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「大森健司陶展 ー響ー」ギャラリー芽楽(名古屋)で2024年11月16日-12月1日に開催

Gallery 芽楽(名古屋) 2024年11月16日〜12月1日

大森健司

 大森健司さんは1982年、埼玉県生まれ。東京造形大学で環境計画を専攻するとともに陶芸サークルで焼き物にのめり込んだ。卒業後、2007年に岐阜・多治見市陶磁器意匠研究所を修了。多治見市で制作した後、現在は岡山市に移って工房を構えている。

 素直に造形された形態とともに焼き物らしさが直截に伝わる温かく素朴な味わいが魅力である。「現在形の陶芸萩大賞展」など公募展での入選のほか、各地でグループ展、個展を重ねている。

 芽楽での個展は5回目。今回の個展では、展示空間の中央に大壺を配し、周囲に普段使いの器類を並べている。黒土、赤土を使うが、今回は黒土による作品となる。

ー響ー 2024年個展

 意匠研時代は、白い土を使って彫刻的なオブジェを制作。大学での環境や建築の研究も踏まえ、空間に線を引くように精緻な抽象形態を構築していた。

 以後、それまで以上に焼き物らしさを追求し、制作を突き詰める中でも回転体として形態を逸脱することはなく、むしろ器物への意識を高めることになった。

 その一方で、とりわけ大型作品の制作においては、空間を意識した物体性が強く現れている。土素材へのこだわりと手わざによる造形、焼成のプロセスを経て完成した作品には、焼き物ならではの深みと空間に余韻を響かせる力が備わっている。

 今回の大壺も、用途というよりは、空間の中でのボリューム、簡素でしみわたるような佇まいや、表面の手ざわの痕跡が一体となって奥深い存在感を見せている。

 小さい作品はろくろで成形しているが、大型の壺は、ひもづくり。時間をかけて、形を立ち上げていくプロセスを大事にすることで、土に向かう作家の造形意識と、手の動きをしっかり土と関わらせていることが伝わってくる。

 量感豊かな形態には土の凹凸の痕跡がしっかり残っている。黒土で造形し、白の化粧土をかけて焼くことで焼成後、表面の白土が剥がれ、表面にフォッグのような白い層ができる。偶然性による、靄然あいぜんたるグレーの表情が見どころである。

 器の内側に釉薬をかけ、外側は光沢のないマットな姿。土らしさがあって、プリミティブな印象ながら、洗練されている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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