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追悼 ジャン゠リュック・ゴダール映画祭 名古屋シネマテークで5月6-19日

追悼 ジャン゠リュック・ゴダール映画祭 9作品を上映

 2022年9月に91歳で死去したジャン゠リュック・ゴダール監督の9作品を特集する「追悼 ジャン゠リュック・ゴダール映画祭」が2023年5月6〜19日、名古屋シネマテークで開催される。 

 名古屋シネマテークでは2023年1〜2月、1961年から1965年まで夫婦だったアンナ・カリーナ(1940-2019年)主演作を中心に5点が上映された。

スケジュール

5/65/75/85/95/105/115/12
15:00小さな兵隊カラビニエパッションカルメンという名の女ゴダールの決別小さな兵隊カラビニエ
16:50はなればなれにウイークエンドゴダールのマリアゴダールの探偵はなればなれにウイークエンドゴダールのマリア
5/135/145/155/165/175/185/19
16:00パッションカルメンという名の女ゴダールの決別小さな兵隊カラビニエパッションカルメンという名の女
17:50ゴダールの探偵はなればなれにウイークエンドゴダールのマリアゴダールの探偵はなればなれにゴダールの決別

ラインナップ(公式サイトより)

『小さな兵隊』Le Petit Soldat

『小さな兵隊』THE LITTLE SOLDIER ©︎1962-STUDIOCANAL IMAGE

1960年/88分/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:モーリス・ルルー
出演:ミシェル・シュボール(ブリュノ)、アンナ・カリーナ(ヴェロニカ)、ラズロ・サボ(ラズロ)
極右のOAS(秘密軍事組織)およびこれと対立する組織FLN(アルジェリア民族解放戦線)の間で翻弄される男女のスパイを描いた長編第二作。60年に完成していたが、アルジェリア戦争を主題とし、両組織による拷問を批判的に描いたことで63年まで公開されなかったいわくつきの作品。アンア・カリーナが初めて出演したゴダール映画でもある。二人は本作完成後に結婚した。

『カラビニエ』Les Carabiniers

1963年/80分/原作:ベニャミーノ・ヨッポロ/脚本:ゴダール、ジャン・グリュオー、ロベルト・ロッセリーニ/撮影:ラウル・クタール/音楽:フィリップ・アルチュイ
出演:マリノ・マゼ(ユリース)、アルベール・ジュロス(ミケランジュ)、ジュヌヴィエーヴ・ガレア(ヴェニュス)、カトリーヌ・リベイロ(クレオパトル)
題名は「歩兵たち」の意。イタリア人作家ヨッポロの同名舞台劇に基づく寓話的反戦・反帝国主義風刺劇。前年に同劇を演出したロッセリーニが、脚本家の一人として名を連ねている。架空の国の貧しく学のない若者二人が、世界の富をわがものにできるとの甘言に釣られて「王様」からの徴兵に応じ出征、破壊と略奪の限りを尽くすが……ジャン・ヴィゴに捧げられている。

『はなればなれに』Bande à part

1964年/96分/原作:ドロレス・ヒッチェンズ/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:ミシェル・ルグラン
出演:クロード・ブラッスール(アルチュール)、アンナ・カリーナ(オディル)、サミー・フレイ(フランツ)
先頃邦訳が刊行されたアメリカ人作家ヒッチェンズの小説に基づく作品。若者二人組とナイーヴな娘が織りなす三角関係と彼らの犯罪計画を軸とした、奔放な悲喜劇。物語の内と外を自在に出入りする、ゴダール自身の声によるナレーションもユニーク。タランティーノ、ベルトルッチ、ハートリーら本作への偏愛を隠さない映画作家やミュージシャンは数多い。

『ウイークエンド』Week-end

1967年/104分/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:アントワーヌ・デュアメル
出演:ジャン・ヤンヌ(ロラン)、ミレーユ・ダルク(コリーヌ)、ジャン゠ピエール・カルフォン(FLSOの指導者)
各々愛人がいて、密かに互いを殺す機会をうかがうプチブル夫婦。二人は遺産相続のため妻の実家へと車を走らせるが、この長旅はトラブルや奇妙な人物たちを通じて次第に混沌とした非現実的なものへと変貌していく……性と政治の季節に作られたポストモダン的黒い喜劇。交通渋滞を描いたくだりの移動撮影は、映画史上最も長いものの一つだとされる。

『パッション』Passion

1982年/88分/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/ヴィデオ撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー
出演:イザベル・ユペール(イザベル)、ミシェル・ピコリ(ミシェル)、ハンナ・シグラ(ハンナ)
欧州古典絵画の数々を活人画として再現した芸術映画製作に取り組む野心的ポーランド人監督。国際的製作班による「(完成しない)映画作りを描いた映画」としての側面を備える本作は、夏の陽光に満たされたかつてのゴダール映画『軽蔑』を冬の光の中で再創造する。ここでも物語は芸術(創造行為)と生活(性や金銭を巡る諸問題)の間を往還するだろう。

