GALLERY CAPTIONからのメールより
GALLERY CAPTION(岐阜市)が、2020年5月下旬に始めた郵便を介したプロジェクト「envelope as a door」(ドアとしての封筒)の第4弾、木村彩子さんの作品受け付けを2020年9月12日午後8時から始める。
木村彩子さんの作品は、ドローイング・ブック。「garden」と「park」の2シリーズ(各5点)で、それぞれ2万3500円(税込み、送料込み)。
「garden」は庭、「park」は公園の風景からインスピレーションを受けて描いた5枚のはがきサイズのドローイング集だ。色鉛筆、水性ペンで描かれた繊細で優しい形象と色彩が浮遊し、透明な空間の中で柔らかな光を発している。
それぞれ緑色と青色の糸でつづり、軽やかな1冊の本のように仕上げた。トレーシングペーパーのスリーブ(表紙)には、手書きのタイトルとサインが入っている。
線と色彩のリズムから導かれる豊かな余白。
GALLERY CAPTIONのWEBサイトより
薄いページをそっとめくりながら、目の前の景色を見送ると、1枚1枚の景色の心地よい間合いに、紙の向こうがまた重なります。5つの小さな風景は、連なりながら、驚くほど多彩な光景を見せてくれます。
envelope as a doorは、ギャラリーと作家、そして封筒を受け取る人とを結ぶメール・アートのプロジェクト。第1弾は藤本由紀夫さん、第2弾は寺田就子さん、第3弾は大岩オスカールさんだった。
第4弾の木村彩子以降のラインナップは次の通り。
- 【vol.5】金田実生 (9月)
- 【vol.6】 寺田就子(10月)
- 【vol.7】植村宏木(11月)
- 【vol.8】中村眞美子(11月)
- 【vol.9】藤本由紀夫(12月)
新型コロナウイルスの影響で、世界中の人々の生活と健康が脅かされている中で企画された。今後、ポストコロナの新常態の中で、オンラインによるコミュニケーションや、インターネット配信など、新しい生活様式が急速に日常に浸透し、人間が新たな環境でどう生きるか、芸術と人間との関わりはどうなるのかが問われている。
「envelope as a door」は、そんな現在を見据えたプロジェクトである。
90年代の初め、インターネットが話題になり出した頃、私は手紙というものは20世紀中になくなってしまうのではないだろうかと考えていたことを、つい最近思い出した。
GALLERY CAPTIONのWEBサイトより
直筆で便箋に築かれた世界が折り畳まれ、封筒という二次元ワールドに封印され、世界を旅して、遠い異国の友人のもとに届く。その友人は、封を開けることにより、未知の世界に突然の旅に出る。
そうである。「封筒」とはあの「どこでもドア」と同じものなのである。という事実を、最近世界を騒がせたニュースを見ていて教えられた。
藤本由紀夫 「26 philosophical toys」 2005年
「envelope as a door」は、からっぽの封筒をギャラリーの空間に見立て、作家の作品を封書で届ける。ギャラリーの入り口の扉を開けるように、封筒を開くと、そこに作品がある。人が作品と出合い、そこから、さらなる出合いへと導かれる‥‥
GALLERY CAPTIONは、オンライン・ショッピングの仕組みと変わらないと、説明する。それでも、そこには、ギャラリーだからこそできること、作家とギャラリーの真摯なメッセージとともに、美術作品の可能性、人間を豊かにする小さな時間と空間の大切さが提示されているのではないだろうか。
それは、コロナによって世界の見え方、人間の生活と生き方が変容する中で、人間の価値、人間と世界との関わり、過去と現在、未来をつなぐ可能性を問い直す試みでもある。
木村彩子drawing book 『garden 01- 05』 『park 01- 05』
ドローイング5枚綴り、表紙(スリーブ)にタイトル、サイン入り、紙に色鉛筆、水性ペン、トレーシングペーパー、糸、11.0×15.5(cm)、2020年