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イメージフォーラム・フェスティバル2021 愛知芸術文化センターで11月26-28日

『バーン・ボーイズ』監督:カウンミェトゥチョー/デジタル/11分/2020(ミャンマー)

35th IMAGE FORUM FESTIVAL
イメージフォーラム・フェスティバル2021

 先鋭的、実験的な映像表現によって、映像アートの最新動向を紹介する「イメージフォーラム・フェスティバル2021」(イメージフォーラム主催、愛知県美術館共催)が2021年11月26〜28日、名古屋・栄の愛知芸術文化センター12階アートスペースA、EFで開かれる。

 35回目を迎える今年は、全12プログラムの52作品を上映。ほかにインスタレーション1作品が展示される。

 特集プログラムは「フィルム・イン・シェルタ—映画の停泊地」 。パンデミック、自然災害、政治的受難などで脅かされる 「映画」の存在にフォーカスする。

 ミャンマーやタイ、インドネシアなどでセレクトされた作品を通して、「映画」が存続の困難な状況に直面したとき、どのようにして存続できるのかを、アジア各国の上映者やキュレーターとの対話から探る。

 日本、中国、香港、台湾、韓国の東アジア地域を対象とし た公募部門「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティ ション」では、今年も東アジア地域の「今」を映しだす26作品がノ ミネートされた。

 ほかに、ファーン・シルヴァ『ロック・ボトム・ライザー』、かわなかのぶひろ特集も。

 新設された「SHIBUYA SKY賞」(新人賞)を名古屋学芸大学出身の西尾秋乃さんが受賞した。

タイムテーブル

チケット情報

1回券:一般1,200円/学生800円/イメージフォーラム会員1,000円 ※ 自由席、各回入替制

特集:フィルム・イン・シェルター 映画の停泊地

 自然災害、政治的受難など、さまざまな理由で「映画」の存在は脅かされている。上映マテリアルの消失や破損・劣化、あるいは上映場所やプログラミングそのものが危機に晒される。

 「映画」にとって存続が困難な状況が現れたとき、映画はどのようにして存続できるのか。トランスナショナルな対話を通じて、その可能性を探る。

G1 ワッタン映画祭とミャンマーインディペンデント映画の10年(4作品64分)

『バーン・ボーイズ』監督:カウンミェトゥチョー/デジタル/11分/2020(ミャンマー)

【11/28(日)11:00】

 2021年2月の軍事クーデターで、危機的状況にあるミャンマーのインディペンデント映画。その中心的存在 であるワッタン映画祭からの最新映像作品集である。

 2011年以降、ミャンマーのインディペンデント映画の拠点として重要な役割を担ってきたワッ タン映画祭。10年の節目を迎え、新世代が新たな風を吹き込みはじめた。これからの可能性を伝えるフレッシュな4作品を上映する。 プログラム提供:ワッタン映画祭

 『とある晩夏の日』監督:ネーウナニ/デジタル/23分/2020(ミャンマー) 『ゴキブリ』監督:シャーキッス/デジタル/10分/2020(ミャンマー) 『バーン・ボーイズ』監督:カウンミェトゥチョー/デジタル/11分/2020(ミャンマー) 『若者の時代』監督:ミョーターキン/デジタル/20分/2020(ミャンマー) 上映後プログラム解説映像あり:タイディ(ワッタン映画祭ディレクター)

G2 “頭を空に向けておけ”(5作品86分)

【11/28(日)13:15】

 注目の映像作家が続々と登場するフィリピンから、<災害>をテーマとした映像作品集である。

 フィリピンにおける重要なアートスペース「グリーン・パパイヤ」の2020年6月の火事を受け、映像作家ジョン・トレスとシリーン・セノのチーム「ロス・オトロス」がセレクトした短編映像集。 キュレーション:ロス・オトロス

 『トゥンクン・ランギット』監督:キリ・ダレーナ/デジタル/27分/2013(フィリピン) 『アニート』監督:マーサ・アティエンザ/デジタル/8分/2015(フィリピン) 『カウント_』監督:ジャジャ・アルンパック/デジタル/13分/2021(フィリピン) 『内なる豚を鎮めるために』監督:ジョアンナ・アロング/デジタル/19分/2020(フィリピン) 『Here, Here』監督:ジョアン・セサリオ/デジタル/19分/2020(フィリピン) 上映後プログラム解説映像あり:ジョン・トレス(映像作家、ロス・オトロス)

G3 無知の幸福:バンコク街頭の遠い展望に寄せる歌(6作品121分)

【11/28(日)15:45】

 アジアのアート映画を牽引する才能がひしめくタイの急変する政治状況に過激かつメタフォリックに応答する最新映像集。

  2020年に街頭に繰り出し社会変革を求めたいわゆる“Z世代”の若者たちは、タイの社会、文化に大きなインパ クトを与えた。この政治状況に呼応するかのように、タイでは新たな映像作品が次々と生まれ、コロナ禍にお いて、さらなる変動の萌芽が蠢いている。

