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堀尾貞治 Sadaharu Horio [ALIVE_4堀尾貞治について]NAO MASAKI(名古屋)で12月10-25日

Gallery NAO MASAKI(名古屋) 2022年12月10〜25日

 堀尾貞治さんは1939年、神戸市兵庫区生まれ。1965年、第15回具体美術展に出品し、1966年、具体美術協会の会員となった。具体が解散する1972年まで参加。だが、その後の活動歴のほうがはるかに長い。

 2018年に80歳を目前に亡くなるまで制作を続けた。特に1985年から「あたりまえのこと」というテーマを掲げ、空気のように意識されることさえない生活そのものが制作という日々を生きた。

堀尾貞治

 三菱重工神戸造船所で働いてきた堀尾さんはこうした取り組みを1998年の定年退職まで、早朝と退社後の時間で続けた。その後の年金生活でも制作が止まることはなかった。

 堀尾さんにとって生きていく上でなくてはならない芸術活動を、何気なく繰り返される日常に重ね、その集積、痕跡としての制作実践を通じて、膨大な作品を生み出したのだ。

堀尾貞治
堀尾貞治

 NAO MASAKIで堀尾さんの作品を中心に構成した展覧会[ALIVE・生き続ける芸術]は、2019年以降、4回目となる。また、NAO MASAKIでは、2022年に堀尾さんの妻でアーティストの堀尾昭子さんの個展も開催している。

 堀尾さんの主な展覧会は、2002年の「堀尾貞治あたりまえのこと」(芦屋市立美術博物館)、2005年の「横浜トリエンナーレ/堀尾貞治 + 現場芸術集団「空気」連続82日のパフォーマンス」、2022年の「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」( 森美術館/東京)など。

堀尾貞治

 今回の展覧会では、2022年夏に大阪の此花ガランで展示した作品を含め、72点を展示している。

 多様なタイプの作品を出品されているが、さまざまなオブジェに、一日一色一本のアクリル絵具を塗り重ねる「色塗り」など、日課として続けたシリーズが中心である。

 オブジェと言っても、空き缶、針金、板、メガネ、紙、石など、取るに足らない物である。それが何年、何十年と絵具を塗り重ねることで作品になる。

堀尾貞治
堀尾貞治

 裁断した紙の束に「色塗り」をした作品では、長年、色を塗り続けたことで、紙というよりは、板材のようになった作品もある。

 物体に「色塗り」をした作品以外に、絵画作品もある。こうした作品でも、キャンバスなどの支持体に描いたシンプルな形象に色彩を重ね続けている。

堀尾貞治
堀尾貞治

 ほかに、キャンバスに直接、チューブから出した絵具のドットを置いていき、それをモノタイプのように複数の画面に「KISS」させてつくるKISS絵画、あるいは、プリントした写真を切って立体化した作品なども。

 また、具体時代の1960年代の作品で、布を赤く染めて、中に針金を通すことで、可変性があるようにした立体も展示されている。

 磁石によって引き寄せられた釘や木ネジ、金具をオブジェとして展示した作品も、固定化していない形態が微妙に変わることを前提にしているのかもしれない。

堀尾貞治
堀尾貞治
堀尾貞治
堀尾貞治

 さりげなく、生活の一部のようで、しかも実験精神に富んだ作品群である。堀尾さんの作品は、「色塗り」に見られるように生活の中で日課のように制作され、長い年月をかけて、変化していく作品が少なくない。

 それらは、生から死へと向かう日常の中で、何気ない出来事の反復そのものが作品になっているという点で、命の流れと重なり合う。素材も日常の中で偶然出会ったもの、自分の元にやってきたものが中心である。

 世界の無常に身を任せ、その流れの中で、ほんのわずかだけ生命活動とは違う、しかし自分という存在にとって欠くことのできないことを実践することで、当たり前の日々の生の痕跡を謙虚に積み重ねた。そうして、膨大な作品を生み出していったのである。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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