマ(イタリア)|ダンス]
・(ラ)オルド × ローン with マルセイユ国立バレエ団
[マルセイユ(フランス)|ダンス]
・オラ・マチェイェフスカ
[プリジアック(フランス)・ポーランド|ダンス]
・松本奈々子& アンチー・リン(チワス・タホス)
[東京(日本)/ 台北(台湾)|パフォーマンス]
・クリスチャン・リゾー
[モンペリエ(フランス)|ダンス]
・穴迫信一 × 捩子ぴじん with テンテンコ
[北九州・京都・東京(日本)|演劇]
・マチルド・モニエ& ドミニク・フィガレラ
[モンペリエ(フランス)|ダンス]
・チェン・ティエンジュオ& シコ・スティヤント
[ベルリン(ドイツ)・北京(中国) / ジャカルタ(インドネシア)|パフォーマンス]
・余越保子/愛知県芸術劇場
[京都(日本)|パフォーマンス]
・ジャハ・クー/ CAMPO
[ヘント(ベルギー)・ソウル(韓国)|パフォーマンス]
・アミール・レザ・コヘスタニ/メヘル・シアター・グループ [テヘラン(イラン)|演劇]
3つのプログラム
① Kansai Studies(リサーチ)⇨詳細
自分たちが立脚する「地域」を自覚的に捉え、フィールドワークを通して探求するプログラム。活動を通じて生まれた思考の軌跡やプロセスは特設ウェブサイトに蓄積され、誰もがアクセスできるオンライン図書館として公開。未来のクリエイターや企画のためのナレッジベースや実験場、アイデアソースとなることを目指す。5 年目を迎えるKansai Studies では、新たに3名のリサーチャー(石川琢也、内田結花、前田耕平)を迎える。
② Shows(上演)⇨詳細
世界各地から先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき舞台芸術作品を上演するプログラム。ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境した実験的作品13 演目を紹介する。
このうち、5 アーティスト・6 演目は、京都と埼玉で開催される、ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル フェスティバルとのパートナーシップにより上演。2022年から始まったダンス リフレクションズとの協働は、ポストモダンからコンテンポラリーに至るまでのダンスにおける継承に注目して展開してきた。
・アレッサンドロ・シャッローニ ダンス「ラストダンスは私に」
アレッサンドロ・シャッローニ ©MAK
・(ラ)オルド × ローン with マルセイユ国立バレエ団 ダンス「ルーム・ウィズ・ア・ヴュー」
(ラ)オルド × ローン with マルセイユ国立バレエ団 ©Cyril Moreau
オラ・マチェイェフスカ『ボンビックス・モリ』
Bombyx Mori, Dance Reflections by Van Cleef & Arpels Festival in Hong Kong, 2023, co-presented with French May Art Festival. ©Eric Hong
オラ・マチェイェフスカ『ロイ・フラー:リサーチ』
Loïe Fuller: Research, Dance Reflections by Van Cleef & Arpels Festival in Hong Kong, 2023, co-presented with French May Art Festival and M+. ©Eric Hong
・クリスチャン・リゾー ダンス「D’après une histoire vraie—本当にあった話から」
クリスチャン・リゾー ©Marc Domage
・マチルド・モニエ&ドミニク・フィガレラ ダンス「ソープオペラ、インスタレーション」
マチルド・モニエ&ドミニク・フィガレラ ©Marc Coudrais
今回は、民間伝承としてのフォークダンスやモダンダンスの揺籃期など、より大きな射程に視野をおいたダンスの歴史的な継承を検証しながら、いま私たちが生きる2024年、そして未来にまで思考をめぐらせることができるプログラムになっている。
ムラティ・スルヨダルモ『スウィート・ドリームス・スウィート』
Melati Suryodarmo, “Sweet Dreams Sweet” (2013-2024), performed at the Hamburger Bahnhof Museum for Contemporary Art, Berlin in 2018 ©Reinhard Lutz
ムラティ・スルヨダルモ「Timoribus」
Melati Suryodarmo, “Timoribus” 2018, video stills. Photo courtesy of the artist.
