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国立工芸館 近代工芸と茶の湯のうつわ―四季のしつらい―4月29日〜7月4日

荒川豊蔵《志野茶垸 銘 不動》
1953 年頃 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

国立工芸館石川移転開館記念展Ⅲ
近代工芸と茶の湯のうつわ―四季のしつらい―

 石川県金沢市出羽町の国立工芸館で2021年4月29日〜7月4日、特別展「国立工芸館石川移転開館記念展Ⅲ 近代工芸と茶の湯のうつわ―四季のしつらい―」が開かれる。

 工芸館が東京・北の丸公園から石川・金沢に移転したのに合わせて開催する移転開館記念展の第 3 弾 。

人間国宝らが生み出した“茶の湯のうつわ”を中心に約150点を紹介

安藤源一郎《紙胎蒟醬 風籟茶器 》、内田鋼一《白金彩茶 盌 》、新里明士《光器水指》 いずれも 2020 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
安藤源一郎《紙胎蒟醬風籟茶器 》、
内田鋼一《白金彩茶盌 》、新里明士《光器水指》
いずれも 2020 年 東京国立近代美術館蔵
撮影: 大屋孝雄

 近代工芸の名品・優品で工芸館の幅広いコレクションを紹介した第1 弾、コレクションのもう一つの顔であるデザイン作品にスポットを当てた第2弾に続き、第3弾では、茶の湯の文化が広く根付く金沢という土地柄を意識して、「茶の湯のうつわ」をテーマに据えた。

 つねに時代を映す鏡のように、新たな考えや造形、そして意匠を見せている個人作家の「茶の湯のうつわ」と、使い手からの「見立てのうつわ」を、四季の取り合わせの中で展示。時代によって移りゆく茶の湯に対する作家の思考や、現在における茶の湯の造形について紹介する。

加藤唐九郎《鼠志野茶盌 銘 鬼ガ島》 1969 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
加藤唐九郎《鼠志野茶盌 銘 鬼ガ島》
1969 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

観覧料

一般 500円(400円)
大学生 300円(150円)
※高校生以下および18歳未満、障害者手帳のある人と付添者1名までは無料
※( )内は割引料金
割引対象:石川県立美術館・金沢21世紀美術館・石川県立歴史博物館・石川県立伝統産業工芸館(いしかわ生活工芸ミュージアム)・金沢市立中村記念美術館・金沢ふるさと偉人館の主催展覧会入場券半券、SAMURAIパスポート (一般のみ)を窓口で提示した人

松田権六《蒔絵松桜文棗》 1969 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
松田権六《蒔絵松桜文棗》
1969 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

オンライン事前予約

オンラインによる事前予約(日時指定・定員制)を導入している。若干数、当日券も用意している。

田口善国《水鏡蒔絵水指》1970 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
田口善国《水鏡蒔絵水指》
1970 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

茶の湯にまつわる「表現」と「見立て」のうつわの取り合わせ

国立工芸館コレクションに加え、個人の所蔵家から借用した作品も展示紹介

 これまで工芸館では、東京・北の丸公園で、2010年に「茶事をめぐって」展、2015年に「近代工芸と茶の湯」展、2016年には「近代工芸と茶の湯Ⅱ」展を開催。近代工芸の発展・展開の中でつくり出された茶の湯に関するうつわを広く紹介してきた。

黒田辰秋《金鎌倉五稜茶器》1980 年頃 東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト
黒田辰秋《金鎌倉五稜茶器》
1980 年頃 東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

 近代以降、作家と呼ばれるつくり手の中には、近世以降の茶の湯のうつわを発想の原点とし、また制作の拠り所として、個を意識した作品づくりを目指した作家が少なくない。

 造形や意匠に工夫を凝らした「茶の湯のうつわ」は、個を映し出す「作品」であるとともに「表現のうつわ」でもある。

◆茶の湯のうつわを楽しむ

 茶碗・水指・茶器・花入など、個々のうつわにスポットをあて、その造形や意匠の広がりを概観する。

初代長野垤志《松林の図肩衝釜》1959 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
初代長野垤志《松林の図肩衝釜》
1959 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

 例えば、「志野」と呼ばれる茶碗は、桃山時代に岐阜県の東濃地域で焼造された。

 近代以降、茶人や数寄者ら使い手だけでなく、つくり手にとっても憧れを持って接する対象となり、素材の解明や技法の再現に取り組む活動が多く見受けられるようになった。

 そして、荒川豊蔵や加藤唐九郎らの活動によって、作家自身の考えを映し出すさまざまな志野の茶碗がつくり出された。

 本展では、令和2年度に新しく収蔵した荒川豊蔵(1894-1985)と加藤唐九郎(1897-1985)の志野の茶碗を見比べ、志野というやきものに対するそれぞれの考えを探る。

生野祥雲齋《白竹一重切華入くいな笛》 1967 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
生野祥雲齋《白竹一重切華入 くいな笛》
1967 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

◆取り合わせを楽しむ

 茶事では、さまざまな茶の湯のうつわが同じ空間に存在する。それも陶磁や漆工、竹工など、素材も分野も多彩である。

 なかでも茶碗と茶器、あるいは、それらに水指が加わったうつわのセットには、その場を設定した者の考えが垣間見える。言葉を変えれば、取り合わせには、それぞれにストーリーがある。

三輪休和《萩編笠水指》1975 年 東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト
三輪休和《萩編笠水指》
1975 年 東京国立近代美術館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

 本来であれば、季節や素材によって取り合わせに制約があるが、展覧会の中では、それを超えて、色や形、雰囲気など、見た目で楽しむ取り合わせを季節を意識しながら楽しむこともできる。

茶箱について
 茶室から離れ 、いつでも好きな時、どこでも好きな場所で茶を楽しむ道具のセットとして茶箱がある。その小さな箱の中には、茶碗や茶器、茶筅や茶杓など、茶を点てる道具一式が入っている。近年、茶道を知らない方でも茶を楽しむ道具として、茶箱が注目されている。

氷見晃堂《唐松砂磨茶箱》1964 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
氷見晃堂《唐松砂磨茶箱》
1964 年 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄

◆現代の「茶の湯のうつわ」

 2020年、工芸館の移転・開館を記念して、クラウド・ファンディングによる「12人の工芸・美術作家による新作制作プロジェクト」が実施された。

 その中で、「茶の湯」をテーマに、12人の作家が茶碗や水指など、茶の湯に関するうつわを制作した。

 これらのうつわは移転開館記念展の第1弾で紹介されたが、今回は、工芸館のコレクションとともに改めて紹介される。

見どころ

◎茶の湯のうつわの造形や意匠の広がりを概観!

令和2年度に新しく収蔵した荒川豊蔵(1894-1985)と加藤唐九郎(1897-1985)の志野の茶碗を見比べ、志野というやきものに対するそれぞれの考えを探る。

◎茶碗を3D鑑賞しよう!

会場に設置するQRコードからアクセスし、スマホにデータをダウンロードすることで、手元で茶碗をぐるぐる回しながら見られる。高台も、作品に刻まれたサインも見ることができる。

◎来館者には仮想の茶事体験を!

展示ケースだけではなく茶室を会場内に設置し、さまざまな茶の湯のうつわを並べる。

◎中田英寿名誉館長セレクション、茶の湯のうつわ!

内田繁デザインの《茶室 受庵》を使用し、工芸館のコレクションの中から中田英寿名誉館長が選んだ茶の湯のうつわを見ることができる。

荒川豊蔵《志野茶 垸 銘 不動》 1953 年頃 東京国立近代美術館蔵 撮影: 大屋孝雄
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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