2020年1月、3月に名古屋・今池の名古屋シネマテークで開催され、好評だった「バウハウス100年映画祭」が2020年11月7〜13日、再アンコール開催される。未公開作「ニュー・バウハウス」も公開する。
アリサ・ナーミアス監督による2019年制作の米国映画で、オラファー・エリアソン、ハンス・ウルリッヒ・オブリストなど、アート関係者も出演している。
モダニズムの源流として、ドイツ・ヴァイマルに建築、デザイン、グラフィック、工芸、写真などの総合的な造形学校としてバウハウスが設立された1919年から100年を記念する企画。バウハウスは、機能性と合理性を重視し、無駄な装飾を排するなど、モダンデザインの礎となった。
今回は、3プログラムの4本の映画によって、世界に衝撃をもたらした芸術学校の100年史をひも解く。
いずれも午前11時20分から。各作品の詳細は、「バウハウス100年映画祭 名古屋シネマテーク 1月11日から」を参照。
●11月7、10、13日は、初公開の「ニュー・バウハウス」。
2019/アメリカ/89分/原題:The New Bauhaus
監督:アリサ・ナーミアス
出演:オリヴァー・ボタール、バーバラ・クレーン、オラファー・エリアソン、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、ラースロー・モホイ=ナジ
ハンガリー出身の画家、写真家、美術家で、後世の視覚造形芸術に多大な影響を与えたラースロー・モホイ=ナジ。彼はアートにテクノロジーを積極的にとりいれるという構成主義的な姿勢で、バウハウスの発展に貢献した。その後、米国でニュー・バウハウスを創設し、米国のデザイン教育にも足跡を残す。最新の研究を元に、彼の理念や業績、ニュー・バウハウスの展開、そしてその素顔が明かされる。
●11月8、11日は、「バウハウス 原形と神話」。
●11月9、12日は、「バウハウス・スピリット」「バウハウスの女性たち」。
設立は第一次世大戦終戦直後の1919年4月。創設者は、近代建築の巨匠、ヴァルター・グロピウスで、3代目の校長は、もう1人の近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが務めた。グロピウスは設立の際、「すべての造形活動の最終目標は建築である」と宣言。ジャンルの垣根を取り去り、総合を目指す根本的な姿勢を明らかにした。
旧来の伝統的なアカデミー教育を否定する画期的な学校だった。グロピウスは、社会から遊離した孤高の芸術家の育成ではなく、科学技術の発展が著しい時代に合致し、社会や芸術の動きを敏感に受容しながら造形活動を進める芸術家の育成を目指し、社会変革の理想を掲げていた。
当時最先端の芸術家たちを教師として招聘。絵画芸術の革新の先駆者ヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、画家で教育理論家のヨハネス・イッテン、構成主義の先鋭的な作家、ラースロー・モホイ=ナジ、舞台芸術の革新者、オスカー・シュレンマーなど気鋭の芸術家が自らの実践と理論をバウハウスでの教育に惜しみなく注ぎこんだ。学生の中から、ヨゼフ・アルバース やヨースト・シュミット、マルセル・ブロイヤー、マックス・ビルのような優れた人材を輩出した。
ヴァイマルのバウハウスは、市議会の右傾化で1925年にデッサウに移転。グロピウスは、自らの設計でバウハウス・デッサウ校舎、マイスターハウスを建設し、1926年に完成した。20世紀モダニズム建築の白眉の一つとされるバウハウス・デッサウ校舎は国際的な反響を呼び、学校の名を世界に轟かせた。やがて、デッサウ市議会でも右翼勢力が優勢となり、バウハウスの閉鎖を議決。3代目校長のミース・ファン・デル・ローエは、バウハウスを私立学校としてベルリンで継続しようと尽力し、1932年10月、ベルリン・シュテーグリッツの旧電話工場で再開したが、1933年7月に閉鎖を決定した。わずか14年間の活動だっがが、現代につながるモダニズムの基礎と造形教育の規範を作ったバウハウスは、今も世界中の建築やデザインなどに影響を与え続いている。