 紹介されるのは、タイのインディペンデント・キュレーター、ウィワット・ラー トウィワットオンによる“政治活動を遠望するコメント”としての新作映像である。

 国際映画祭の常連ソラヨ ス・プラパパン、タイキ・サクシピットや、ロカルノ、ロッテルダム映画祭などで注目された作品など、タイの 最注目映像作家の作品を上映する。 キュレーション:ウィワット・ラートウィワットオン

 『地下墓地』監督:ウィッサルット・シープッタソムプーン/デジタル/30分/2020(タイ) 『移転する動物園についてのプレリュード』監督:ソラヨス・プラパパン/デジタル/16分/2020(タイ) 『赤いアニンシー;あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く』監督:ラッチャプーン・ブンバン チャーチョーク/デジタル/30分/2020(タイ) 『スティル・オン・マイ・マインド』監督:ジッタリン・ウティパン/デジタル/3分/2020(タイ) 『財布ファッカーの日誌』監督:ティーラパート・ウォーンパイサーンキット/デジタル/12分/2020(タ イ) 『夜の星』監督:ムアンダーオ・カモンタム/デジタル/30分/2020(タイ)上映後プログラム解説映像あり:ウィワット・ラートウィワットオン(映画キュレーター)

G7 韓国先鋭的映像コレクティブ70-80’s: カイドゥー・クラブとヤラション(6作品66分)

【11/28(日)18:30】

 パク・チョンヒの独裁維新体制下、梨花女子大に属していた学生たちが1974年に結成した韓国最初のフェミニスト映画コレクティブ「カイドゥー・クラブ」。

 あるいは、1979年にソウル 大学の学生たちによって結成され、光州事件の影響を大受けつつ、のちの韓国インディペンデント映画シーンの基礎をなしたグループ=ヤラション。

 超抑圧的な政治状況おいて精力的に先鋭的映像の制作を試みた2 つのコレクティブによる映画を紹介する。 キュレーション:キム・ジハ(ACCシネマテーク プログラマー)

 『穴』監督:ハン・オクヒ/16ミリ(デジタル版) / 8分 / 1974(韓国) 『中伏』監督:ハン・オクヒ/16ミリ(デジタル版) /7分 / 1974(韓国) 『2分44秒』監督:ハン・オクヒ/16ミリ(デジタル版) /10分 / 1975(韓国) 『無題77-A』監督:ハン・オクヒ/16ミリ(デジタル版) /7分 / 1977(韓国) 『ソウル7000』監督:キム・ホンジュン+ファン・ジュホ/16ミリ(デジタル版) /7分 / 1976(韓国) 『島』監督:パク・クァンス/16ミリ(デジタル版) /27分 / 1981(韓国) 上映後プログラム解説映像あり:キム・ジハ(ACCシネマテーク プログラマー)

エクスペリメンタル・パノラマ

L ロック・ボトム・ライザー(1作品70分)

『ロック・ボトム・ライザー』監督:ファーン・シルヴァ/デジタル/70分/2021(アメリカ)

【11/27(土)19:00】

 実験映像作家、映像アーティストとして世界中の映画祭、美術館で作品が紹介されているファーン・シルヴァの初長編作品である。

 溶岩、星空、広大な海。宇宙の起源から植民地の時代へ。

 エネルギーに溢れた映像とサウンドトラックで、ネイ チャー・ドキュメンタリーの概念を吹き飛ばすダイナミックな映像は、2021年、ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門審査員特別賞を受賞した。

 天文学、地質学、コロニアリズム、文化人類学など、多角的な視点を用いて、ハワイの神聖なる山マウナ・ケアを中心に、ドキュメンタリー、フィクション、アニメーションを交錯させながら描くエッセイフィルムである。 監督:ファーン・シルヴァ/デジタル/70分/2021(アメリカ)

フィルムメーカーズ・イン・フォーカス かわなかのぶひろ特集

 映像作家にして、日本の個人映画、実験映画のオルガナイザーでもある、かわなかのぶひろの主要作品をセレクトした特集プログラム。

 再撮影、マルチスクリーンなど、テクニックを駆使して映画の特性に言及する構造的な作品から、常にカメラを携帯して日常をとらえる制作スタイルによる日記的な作品まで、ジョナス・メカスの「自分でやらなきゃ駄目さ」という言葉に導かれ、常に「個」を起点に表現を続てきた50年の軌跡をたどる。

M1 かわなかのぶひろ特集1「“撮る”根拠」(4作品116分)

かわなかのぶひろ『スイッチバック』/16ミリ(デジタル上映)/9分/1976

【11/26(金)18:30】

 記憶をテーマとした代表作『スイッチバック SWITCHBACK』、映像と音声の関係を鮮やかに表現したビデオ・ アートの傑作『Kick The World』、寺山修司の劇団「天井桟敷」の市街劇をビデオに収めた貴重なドキュメント 『市街劇ノック』など、多様な創作活動の一端を紹介する。

 『キック・ザ・ワールド』/ビデオ/16分/1974 『スイッチバック』/16ミリ(デジタル上映)/9分/1976 『映像書簡2』/萩原朔美と共作/16ミリ(デジタル上映)/39分/1980 『市街劇ノック』/デジタル/52分/1975-2008

