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イケムラレイコ「限りなく透明な」シュウゴアーツ(東京)で 2022年4月14日-5月28日

  • 2022年4月1日
  • 2022年4月1日
  • 美術

イケムラレイコ, Trees out of Head, 2021, cast glass, 27x32x20cm

イケムラレイコ「限りなく透明な」

限りなく透明な
最も暗いところから⾒るヒカリ
最も暗いところに現れる光
限りなく暗いところにヒカリ

イケムラレイコ

 三重県津市生まれ、ベルリン在住で、2019年の国立新美術館での大規模な個展「土と星 Our Planet」が記憶に新しいイケムラレイコさんのシュウゴアーツ(東京)で5年ぶりとなる個展が2022年4⽉14⽇~5⽉28⽇に開催される。

 6点のペインティングに加え、以前よりアトリエに設置していた窯を使 って制作に取り組んでいるガラス彫刻6点が披露される。

イケムラレイコ, Cat, 2020, cast glass, 20x26x14cm

ガラス彫刻作品

 イケムラレイコさんの芸術家としての⼈⽣は、常に新しい素材、⼿法との出会いによって切り開かれ、ときに素材との格闘があったとしても、ついには⾃家薬籠中のものにする営みの連続だった。

 例えば、イケムラさんがセラミックを⼿がけた1990年代初頭は、現代美術の世界でまだセラミックが彫刻の素材として積極的に認められていない時期だった。

 その後、イケムラさんはブロンズを⼿掛け、ついに4mをゆうに超えるモニュメンタルな作品を実現するまでに⾄った。

 そのイケムラさんが近年、縁あってモザイク、そしてステンドグラスへと作品を展開させ、今やガラス彫刻に精⼒的に取り組んでい る。

 もともとセラミックの制作において本体に塗る釉薬はガラス質の溶液で、それが⾼熱によって、光を内包する透明感を伴った物質に変容することに魅了されていた。

 アトリエで時間をかけてガラス作品の誕⽣を⾃ら⼿がけることの喜びは格別という。「形が⾊を呼び、⾊に陰影を与え、形と⾊の透明感が⼀体化する」ことを⽬指して制作された完成度の⾼いガラス彫刻群である。

 2021年のケンジタキギャラリー(名古屋)での塩田千春さんとの2人展でも、ガラス作品が展示された。 

絵画作品

 ガラス彫刻が⾃ら光を内包しているとすれば、新たな展開を遂げている⼀連のペインティングは「暗闇の中に⾒出された光」を画⾯にとどめることが志向されている。

 「何かを表現するというようなレベルから、最も透明なる⾃⼰=宇宙へと時空を超えて到達したい」というイケムラさんの思いが作品に強く投影されている。

 具象/抽象の⼆元論を超えて、絵画を通した形⽽上的な瞑想、あるいは理念、精神に関わるイケムラさんの想念がそこにとどめられているといえる。

イケムラレイコ
イケムラレイコ, Blackscape, 2022, tempera and oil on nettle, 180x110cm

詩作品

 イケムラさん10年以上前から、しばしば展覧会で、⾃ら紡ぎ出した⾔葉を、詩という形式から⼀歩離れたところで展⽰を成⽴させる⼤事な要素として扱ってきた。

 当初から、イケムラさんの詩的才能に注⽬していた詩⼈、⽥野倉康⼀さんの推薦によって、2021年6⽉まで1年余にわたり、「現代詩⼿帖」誌に断続的に発表された⼀連の詩は、イケムラさんの⾔葉による芸術的成果として特筆すべきものである。

 ガラス作品が窯の中で熱によって珪素が変容、結晶化したものであるとすると、詩は、20歳のときに⽇本を⾶び出して以来、今⽇まで⼈⽣を⾃ら切り開いてきたヨーロッパという地で、自身の中に⻑年にわたって 沈殿し晶出されたもうひとつの芸術的奇跡の現われといえるだろう。

 さまざまな素材、⼿法を⼿掛けながらも、イケムラさんが追い求めてきたのは、いつの時代にあっても輝くことをやめ ない「ヒカリでありイノチ」だった。

 困難な時代において、「個や国を超えて宇宙的な視座から」 ものごとを捉えつつ形にしようというたゆまぬ芸術的営みを続けているイケムラレイコさんの最新の成果がここにある。

イケムラレイコ

 イケムラレイコさんは三重県津市⽣まれ。1970年代にスペインに渡る。スイスを経て、現在はベルリンおよびケルンを拠点に活動。⼤阪外国語⼤学とセビリア芸術⼤学で学ぶ。

 動物、⼈間、地平線をモチーフに、絵画、ドローイング、写真、彫刻など、さまざまなメディアを⽤いて世界の成り⽴ちを探求している。

 主な個展:「Toward New Seas イケムラレイコ 新しい海へ」バーゼル美術館(スイス、2019)、「⼟と星 Our Planet」国⽴新美術館(東京、2019)、「あの世のはてに」シュウゴアーツ(東京、2017)、 「Poetics of Form」Nevada Museum of Art(米国、2016)、「All About Girls and Tigers」ケルン市⽴東洋美術館(ドイ ツ、2015)、「PIOON」ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡、2014)、「i-migration」カールスルーエ州⽴美術館(ドイツ、2013)、「うつりゆくもの」東京国⽴近代美術館 / 三重県⽴美術館(2011)など。

展覧会概要

イケムラレイコ「限りなく透明な」
会  期:2022 年 4 ⽉ 14 ⽇(⽊) ‒ 5 ⽉ 28 ⽇(⼟)
会  場:シュウゴアーツ 東京都港区六本⽊ 6 丁⽬ 5 番 24 号 complex665 2F
開廊時間:⽕〜⼟曜 正午 ‒ 午後 6 時(⽇⽉祝休廊。4⽉29⽇および5⽉1⽇〜5⽇も休廊)新型コロナウィルス対策のため開廊時間を短縮している。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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