L gallery(名古屋) 2022年6月25日〜7月10日
国島征二
愛知県岡崎市を拠点とした彫刻家、国島征二さんが2022年3月7日に亡くなった。本展は、もともと国島さんとの間で2022年6月に9回目となる個展の予定を立てていたL galleryが、追悼展のかたちで企画した展示である。
今後も、愛知県豊橋市のギャラリーサンセリテ(2022年9月)など、国島さんが作品を発表していた愛知、岐阜の画廊で追悼展のプランがある。
国島さんに懇意にしていただいた筆者も初日にL galleryを訪れた。生前、親しくしていた方々が次々と訪れ、作品を見ながら、国島さんを偲んでいた。
筆者も、多くの方と同様、国島さんの不在に胸がしめつけられる思いを感じ、その面影とともに作品を鑑賞した。
“記憶の成層圏Ⅸ - SEALED TIME -”
本展は、岡崎市の山中にある国島さんのアトリエとL galleryにあった作品を整理する中で35点ほどを集めた展示である。
これまでの個展と異なり、年代を分散させ、幅広い時代の多様な作品を展示していて、大変、見応えがある。
筆者が国島さんの作品を見始めたのは、1990年代で、国島さんのキャリアから見れば、ほんの一部にすぎないのだが、それでも、その中でさまざまな作品を見てきた。
黒御影石とブロンズの枝による彫刻や、アルミニウム合金の重層的な直方体を構造化した「積層体」、身近な物を透明樹脂、鉛によって記憶とともに封印した「Wrapped Memory」、あるいは平面作品などである。
今回は、これらの代表的なシリーズはもとより、これまで見たことがないタイプの作品が多く公開され、興味をそそられた。
《SEALED TIME MY TIME-CUTOFF》(1975年)もその1つである。 「積層体」シリーズとも関係がある作品と思うが、アルミニウム合金の箱の中にさまざまな小物体が収められている。
「封印された時間」とタイトルにあることからも、箱の中の物体は記憶と結び付くものかもしれない。
また、彫刻の背後に屛風のような背景を置いた作品にも注目した。
ほかにも、小さいながら凛としたたたずまいを見せる小彫刻や、蓋の裏側が真っ青に塗られ箱型の作品など、その声を聴きとりたいと思わせる作品が数多く展示されている。
関連記事は、以下のとおり。
国島さんの訃報については、「彫刻家の国島征二さんが死去 84歳」。
2021年のギャラリーサンセリテ(愛知県豊橋市)での個展については、「国島征二展 ギャラリーサンセリテ(愛知県豊橋市)5月25日まで」。
2021年のL gallery(名古屋市)でのグループ展については、「four次展Ⅲ L gallery(名古屋)で8月9日まで 伊藤慶二/国島征二/鯉江良二/田島征三」。
2020年のmasayoshi suzuki gallery(愛知県岡崎市)での個展については、「国島征二『記憶の集積』masayoshi suzuki gallery」。
2020年の masayoshi suzuki gallery(愛知県岡崎市)での2人展については、「国島征二 土屋公雄二人展 masayoshi suzuki gallery」。
2019年のなうふ現代(岐阜市)での個展については、「都市の自然を見つめて—その変わらぬ意思について 国島征二展」。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)