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グウナカヤマ Gallery NAO MASAKI(名古屋)で2023年4月15-30日 

Gallery NAO MASAKI(名古屋) 2023年4月15〜30日

グウナカヤマ GOO NAKAYAMA

 グウナカヤマさんは1975年、長崎県の壱岐島生まれ。書家、井上有一(1916-1985年)の作品に感銘を受け、墨による自由な表現へと進んだ。

 同じGallery NAO MASAKIで作品を発表しているハシグチリンタロウさんらと同様、現代アートとしての書のコンペ「ART SHODO FESTA」の参加者である。

グウナカヤマ

 既成の書の枠を超えた表現という方向では共通していても、スタイルは全く異なる。グウさんは、自分の内界、外界を感じながら思考を巡らし、そうした思索からくるものと文字の形、イメージの記号性、抽象性との関係を大切にしている。

 当初は、象形文字的な形態を持つ「鳥」をモチーフにした作品を制作。漢字の起こりである甲骨文字や文字学を独学で学びながら、「鳥」に加え、「月」「flower」(花)などのシリーズを中心に制作した。

グウナカヤマ

 それらは、通常の文字を超えた魅力を放つ、いわば文字の異形である。「異形文字」などと言ってみると、案外、しっくりくるかもしれない。

 近年は、自然豊かな島での制作という骨格は大切にしながら、自身の内面、その奥底の感情、意識、思考、世界観を基に作品を展開させている。そこから生まれたのが「無」「AlLIVE」「ENVY」などのシリーズである。

グウナカヤマ

 2021年に、Gallery NAO MASAKIで日野公彦さんとの2人展を開いた。Gallery NAO MASAKIでの個展は今回が初めてである。

ODD2023

 これまで筆者が見てきた作品は、「flower」「DIRT」などである。「DIRT」は、 泥、汚物、塵などを意味し、底辺で生きる人間の生き方を象徴している。

グウナカヤマ

 また、「SLACK」や「HECK」「FAILURE」なども、「DIRT」と同様、ネガティブな言葉であるが、不思議と暗さは感じない。むしろ、底抜けに明るいネガティブである。

 そこに、グウさんの文字の、あたかも大地や風を感じさせるような気骨、おおらかさ、天真爛漫さがある。つまり、グウさん文字は、ネガティブがポジティブに反転するのだ。

グウナカヤマ

 そういう意味でいえば、ネガティブから出発していても、グウさんの作品は、意味を限定するものではなく、どっしりとして、見る者の感情、思いを受け止めてくれるものだ。

 さらに面白いのは、こうした文字が合成され、新たな「文字」が生まれていることである。混ぜると、より奇妙な異形文字が生まれる。

グウナカヤマ

 「ODD」という新作文字は、こうした文字の合成によって生まれた、風変わりな新しい文字である。どこか生き物のような動きをはらみながら、これまで以上に複雑なイメージとなった奇奇怪怪な文字である。

 今回の個展を見て思ったのは、そうした「異形文字」が洗練されてきたということだ。それは新しいイメージであるとともに、複雑なグウさんの内面を表している。

グウナカヤマ

 ODDは奇妙さを表すが、それは生きることの苦しさ、ネガティブな記憶、劣等感などが複雑に絡みながらも、なにくそという生命の力があふれた文字である。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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