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小池陽子 FLOW(名古屋)で9月17-19、23-25日

PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA(名古屋) 2022年9月17〜19、23〜25日

小池陽子

 小池陽子さんはバレエダンサーとしてキャリアをスタート。2008年、コンテンポラリーダンスに移行した。現在は埼玉県を拠点に、ダンサー、振付家として国内外で活動。音楽、映像の編集、構成も手掛けている。

 元縫製工場跡をセルフリノベーションし、2017年にオープンした名古屋市内の「ダンスハウス黄金4422」(代表は舞踏家の浅井信好さん)の企画・運営に関わり、名古屋学芸大学メディア造形学部映像メディア学科の非常勤講師を務めるなど、名古屋と縁があった。

 2021年、SC∀L∃R(スカラー)を立ち上げ、アーティスト・コレクティブでプロジェクト単位での創作活動を始めた。

 今回のプロジェクトでは、《mind scape》(9月17-19日)と、《齢 instar》(9月23-25日)という2つの企画がある。ともに、音楽に、ダムタイプ初期のメンバーとして知られる山中透さんが加わっている。後半の齢 instar》は、SC∀L∃Rのプロジェクトである。

mind scape(マインドスケープ)

小池陽子

 小池さんが2021年度の中川運河再生文化芸術活動助成事業(ARToC10)の一環で取り組んだ。

 名古屋市中心部と名古屋港を結ぶ中川運河の活性化を目的に、名古屋都市センターが2013年度に始めた助成事業である。

 中川運河は、長さ約8.2キロ。1932年に完成し、工場の資材や製品を運ぶ物流の大動脈として機能したが、貨物輸送の中心がトラックに移り、発展から取り残された。

 現在、名古屋市が再開発を含め、さまざまな活性化策を進めている。 

 小池さんは、2021年から約1年半かけて、中川運河の緩やかな流れや、よどみ、その両岸エリアの町工場、街路など周辺の風景、人々の営みを撮影した。

小池陽子

 それに、名古屋高速の建設など過去の資料映像も織り混ぜ、過去と現在が交差する映像インスタレーションに仕上げた。映像の手前に、水の入った水槽が置かれ、スクリーンにその影が映る構造である。

 中川運河に関する断片的なシークエンスがオーバーラップしながら連なっていく。水槽のフレームの影の介入を受けながら、時空の次元が切り替わるように映像が変転する。

 そこにあるのは、社会の高速化、高度化から取り残されたノスタルジックな風景、街や身近な自然の懐かしいイメージ、素朴な人間の営みである。

 過去と現在、映像と物質が、世界の錯綜した関係を浮かび上がらせる。水槽のフレームの影が、映像とシンクロすることで、世界を分節する枠組みのメタファーになっている。

小池陽子

 映像が正面のみならず、周囲の壁に映り込むように目論まれ、鑑賞者は、視点によって見え方が変わる。

 映像と光が乱反射して常に動き続け、入れ替わる。過去と現在を行き来しながら移ろい、揺らぐ世界が、中川運河の過去と現在、未来をどう見るのか、問いかけてくる。

齢 instar

 《齢 instar》は、昆虫の発育段階の区分である。時間と、それに伴う変容が、空間、映像と音、身体の関係で紡がれる。

 映像・写真作家の山根晋さんが参加。インスタレーションの中で、小池さんがパフォーマンスを披露するという試みである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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