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ふるかはひでたか展 なうふ現代(岐阜市)で9月3-25日

なうふ現代(岐阜市) 2022年9月3〜25日

ふるかはひでたか

 ふるかはひでたかさんは1968年、愛知県刈谷市生まれ。1992年に東京藝術大学油画専攻を卒業。1994年、東京藝術大学大学院美術研究科壁画専攻修士課程修了。 

 東海地方では、AIN SOPH DISPATCH(名古屋市)、なうふ現代(岐阜市)で個展を開いている。 

 近年は、フィールドワークと絵図や古文書などの史料調査によって、地域の来し方を掘り下げる作品で知られる。土地の歴史、風景、文化、習俗を現代とつなげ、絵画、資料などをインスタレーションとして見せる手法である。

ふるかは ひでたか

 地誌的、すなわち、自然や地勢、歴史、文化、民俗的なまなざしをアートに結びつけることで、見えない時間と事物、空間の関係性を明らかにする作品はとても魅力的である。

 もっとも、ふるかはさんが、それを堅苦しいコンセプチュアルな要素で語るのではなく、超絶的な描写力による絵をベースに実践していることは強調しておきたい。

 ふるかはさんは2016年に、「パークホテル東京」の3111号室にアーティストルーム「江戸-東京」の部屋を完成させたのをきっかけに、現代の東京と江戸の風景をつないだ「江戸-東京」シリーズを展開した。

ふるかは ひでたか

 タウン誌「月刊日本橋」への文と絵の連載が始まり、江戸をテーマに風景や食、風俗、社会などをユーモアを込めて卓絶した描写力で描いた。

 それは土地を丹念にリサーチするということであって、なうふ現代の個展では、岐阜そのものをテーマ化しているのである。そのあたりは、2020年のなうふ現代での個展レビューを読んでいただくと分かると思う。

 ふるかはさんの近年の取り組み全般については、AIN SOPH DISPATCH(名古屋) での2021年の個展レビューも参照。

ふるかは ひでたか

なうふ現代 2022年

 会場に展示されたのは、絵と、岐阜に関わる絵図史料、鵜飼などに関する文献資料である。2020年のなうふ現代での個展と同じ資料も再度、展示されていた。

ふるかは ひでたか

 絵では、稲葉山(金華山)を中心とした山並みの古絵図のイメージと、同じ場所の現代の風景を対比的に描いたり、長良川の流れ、リンゴや柿、老舗の和菓子「松風」などの名産品などをモチーフにしたりしている。

 写真と見紛うほどだが、すべて、ふるかはさんの手による絵である。それらを壁に平凡に並べるのではない。空間に散らばらせ、さまざまな空間的、視覚的な効果を生み出している。

 漫画のコマ割りを意識した構成、スリットによる分割、ずらし、画面の縦横比の変化や、別々の支持体に分離した画面をに角度を付けて展示する試みなど、視覚を楽しませる工夫が加えられている。

ふるかは ひでたか

 2022年3月に亡くなられた国島征二さんとの交流をテーマにしたコーナーが設けられている。

 国島さんには、文庫本や絵具、ペインティングナイフ、釘など身近な物を透明樹脂、鉛によって記憶とともに封印した「Wrapped Memory」シリーズがある。

 他のアーティストから届いた展覧会の案内なども作品の素材に使われるが、その中に、ふるかはさんのものがあった。ふるかはさんと国島さんのやりとりを作品を通じてたどることができる。

ふるかは ひでたか

 国島さんの作品については、「追悼 国島征二展 ギャラリーサンセリテ(愛知県豊橋市)9月10-27日」「国島征二展 ギャラリーサンセリテ(愛知県豊橋市)5月25日まで」も参照。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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