作品はすべてフォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025
日本で30年ぶりの大回顧展
「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」が2025年1月11日〜3月23日、名古屋市美術館で開催される。
20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとり、ジャン=ミッシェル・フォロン(1934-2005年)の初期のドローイングや水彩画、版画、ポスター、立体作品など約230点を紹介する日本で30年ぶりの大回顧展。
ベルギーの巨匠マグリットの壁画に感銘を受け、美術の道に入ることを決意したフォロン。21歳のころにパリに渡り、作品を投稿した米国の有力誌『ザ・ニューヨーカー』『タイム』などで注目され、1960年代初頭には表紙を飾るようになった。
《月世界旅 行》1981年、水彩
《無題》1974年、シルクスクリ ーン
グラフィック・デザインや版画、水彩画、文学作品の挿絵や舞台芸術など、多彩な才能を発揮し、世界各国で高く評価された。
柔らかな色彩と軽やかなタッチで表現されたフォロンの作品は、見る人を想像の旅へと連れ出す。展開されるイメージは幻想的でありながらも、どこか私たちの日常と繋がり、世界の見方を変えてくれるようなユーモアとともに、環境破壊や人権など、現実に起きている問題への告発も潜んでいる。
フォロンの没後20年、そして彼が生前に設立したフォロン財団の25周年にあたるこの年に、フォロンの名刺「AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES(空想旅行エージェンシー)」をきっかけに、空想旅行をするような気分で作品をめぐりながら、フォロンが残した、やさしく、そして厳しいメッセージを見つめ直す。
名刺「フォ ロン 空想旅行エージェンシ―」1990年頃
開催概要
展覧会名:空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン FOLON: Agency of Imaginary Journeys
会 期:2025 年1 月11 日[土]−3 月23 日[日][62 日]
休 館 日:月曜日(1月13日[月・祝]と2月24日[月・休]は開館)、1月14日[火]、2月25日[火]
会 場:名古屋市美術館 企画展示室1・2
主 催:名古屋市教育委員会・名古屋市美術館、中日新聞社、東海テレビ放送、フォロン財団(ベルギー)
後 援:ベルギー王国大使館、JR 東海、名古屋市立小中学校PTA 協議会
特別協力:ベルギー王国フランス語共同体政府 国際交流振興庁(WBI)
協 力:名古屋市交通局
協 賛:損害保険ジャパン
観 覧 料:一般1,800(1,600)円、高大生1,000(800)円、中学生以下無料
※( )内は通常前売・20名以上の団体料金
公式サイト:https://ourfolon.jp/
《遠い国からあなたへ手紙をしたためています》1972年 、シルクスクリーン
見どころ
フォロン没後20年、日本では30年ぶりの大回顧展
フォロン没後20年、そして彼が生前に設立したフォロン財団25周年にあたる2025年、フォロンの作品の魅力を見つめ直す、日本では30年ぶりの大回顧展。
空想旅行の気分でめぐる―リトル・ハット・マンとともに
フォロンが実際に使っていた名刺 “FOLON: AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES(フォロン:空想旅行エージェンシー)” をきっかけに、空想の旅にでかけるような気分で、作品をめぐる。フォロンの作品にたびたび登場するリトル・ハット・マンを旅の道連れとして、フォロンのメッセージに耳を澄ませよう。
線のユーモア
ベルギーからパリに渡ったフォロンは、毎日ドローイングを描いていたという。軽やかな線によって生み出されるユーモアたっぷりのイメージは、ありふれた日常に新しい気づきをもたらしてくれるだろう。
色彩の魅力
フォロン作品の大きな魅力は、その美しい色彩にある。グラデーションやにじみなどを巧みに使い、詩情あふれる美しい世界が生み出される。
現代に響くメッセージ
作品の中に入っていきたくなるほど幻想的な世界。しかし細部をよく見てみると、現実に対する厳しい告発が潜んでいる。没後20年が経った今でも、フォロンの残したメッセージは、力強さを失うことなく、私たちに訴えかけてくる。
フォロン略歴
フォロン、ミラノにて 1968年(撮影:コレット・ポルタル)
1934年 ベルギー(ブリュッセルのユックル地区)に生まれる。
1950-1954年 建築や工業デザインを学ぶ。
1960年- 作品が米国の雑誌に掲載される。オリベッティ社のグラフィック・デザインを多数手がける。
1969年 ニューヨークのギャラリーで初の個展を開催。
1970年- 各国の国際美術展に参加。美術館で個展が開催される。
1985年 日本( 東京、大阪、神奈川ほか)で巡回展開催。
1988年 アムネスティ・インターナショナルの依頼で『世界人権宣言』の挿絵を描く。
1990年 メトロポリタン美術館で展覧会開催。
1994年 この年から翌年にかけて日本( 静岡、東京、京都)で巡回展開催。
2000年 フォロン財団設立。
2003年 U N I C E F 親善大使に任命される。レジオン・ドヌール勲章受章。
2005年 モナコにて永眠。
2022年 「フォロンの彫刻」展(京都)開催。
展示構成
プロローグ 旅のはじまり
フォロンが実際に使っていた名刺 “FOLON: AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES(フォロン:空想旅行エージェンシー)” が今回の旅のチケット。
旅の始まりを告げる本章では、初期のころから描いていたドローイングや写真、彫刻などを展示し、日常に新たな視点を与えてくれる、フォロン流の世界の見方を紹介する。
《無題》制作年不詳、墨、グラファイト
《無題》制作年不詳、カラーインク
《いつもとちがう(雑誌『ザ・ニューヨーカー』表紙 原画)》、1976年、水彩
第1章 あっち・こっち・どっち?
