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伊藤里佳・三木瑠都展「パイナップル会議」ガレコ(名古屋)で2024年6月18日-7月9日、ガレコ(豊橋)で9月6-29日に開催

  • 2024年7月2日
  • 2024年7月2日
  • 美術

garage NAGOYA gareco(名古屋) 2024年6月18日~7月9日
garage TOYOHASHI gareco(愛知・豊橋) 2024年9月6~29日

伊藤里佳・三木瑠都

 伊藤里佳さんは1981年、神奈川県生まれ。2005年、名古屋芸術大学美術学部絵画科洋画専攻版画コース卒業。2007年、名古屋芸術大学大学院同時代表現領域修了。

 名古屋市在住。愛知県を中心に国内外の個展やグループ展で、モノプリント(モノタイプ)や銅版画などを精力的に発表している。2人の男児の子育てをしながら制作している。

 三木瑠都さんは1982年、神奈川県生まれ 。2005年、名古屋芸術大学絵画科洋画コース卒業。2007年、名古屋芸術大学大学院美術研究科同時代表現コース修了。

 愛知県在住。近年は名古屋のギャラリーNで個展を開いている。現在は渥美半島(田原市)のアトリエで庭づくり、畑作業をする中で自然の光に惹きつけられながら、絵画を探究している。

「パイナップル会議」2024年

 2018年ごろ、伊藤さんからの提案で、互いの作品を交換し、それに相手が描き加えることで往復書簡、あるいは連歌のようにコラボレーションするプロジェクトが開始された。

 ただ、実際には、2人とも互いの忙しさもあって、何もしないまま5年ほどが経過。2024年の春先に、それぞれのアトリエを互いに訪問し、合宿するかたちで描いたのが今回の作品群である。

 それぞれの過去の作品に相手が描き加えて変化させた作品のほか、ゼロから2人で新たに共同制作したものもある。

 2人のスタイルに響き合うところがあるのか、ベースの作品が伊藤さんなのか、三木さんなのか分からないところもある。

 モノプリントの色彩と形が一体化して転写された伊藤さんのフラットでヴィヴィッドな作風と、現実の風景などを題材にしながら、風土や気候、光、空気感、あるいは記憶、空想を織り込むことでフィクショナルで謎めいた異空間に変容させる三木さんの世界観がフィットしているのだ。

 全体に軽やかさ、色彩の豊かさが溢れた気持ちの良い展示だが、特に、三木さんのアトリエのある渥美半島の砂浜、海岸線を描いた風景画の数点が出色である。

 2人が即興的なやりとりの中で、お互いの感覚を共振させながら描いている楽しさ、自由さ、共同性がそのまま画面に息づいているのだ。

 空の大気の流れと、砂浜の休憩所の柱やその影、あるいは植物のユーモラスで躍動するような筆致が、2人が過ごした海岸の至福の雰囲気を運んでくれる。

 とどのつまり、人間は感じる生き物である。伊藤さんと三木さんが渥美半島の海岸にいたときの生命力と感覚が、広大な海や空、降り注ぐ光、風などと一体となって投影されているような作品である。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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