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『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』2024年10月18日全国公開 

名古屋・ミッドランドスクエアシネマなどで

 ドキュメンタリー映画『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』が2024年10月18日、名古屋・ミッドランドスクエアシネマなどで全国公開される。 

 60代後半で鮮烈なデビューを果たして以来、世界中で演奏活動を続け、90歳を超えても自分の音楽を追い求め続けた孤高の天才ピアニスト、フジコ・ヘミング(1931-2024年)。

 本作は、2018年に異例のロングランヒットを記録した映画『フジコ・ヘミングの時間』以降の4年間を追ったドキュメンタリー映画である。監督・構成・編集は、同作と同じ小松莊一良。

 ツアーが終わった後、ゆったりと心安らぐ日々を過ごした米カリフォルニア・サンタモニカ。街を歩き、海辺で過ごすひととき。平和な日常がそこにあった。

 しかし、そこから一変。コロナ禍で世界が止まった。フジコはピアノを弾くことをやめなかった。再び観客へ音楽を届けることを思いながら、毎日を過ごしていた。

 東京・阿佐ヶ谷教会での無観客ライブ、戦時中を過ごした岡山の学校での演奏、ツアーを再開し、横浜、パリへ⋯。幸せも不幸もありのままに受け入れ、奏でるピアノは不安とともに生きる人々を癒やした。

 愛する猫や犬、好きな物に囲まれた自宅で過ごす普段の暮らし、友達との会話、プライベートな思い出を語る映像から、変わらぬ信念とともに90歳を超えた素直な気持ちがリアルに伝わる。歩行器に頼らなければ歩けなくなった。しかし、ステージで弱みを見せたくないフジコは音楽を届け続けた。

 フジコの人気曲となったリストの『ラ・カンパネラ』、ピンと張り詰めた力強いショパンの『幻想即興曲』、そして、これぞフジコの真骨頂といえるロマンティックなドビュッシーの『月の光』⋯。
 コンセルヴァトワール劇場でのコンサートは、ひとつの集大成と言えるだろう。

☆ ☆ ☆

 フジコの人生、想いを込めた数々の演奏シーンが本作の軸となっている。つまり、音楽の映画であるとともに、これは人生についての映画、人はどう生きるかという映画である。

 フジコの人生は文字通り、波瀾万丈である。映画は、そうした半生の語り、演奏シーン、生活の場面がよせてはかえす波のように編集されている

 記憶、古いものをとても大切にしている人である。だから、写真や古い家、思い出の品を宝物のようにして生きている。

 生き物を敬愛している。猫や犬が友達である。90歳になっても、とてもかわいい少女のような人。正直で純粋な人。

 貧しく、辛く、悲しく、苦しい人生を歩いてきたから、「正直に言うと、人間嫌い。お互い、理解できないじゃない ?」とも吐露する。

 それでも、次のひと呼吸、次の一歩をと、弛まず生き、演奏してきた。「人生の中で一番大切なのは愛」。傷だらけの人生の中で、そう思って、常にすべての人の幸せを祈って生きてきた

 音楽、否、全てにおいて、その本質は愛である。困っている、苦しんでいる、助けを求めている小さな生命を救うために、人間は生きている。フジコはそう伝えたかったのではないかーーー。

出演・音楽 フジコ・ヘミング

 12月5日ベルリン生まれ。スウェーデン人の画家で建築家のジョスタ・ゲオルギー・ヘミングと、ピアニスト・大月投網子の間に生まれる。弟は俳優の大月ウルフ。

 5歳からピアノを始め、レオニード・クロイツァー氏に師事。東京藝術大学卒業後、28歳でドイツへ留学し、現・ベルリン芸術大学を優秀な成績で卒業。

 ヨーロッパでキャリアを積み、『ウェストサイド物語』などで有名な大音楽家のレナード・バーンスタインやブルーノ・マデルナらからも認められて支援を受けるが、リサイタル直前に風邪をこじらせて聴力を失う。その後は、耳の治療の傍ら、ピアノ教師をしながら欧州各地で演奏活動を続けた。

 1999年、NHK ETV特集『フジコ~あるピアニストの軌跡~』が大きな反響を呼び、フジコブームが巻き起こる。この時、フジコは60代後半になっていた。CDアルバムはクラシック界では異例の大ヒットを記録。ニューヨーク・カーネギーホールをはじめとするコンサートで世界の人々を感動の渦に巻き込んだ。

 その後も20年以上に渡り、ヨーロッパ、北米、南米などワールドツアーを行い、ソロ公演だけでなく多くの著名オーケストラとの共演も重ねた。

 2018年、映画『フジコ・ヘミングの時間』が異例のロングランヒット。第22回上海国際映画祭で上映されたほか、アジア、カナダ、中東、ロシア圏など、海外でも公開された。

 ピアノだけにとどまらず、ファッション、インテリア、ライフスタイルなどでも支持を集め、特に父親譲りの絵の才能は評価も高く、CDジャケットや書籍などで多くの作品を発表している。

 敬虔なクリスチャンとして慈善活動に関心が高く、動物愛護や戦争や災害の被災地への支援など、長年に渡りチャリティー活動を続けてきた。

 2021年には、自身の選曲によるオールタイム・ベストアルバム『COLORS』を発売するなど、コロナ禍にあっても精力的に活動を続けた。

 自分を信じて努力を続け、あきらめることなく夢を追う姿が多くの人を勇気づけるとともに、慈愛の精神でか弱き命を支援する温かい人柄は、世界中のファンを魅了しやまない。

ミュージック・リスト

・「ラ・カンパネラ」 作曲:F・リスト
・「夜想曲(ノクターン)第2番」(変ホ長調作品9の2) 作曲:F・ショパン
・「英雄ポロネーズ」 作曲:F・ショパン
・「月の光」(ベルガマスク組曲第3曲) 作曲:C・A・ドビュッシー
・「亡き王女のためのパヴァーヌ」 作曲:M・ラヴェル
・「ため息」(変ニ長調S.144の3) 作曲:F・リスト
・「エオリアン・ハープ」(変イ長調作品25の1) 作曲:F・ショパン
・「アンプロンプチュ」(即興曲Op.90-3) 作曲:F・シューベルト
・「幻想即興曲」(嬰ハ短調作品66) 作曲:F・ショパン
・「アヴェマリア」 作曲:F・シューベルト〔ヴァスコ・ヴァッシレフ/ヴァイオリン〕
ほか

出演・音楽 :フジコ・ヘミング
監督・構成・編集 :小松莊一良
プロデューサー:大村英治佐藤現
撮影監督:藤本誠司
録音・整音:井筒康仁
レコーディング&サウンドエンジニア(フジコ・ヘミング演奏):坂元達也
カラリスト:林元太郎
宣伝:安川千尋
演出補:小松上花
企画:スピントーキョー
制作プロダクション:WOWOWエンタテインメント
製作:2024「恋するピアニストフジコ・ヘミング」フィルムパートナーズ
(東映ビデオ、WOWOWエンタテインメント、スピントーキョー、WOWOW)
配給:東映ビデオ
2024年/日本/119分/5.1ch
©2024「恋するピアニストフジコ・ヘミング」フィルムパートナーズ

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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