東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション

 日本、中国、香港、台湾、韓国の東アジア地域を対象とした公募部門。同地域出身または在住の作家による2020年以降に制作された作品を対象としている。

 応募作322点から、一次審査、二次審査を経て東アジアの「今」を映し出す26作品がノミネートされた。新しい才能を発掘する場であるとともに、ベテランと新進作家が互いに賞を競 う場でもある。10月3日、東京・スパイラルホールであった授賞式で、入賞6作品と東京会場観客賞が発表された。

 新人賞として、今年は「SHIBUYA SKY賞」が新たに創設された。

受賞作品

■大賞/1点 賞金30万円、賞状
『三位一体』 ワン・モーウェン/デジタル/19分/2020年(中国)
■寺山修司賞/1点 賞金10万円、賞状
『零へ』 伊藤高志/デジタル/72分/2021年(日本)
■SHIBUYA SKY賞/1点 賞金10万円、賞状
『戯れ子ばこ』 西尾秋乃/デジタル/8分/2021年(日本)
■優秀賞/3点 賞金3万円、賞状
『ウェルカム・トゥ・ナーン! 』栗原みえ/デジタル/166分/2021年(日本)
『N・P』 リサ・スピリアールト/デジタル/60分/2020年(日本/ベルギー)
『暴動の後、光復の前』 イウ・ジョンホン/デジタル/15分/2020年(香港)
■東京会場観客賞/1点 賞状 『ウェルカム・トゥ・ナーン! 』

A 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション1(4作品92分)

【11/26(金)11:00】

 『向こう岸の在る』/藤谷東/デジタル/11分/2021年(日本)
『grained time vol.5 walker(s) on the crossroad』/五島一浩/デジタル/4分/2021年(日本) 『だるまさんがころんだ』/ホン・シャオ/デジタル/5分/2020年(中国本土) 『零へ』/伊藤高志/デジタル/72分/2021年(日本)

B 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション2(6作品89分)

【11/26(金)13:15】

 『十二月』/チョウ・シャオリン/デジタル/5分/2020年(中国本土) 『希望線』/シー・ルエニー/デジタル/7分/2020年(中国本土/イギリス) 『On Time Off Time』/岩崎宏俊/デジタル/9分/2020年(日本) 『暴動の後、光復の前』/イウ・ジョンホン/デジタル/15分/2020年(香港) 『密月旅行』/荒木悠/デジタル/29分/2021年(日本)『MIND THE GAP』/手塚眞/デジタル/24分/2021年(日本)

C 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション3(6作品96分)

【11/26(金)15:45】

 『VOMIT』/松田天樹/デジタル/8分/2021年(日本) 『三位一体』/ワン・モーウェン/デジタル/19分/2020年(中国本土)『Polka-dot boy』/ニヘイサリナ/デジタル/8分/2020年(日本/フランス) 『ハイドロフォン・バタフライ』/ユ・チェ/デジタル/16分/2021年(韓国) 『透明な私』/村岡由梨/デジタル/11分/2020年(日本) 『これはある種の中国のイメージ。私は知らないけど。』/リウ・チュンユィ・クレア/デジタル/34分/2020 年(台湾/イギリス)

D 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション4(5作品91分)

【11/27(土)11:00】

 『スモークのためのソナタ』/サムソン・ヤン/デジタル/16分/2021年(香港)『RED TABLE』/キムハケン/デジタル/7分/2021年(韓国/日本) 『桃源郷に返る』/ホァン・ユエ、ルオ・ユィチャオ、ポン・ハオミン/デジタル/19分/2020年(中国本土) 『Kの部屋—世界の創造と破壊について』/ホン・ウェイリン/デジタル/15分/2020年(台湾) 『Parallax』/野辺ハヤト/デジタル/34分/2021年(日本)

E 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション5(4作品96分)

『戯れ子ばこ』/西尾秋乃/デジタル/8分/2021年(日本)

【11/27(土)13:15】

 『Between hate & like』/鈴木理利子/デジタル/12分/2021年(日本) 『戯れ子ばこ』/西尾秋乃/デジタル/8分/2021年(日本)『日 ”””’;”””’ 記』/ヤン・ワイイン/デジタル/16分/2021年(香港) 『N・P』/リサ・スピリアールト/デジタル/60分/2020年(日本/ベルギー)

F 東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション6(1作品166分)

【11/27(土)15:45】

 『ウェルカム・トゥ・ナーン!』/栗原みえ/デジタル/166分/2021年(日本)

インスタレーション

 伊藤隆介の新作『数に溺れて』(2021年) 。伊藤は、ミニチュア、日用品と映像装置を組み合わせ、映像やメディアのあり方そのものをテーマにしている。

 いまや日常では見ることのない「算段箱」と呼ばれる算盤を収めるケースとモニターを組み合わせたユニークな作品。

 データ化、クラウド化、コンパクト化が進む映像メディア において、映像を可能としている機器の、日常雑貨や家具と同じ「モノ」としての存在や属性に焦点を当て、メディアとその時代についてユーモアで批評する。

 イメージフォーラム・フェス2020については、こちら
 イメージフォーラム・フェス2019については、こちら

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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