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駒井正人展 目黒陶芸館本館(三重県四日市市)11月13-20日

ギャラリー目黒陶芸館(三重県四日市市) 2022年11月13〜20日

駒井正人

 駒井正人さんは1980年、山梨県出身。2003年、早稲田大学商学部卒業。2005年、多治見市陶磁器意匠研究所修了。現在、多治見市陶磁器意匠研究所に勤務している。

 2011年、第9回国際陶磁器展美濃でグランプリを受賞。「東海現代陶芸 思考する新世代展」(2011年、愛知県陶磁美術館)、「現代・陶芸現象」(2014年、茨城県陶芸美術館)などグループ展にも出品している。2021年、「美濃からの発信 やきものの現在」(ギャラリーヴォイス)に参加した。

 目黒陶芸館では、2010年、12年、15年、17年と個展を開き、今回は5年ぶりとなる。

 展示の中心はミニマルな形態の急須である。シンプルながら、研ぎ澄まされた感性で形を探求。指跡、装飾を排除したモノクロームの世界である。

 柔らかく、同時に凜と引き締まった形態。置かれた場所、周囲の空気としっかり関係を結ぶ繊細で清浄なたたずまいが深い精神性を感じさせる。

目黒陶芸館本館 2022年

 黒色の急須は陶土、白色は磁器土を使っている。胴はもちろん、ふた、つまみ、手、口も全てろくろでつくっている。

駒井正人

 急須は用途面としては高機能なアイテムである。ふたなど部位が多く、使い勝手の良さが求められる。

 言い方を変えると、表現性を出しすぎると使いにくくなる。駒井さんも、自由に表現するというよりは、制限のある中でどう自分なりの表現を深めるかに苦心してきた。

 意識を向けたのは、加飾でなく、形、特に胴の膨らみである。ろくろで一個一個成形する中で、膨らみの均衡点を探していく。ろくろを回し、土を立ち上げ、わずかな差をコントロールしながら、ボディの形を探求するのだ。

駒井正人

 作品には、ボディの張りともいうべきボリューム感と、繊細な表面の肌理から中心に向かって密度を感じさせる求心力の調和が見て取れる。

 釉薬によって形が見えにくくなることを避け、あえてモノトーンでシンプルに作ることで、輪郭を強調する。

 美しく端正な胴にパーツが付いた形として、どう着地させるか。表現性を抑えた巧まざる造形から生まれるミニマルな形態に存在感が現れる。

駒井正人

 機能性を阻害することなく、それでも、ぎりぎりの線で造形をベースに据えている。胴の形と、そこにつながる細部との関係性ーー。細やかな部分まで丁寧に造形することで、シンプルな形態に手仕事の美しさが宿る。

 筆者は、幾何学性と、手業によって生まれる温かみのあるライン、急須の機能要素が結びついた形態に、伝統と、洗練された現代の生活感覚、作家性の融合を見る思いだ。

駒井正人

 クラシカルでコンテンポラリーな急須。ニュアンスのある形態は、柔らかい光を受けとめ、まろやかな陰影を帯びながら、静かにたたずんでいる。

 ことさら強い主張も、ダイナミズムも、装飾もなく、形態のわずかな差異によって、凛としたバリエーションを生みだしていく。その静寂な世界のなんと魅力的なことか。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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