社会が定める規範や制約に対して、立ち止まるような抵抗の身振りを静かに、しかしラディカルに描き出すのは、ムラティ・スルヨダルモである。今回は、ふたつのプロジェクトを紹介する。パフォーマンスでは、制服のような白い服に身を包んだ女性たちが、押し付けられた原罪に自ら身を浸すかのように、青い水に身体を浸していく。展示では、アジア人女性である自身の身体が、「バター」という西洋的かつ不安定な物質の上で舞う作品の映像を年代別にインスタレーションとして構成し、身体がその器となる記憶をたどるとともに、より近年発表された集合的な暴力と恐怖を描いた映像作品を紹介する。
・松本奈々子&アンチー・リン(チワス・タホス) パフォーマンス「ねばねばの手、ぬわれた山々」
松本奈々子&アンチー・リン(チワス・タホス)©Anchi Lin
松本奈々子&アンチー・リン(リンがルーツを持つ台湾の原住民族・タイヤル族の呼び名はチワス・タホス)による新作では、日本の民話とタイヤル族の言い伝えを参照しながら、それらの物語の時空を超えた邂逅が描かれるかもしれない。
・穴迫信一 × 捩子ぴじん with テンテンコ 演劇「スタンドバイミー」
穴迫信一 × 捩子ぴじん with テンテンコ ©mizuno hiro
テキストと身体の境界線を歩きながら、生と死の道なき道を描き出すのは、穴迫信一と捩子ぴじんによる新作である。「えーっと」が何かと何かの間を埋める言葉であるとするならば、この作品はテキストと身体の行き来を「えーっと」で埋めながら考えてみたい。電子音楽家のテンテンコが加わることで、その行き来はより増幅されることだろう。
・チェン・ティエンジュオ&シコ・スティヤント パフォーマンス「オーシャン・ケージ」
チェン・ティエンジュオ&シコ・スティヤント ©Camille Blake
チェン・ティエンジュオ&シコ・スティヤントは、インドネシア・レンバタ島のラマレラ村で伝統的に行われてきた捕鯨を集合的な儀式に昇華し、それに参加する観客は海に生かされてきた人間と環境の関係性を考えることができる。
・余越保子 / 愛知県芸術劇場 パフォーマンス「リンチ(戯曲)」
余越保子/愛知県芸術劇場 ©Kai Maetani
戯曲と身体の関係性に挑むのは、羽鳥ヨダ嘉郎による戯曲にダンスでアプローチする余越保子の演出も同様である。上演不可能といわれたテキストへの余越の応答は、戯曲の演出とは何か、という問いと共に、日本という国家が歩んできた近代以降の歴史への眼差しをもあぶり出す。
・ジャハ・クー / CAMPO パフォーマンス「ハリボー・キムチ」
ジャハ・クー/CAMPO ©Bea Borgers
これまでの創作で、大文字の歴史ではなく人々の生活に見出すことができる歴史を見つめてきたジャハ・クーの新作でも、国家事業として輸出される「韓国料理」へのささやかな抵抗を見ることができるかもしれない。味の記憶が、過去、現在、未来をつなぐ先には何があるのか、ぜひ劇場に出現するポジャンマチャ(屋台)に集って体験していただきたい。
・アミール・レザ・コヘスタニ / メヘル・シアター・グループ 演劇「ブラインド・ランナー」
アミール・レザ・コヘスタニ/メヘル・シアター・グループ©Benjamin Krieg
2019 年以来の登場となるアミール・レザ・コヘスタニは、走ることと政治にまつわるさまざまな実話をモチーフにした作品を上演する。歩くことや走ることそれ自体が抵抗の身振りとなることは、日本にいる私たちにとっても身近なことである。
③ Super Knowledge for the Future SKF(トーク等)⇨詳細
さまざまな専門家を迎えたトークイベントやワークショップを構成。実験的な舞台芸術作品と社会を対話やワークショップを通してつなぎ、新たな思考や対話、フレッシュな問題提起など、未来への視点を獲得していく。実験的表現が映し出す社会課題や問題をともに考え、議論し、現代社会に必要な智恵や知識を深める。ここで獲得できるスーパー知識 ( ナレッジ)は、予測不能な未来にしなやかに立ち向かうための拠り所となるはずである。
チケット
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