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栗原光展 ギャラリー芽楽(名古屋)で2023年3月11-26日

Gallery 芽楽(名古屋) 2023年3月11〜26日

栗原光

 栗原光さんは1987年、長崎県生まれ。2010年、名古屋造形大学造形学部美術学科洋画コース卒業。愛知県春日井市在住。同県瀬戸市のタネリスタジオで制作している。

 2012年の愛知県清須市の第7回はるひ絵画トリエンナーレで優秀賞に選ばれ、2014年に「アーティストシリーズVol.72 栗原光展」として、清須市はるひ美術館で個展を開いている。

 2021年にも、清須市第10回はるひトリエンナーレに入選。ギャラリー芽楽での個展は今回が初めてである。

栗原光

 はるひで優秀賞を受けた作品は、郷里である長崎県の西海市に実在する「つがね落しの滝」を描いている。当時は、滝や水の流れをモチーフに描いていたが、その後、動勢そのものをテーマに据えた。

ー手繰り寄せるためのプロセスー 2023年

 滝や水の流れを描いていたときから、目前の風景を再現的に描くというよりは、抽象的な絵画空間をつくっていた。さらに流動感をストロークとして自立させることで、現在の作品につながった。

栗原光

 名古屋造形大学では、登山博文さんの指導を受け、その影響を受けた。絵画の形式への意識が強くなったことが作品にも現れている。

 はるひで優秀賞を受けたときは、とりわけ、当時、審査員だった画家の辰野登恵子さんから、画面のダイナミズムが評価を得た。現在の作品は、以前と比べると抑制された空間である。

 自然の水の流れから受けた身体性がストレートに画面に向かったのが以前のスタイルだとすれば、絵画空間の構成やストロークの動き、方向性、色彩の重なりなどを意識し、全体を制御するようになったのが現在の作品である。

栗原光

 繊細な思考、作業によって、幾何学的な形と線、ストロークの位置、方向と運筆の撥ね、色彩の配分や重なり、塗料の流れをコントロールしている。

 再現的な対象がない絵画で、ものの輪郭や量塊性を排除する一方で、流動的な筆触や色彩のレイヤー、グラデーションなどを備えた、いわゆるペインタリーな作品である。

 こうしたペインタリネスは、絵画における線的な様式と対比されるものだが、栗原さんは近年、その自律的な絵画空間に線的な要素をも取り入れ、流動的なストロークや色彩との調和をはかっている。

栗原光

 栗原さんの作品には、抽象表現主義絵画における、色彩の強さや明快で広がりのあるペインタリーな視覚的な要素と、ストロークというアクション的要素の両方が見られる。

 これまでキャンバスを立てて描いていた栗原さんは最近、キャンバスを水平に置いて描いている。

 栗原さんによると、ストロークを身体的な動きとして捉え、画面と身体との位置関係を変えることで、ストロークに変化を与える狙いがある。

栗原光

 栗原さんは、1つ1つのストロークを確認しながら描くことで、ストロークの集積、身体性と思考の流れの痕跡として、絵画が生成することに意識的である。

 作家と画面とのやり取り、滝など具体的な記憶や水の流れという自然の律動、内発的な手の動き、あるいは、予測できない体のリズム。

 それらと、色彩の重なり、筆触、線的要素などの絵画の形式的要素が一体となって、自然と理性、身体感覚が攻めぎあうようにして、作品が生まれてくる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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