ハートフィールドギャラリー(名古屋) 2021年1月21〜31日
近藤葉子さんは1968年、北海道生まれ。愛知県窯業高等技術専門校専攻科修了後の1999~2001年、愛知・瀬戸市新世紀工芸館陶芸コースの1期生として学んだ。瀬戸市を拠点に制作している。
個展のほか、2014年の「現代陶芸現象」展(茨城県陶芸美術館)、2015年の「近藤葉子・水谷一子展」(瀬戸市新世紀工芸館)などに出品した。
ハートフィールドギャラリーは陶芸専門のギャラリーではないが、近藤さんは、名古屋では、このギャラリーで展示を重ねている。
瀬戸市新世紀工芸館での展示で、近藤さん自身が二人展の相手にワイヤーアーティストである水谷一子さんを選んだというところにも視野の広さが現れている。
近況を聞くと、ジュエリー、骨壷など、さまざまなジャンルとのコラボレーションを含め、自在な試みを肩肘張らずに展開させているところもあって、興味深い。
近藤さんというと、オブジェの陶芸作家の印象を強くもっていたが、最近になって、器を制作するようになった。
ギャラリーに入ると、壁一面に器が並んでいる。ご飯茶碗ということでリーズナブルな値段設定だが、抹茶茶碗の風情もある。
奇を衒わず、形や釉薬を試すように着実に制作している感じ。それぞれ落ち着いた滋味な表情を見せている。
スタンダードを大切にする一方で、碗の膨らみ、色合い、模様を変化させながら水平に展示したことで、それぞれの魅力が美しく映えている。
近藤さんの作品は、オブジェだと思い込んでいたので、器を見た今回は、ちょっとした驚きであった。
当初は器も作っていたらしいが、磁土のオブジェで評価を高めた柴田眞理子さんの影響もあって、実用ではない立体の制作に向かった。
オブジェでは、マットな白、黒の袋状の膨らみが、わずかなくびれ、屈曲、めくれ、よじれを伴いながら、先端がすぼんだり、開いていたりと、不思議な形態をしている。
この中には、器形に近いものもある。
いずれも、光沢のない白、あるいは黒色、軽やかさ、シュールな感覚が特徴である。
一部は、羽など別の素材も加えられ、オブジェとしての性格を強めている。
とりわけ、すべすべの曲面に皺立った盛り上がりがあるのが近藤さんの作品の個性。生体的、植物的に見えるこの歪な隆起によって、作品がうごめくような動きをまとう。
今回、特に目を引いたのは、この皺立つ、どこかエロティック、あるいはグロテスクな装飾が、茶碗や蓋物に加えられている点である。
過剰に主張するわけでもなく、さりげなく程よい印象の加飾となって、独特のアクセントとなっている。
青磁に挑戦するなど、新たな一歩を踏み出した。釉薬の研究にも熱心である。
今後、一層の深み、多様な展開を見せてくれるのではないか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)