『カルメンという名の女』Prénom Carmen

1983年/85分/脚本:アンヌ゠マリー・ミエヴィル/撮影:ラウル・クタール、ジャン゠ベルナール・ムヌー
出演:マルーシュカ・デートメルス(カルメンX)、ジャック・ボナフェ(ジョゼフ)、ミリアム・ルーセル(クレール)
テロリストと思しき集団と共に銀行を襲撃する美貌の娘カルメンと、彼女と恋に落ちた警備員ジョゼフがたどる数奇な運命。そこにカルメンのおじで精神病院に入院中の元映画監督ジャン(ゴダール自身が演じている)およびベートヴェンの弦楽四重奏曲を練習する演奏家集団が交差しつつ、悲喜劇的なラストですべてが合流する、ゴダール流“カルメン映画”。

『ゴダールのマリア』Je vous salue, Marie

1985年/107分/脚本:ゴダール/撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー/編集:アンヌ゠マリー・ミエヴィル
出演:ミリアム・ルーセル(マリー)、ティエリ・ロード(ジョゼフ)、ジュリエット・ビノシュ(ジュリエット)
聖母マリアをスイスの女子学生マリーへと変換し、イエスの処女生誕の物語を現代に置き換えて語り直した、ある意味挑発的な作品。カトリックの教義に言及しつつ、マリー役のルーセルが全裸となる場面があるためヨハネ・パウロ二世に批判され、上映禁止措置がとられた国もある。また抗議活動や爆破予告の対象となった劇場もあり、各国で物議を醸した。
※アンヌ=マリー・ミエヴィル監督の短篇『マリアの本』とゴダール監督の『こんにちは、マリア』の2部構成。

『ゴダールの探偵』Détective

1985年/98分/脚本:アラン・サルド、フィリップ・セトボン、ゴダール、アンヌ゠マリー・ミエヴィル/撮影:ブリュノ・ニュイッテン、ピエール・ノヴィオン、ルイ・ビイ
出演:ジャン゠ピエール・レオ(イジドール)、ジョニー・アリディ(ジム)、ナタリー・バイ(フランソワーズ)
探偵と刑事、ボクシング関係者、飛行士夫妻、老いたマフィアらが滞在中のホテルで交差する姿を、スター俳優を起用して描いた犯罪群像悲喜劇。『マリア』の完成資金を稼ぐためにゴダールが引き受けた企画で、カサヴェテス、イーストウッド、ウルマーに捧げられているのもそれぞれ商業的要請の中で見事な犯罪劇を撮った彼らへのオマージュと受け取れる。

『ゴダールの決別』Hélas pour moi

『ゴダールの決別』ALAS FOR ME ©︎1993-STUDIOCANAL IMAGE

1993年/84分/脚本:ゴダール/撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
出演:ジェラール・ドパルデュー(シモン)、ロランス・マスリア(ラシェル)、ベルナール・ヴェルレー(アブラン)
ある男がスイスの小村で数年前に起こった出来事を調査する。一連の回想を通じて明らかになるのは、夫が出張中、妻のもとに夫の姿を借りた神が訪れた、という摩訶不思議な話だった。ギリシャ神話中のゼウス神が夫に化けて人妻と時を過ごす伝説に想を得た、人間の欲望、苦悩、歓びを巡る真実を経験したいとの神の願望を巡る物語。シャンプティエの撮影と相まって、最も美しいゴダール映画の一本と評される。

ジャン゠リュック・ゴダール Jean-Luc Godard(公式サイトより)

 1930年12月3日、パリ生まれ。両親共に富裕なプロテスタントのフランス系スイス人の家系。父は医師。母方の血族は知識人・芸術家・聖職者・政治家・財界人ら名士揃いだった。幼い頃に家族と共にスイスへ移住。スイスとフランスを行き来する生活を送った後、パリ大学に合格、人類学を専攻するが講義には出席しなかった。代わりに各種シネクラブに出入りするようになり、エリック・ロメール、ジャック・リヴェット、クロード・シャブロル、フランソワ・トリュフォーら映画狂にしてカイエ・デュ・シネマ誌を拠点とする後の批評家仲間と知り合う。その後、批評家として活動しながら短編映画製作を開始。ロメールやトリュフォー、俳優ジャン゠ポール・ベルモンドらと協働しながら数本の作品を発表した後、長編第一作『勝手にしやがれ』(60)を監督する。
 『勝手にしやがれ』で衝撃的なデビューを飾って以来、ゴダールのキャリアはおよそ10年毎に転回点を迎えた。まず、古典的ハリウッド・システムが確立した従来の映画文法から大きく逸脱しながらも、「物語映画」としての枠組みはかろうじて維持していた60年代。次いで、物語やジャンルの枠組みを拒絶し、政治・社会性の強い主題をめぐって論争的・分析的な作品群を発表し続けた70年代。そして80年代を目前に控えたゴダールは、自ら商業映画への回帰を宣して、『勝手に逃げろ/人生』(80)を発表する。一方、70年代からテレビシリーズ製作やヴィデオ撮影にも積極的に関心を示し、その集大成的成果として20世紀史と映画史を交錯させた八部構成のヴィデオ・シリーズ『ゴダールの映画史』(88~98)がある。
 2000年代以降もフィルムとヴィデオを自在に使い分けながら歴史・戦争をはじめとする暴力・老い・愛といった主題に取り組みつつエッセイ的・実験的作品を製作し続けた。『さらば、愛の言葉よ』(2014)では3D撮影に取り組んでいる。2022年9月13日、スイスのロールにて死去。享年91。最後の作品は『イメージの本』(2018)。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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