「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」愛知県美術館
名古屋・栄の愛知県美術館で 2021 年1月15日〜4月11日、横尾忠則さんの過去最大級の個展「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が開催される。
作品点数は、687点。ほかに、横尾さんがツイッターで発信しているプロジェクト「WITH CORONA」の作品が500点以上展示され、総数は1200点ほどになる。
膨大な作品数だけに、じっくり時間をかけて楽しみたい。
東京都現代美術館、大分県立美術館に巡回
東京都現代美術館では、2021年7月17日〜10月17日、大分県立美術館では、2021年12月4日〜2022年1月23日に開催される。
グラフィック・デザイナー、イラストレーターから「画家宣言」へ
横尾忠則さんは1936 年、兵庫県生まれ。1960 年代初頭から、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとし て活動を開始し、日本の土俗的なモチーフとポップ・アート的な感覚を融合させた独自の表現で注目された。
その後、1980年代に「画家宣言」によって、「デザイナー」から「画家・ 芸術家」へと活動領域を移し、斬新なテーマと表現による作品を次々と発表。国内外で現代美術家としても高い評価を得るに至った。
2000年代以降は、国公立美術館での個展が相次いだ。パリのカルティエ現代美術財団(2006 年)をはじめ、近年では、海外での発表も多い。
作品による自伝
東海地方の美術館で初めての横尾展となる今展では、作家の全面的な協力のもと、「作品による自伝」を テーマに、横尾さんの芸術の全貌を、グラフィック作品を含めて多角的に、歴史的に紹介することを試みる。
横尾さんの作品には、自伝的なエピソードや記憶を主題としたものが少なくない。近年の作品では、自己反復や自作のパロディ、パスティーシュを扱った自己言及的なものもある。
反復される自己について、あるいは自己の芸術についての「語り」は、横尾さんの芸術の重要な要素である。
原郷とは、魂のふるさと
横尾さんの最近の絵画作品、あるいは、文学作品に現れる「原郷」という概念は、特に注目に値する。
2019年には、東京のSCAI THE BATHHOUSEで、横尾忠則さんの個展「B29と原郷 – 幼年期からウォーホールまで」が開催された。
文芸雑誌「文学界」には、横尾さんの小説「原郷の森」が連載されている。
原郷とは、全ての人間の魂のふるさとであり、横尾さんの芸術の背後に存在する広大なイメージの源でもある。
画家が繰り返し立ち戻り、さまざまなイメージや記憶の連関を見出す、鬱蒼とした森のような領域――。この「原郷」こそが、変幻自在でいつも新鮮な驚きとともに独特なイメージ世界が生み出す源泉である。
展覧会への横尾さんのメッセージ
私は絵画から目を外して来ませんでした。未だに絵画は私にとって未知の領域です。
横尾忠則
見どころ
展覧会の見どころは、主に3つ。
1.作家の全貌に迫る
兵庫県西脇市で過ごした高校時代の作品、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして脚光を浴 びた 1960 年代のグラフィック作品、いわゆる「画家宣言」後、活動領域を絵画に広げた1980 年代以降の多様なスタイル・技法・テーマによる絵画作品、さらには 2000 年代の代表作「Y字路」シリーズ、最新作「原郷」と、豊富な出品作品によって、 60 年以上に及ぶ作家の活動の全貌に迫る。
2.作品による自伝
横尾さんは、自らの幼少時の記憶やエピソードをモチーフとした作品を数多く手がけてきた。自身の体験や、夢の中で見た情景も、しばしば作品の中に登場する。横尾さんにとって、自己とは、汲めども尽きぬインスピレーションの源である。展示では、代表作の数々によって、横尾さんの芸術の展開を生涯のエピソードと重ね合わせながら紹介する。
3.東海地方で初の個展
横尾さんの個展は、2000年代以降、毎年のように全国各地の美術館で開かれてきたが、東海地方の美術館では初めて。また、規模は、過去の個展と比較して最大級となる。
構成
第1章 原郷から 1936-1960
・誕生 受胎された霊感
・戦争と戦後 少年時代
・織物祭 西脇時代
・デザイナー誕生 神戸時代
第2章 越境 1960-1981
・デザインセンターの銀座
・アングラの新宿
・活動の広がり 横尾忠則というメディア
・ピンクガールズ 無作法な娘たち
・アンリ・ウッソー・ヨコオ
・三島由紀夫 終りの美学
・ニューヨークとインド
・ワンダーランド 楽園を索めて
第3章 幻境 1981-2000
・いわゆる画家宣言 画家の誕生
・森・肉体・神話
・切り裂かれたカンヴァス
・滝 それは夢の中からやってきた
・今ハ昔
・赤の魔宮
・彼岸へ 懐かしい死者たち
第4章 現況 2000-現在
・Y字路
・反復と変装
・Y字路の彼方へ 新たなる冒険
・肖像図鑑
・謎の女
・原郷の森
・タマ、帰っておいで
ほかに、WITH CORONA
横尾さんプロフィール
横尾忠則( よこお・ただのり)
1936 年、兵庫県西脇市生まれ。高校卒業後、神戸でデザイナーとしての活動を始め、1960 年に東京に進出。グラフィック・デザイ ナー、イラストレーターとして脚光を浴びる。
その後、1980年に米ニューヨーク近代美術館で大規模なピカソ展を見たことを契機に、 画家としての本格的な活動を開始。さまざまな手法と様式を駆使して、森羅万象に及ぶ多様なテーマを描いた絵画を生み出し、国際的にも高く評価されている。
2012 年に横尾忠則現代美術館(神戸市)、2013 年には豊島横尾館(香川県豊島)が開館した。
主な個展に、「横尾忠則 私への帰還」(兵庫県立近代美術館、神奈川県立近代美術館、1997年)、「横尾忠則 森羅万象」(東京都現代美術館、広島市現代美術館、2002-2003年)、「TADANORI YOKOO」 (カルティエ現代美術財団、2006年)、「冒険王・横尾忠則」(世田谷美術館、兵庫県立美術館、2008年)、「横尾忠則 全ポスター」(国立国際美術館、2010年)、「横尾忠則展 反反復復反復」(横尾忠則現代美術館、2012年)、「横尾忠則 HANGA JUNGLE」(町田市立国際版画美術館、横尾忠則現代美術館、2017年)など。