フォロンの作品にたびたび登場する矢印。旅先では実に頼りになる道案内の矢印だが、フォロンが描く矢印は、あちこちへと飛び出し、旅人を迷宮に迷い込ませてしまう。
矢印に翻弄される街や人間を描くことは、フォロンにとって自立したアーティストとして進んでいこうとする強い意志表明でもあった。
矢印に惑わされながらも、なんとか矢印を見極め、旅人ひとりひとりで選び取ること、そこから、空想の旅の第一歩が始まる。
《無題》1968年頃、コラージュ、墨、カラーインク
第2章 なにが聴こえる?
「耳を澄ませば、世界が動いている音が聴こえてきます」。そう語るフォロンの耳に届いていたのは、どのような音だったのだろうか。
軽やかなタッチと柔らかな色づかいで描き出されるのは、この世界で起こるさまざまなできごと。よく見てみると、あまり穏やかな場面ではない。フォロンが作品に込めたメッセージに耳を澄ませてみよう。
《科学者》制作年不詳、墨
第3章 なにを話そう?
見る人が絵と対話することを望んでいたフォロン。世界の「いま」を広くダイレクトに手段として、フォロンは企業や公共団体などの依頼で手がけた600以上ものポスターを、絵画作品と同じくらい大切にしていた。
本章ではそうしたポスターや、アムネスティ・インターナショナルの依頼をうけて制作した『世界人権宣言』の挿絵原画などから、さまざまな作品で見る人に語りかけてきたフォロンの魅力を紹介する。
《グリーンピース 深い深い問題》1988年、オフセット(原画:水彩)
《欧州は人種差別に反対する》制作年不詳、オフセット(原画:水彩)
《『世界人権宣言』 表紙 原 画》1988年、水彩
エピローグ つぎはどこへ行こう?
「私はいつも空を自由に飛んで、風や空と話してみたいと思っているのです」と語っていたフォロンは、かろやかに世界を飛び回り、旅先での経験を創作のエネルギーとしていた。
この世界の厳しい現実を静かに告発しつつも、同時にその美しさを表そうとしたフォロン。本展の旅の終わりは、彼が愛してやまなかった海と水平線を描いた水彩画や、旅先でのスケッチブック、メール・アートなどで締めくくる。
想像力という翼で、地平線や水平線を越えていくフォロンの作品は、人生という旅へこぎ出す希望を、私たちにもたらしてくれる。
《対話》1975年、 水彩
《出帆》2001年、ブロンズ
《見知らぬ 人》1991年、水彩
《大天使》2003 年、水彩
関連イベント
【フォロンを追いかけてーTouching Folonー】
日時:1月11日(土)午後2時〜
講師:ステファニー・アルゲルロット氏(フォロン財団理事長)
※逐次通訳
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名(先着順、定員になり次第締切)
※入場無料。ただし聴講には本展の観覧券(観覧済みの半券も可)が必要。
【学芸員による解説会】
日時:1月26日(日)午後2時〜3時、2月8日(土)午後2時〜3時
講師:久保田舞美(名古屋市美術館学芸員)
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名(先着順、定員になり次第締切)
※入場無料。ただし聴講には本展の観覧券(観覧済みの半券も可)が必要。
【ぬって にじんで カラフルな水彩グラデーションのせかい】
日時:2月23日(日・祝)
【午前】午前10時〜11時45分 【午後】午後2時〜3時45分
講師:山田雅哉氏(画家)
対象:小中学生
定員:各回30名
参加費:一人300円
持ち物:水彩絵の具セット(筆洗・パレット・筆・水彩絵の具)、ぞうきん
申込方法:名古屋市電子申請サービスhttp://ttzk.graffer.jp/city-nagoya
“名古屋市美術館”で検索し応募。
申込開始日:2025年1月17日(金)午前9時〜
【トークフリーデー(常設展も実施)】
自由に気兼ねなく話しながら、展覧会を鑑賞できる。赤ちゃん、お子さま連れも大歓迎!
※通常の開館日も、周りの迷惑にならない範囲で会話を楽しめる。
日時:2月1日(土)、2日(日)
午前9 時30分〜午後5時まで(入場は閉館の30分前まで)
※事前申込不要