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フレデリック・ワイズマン監督 新作「ボストン市庁舎」
ドキュメンタリー映画の巨匠、米国のフレデリック・ワイズマン監督(1930年生まれ)の新作「ボストン市庁舎」が2021年11月12日(金)から、東京のBunkamuraル・シネマ、名古屋の伏見ミリオン座などで公開される。 全国順次ロードショー。
近年では、「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」が評判となり、2016年、アカデミー名誉賞にも輝いたワイズマンの「集大成」ともいえる作品である。
2020年、フランスの映画批評雑誌「カイエ・デュ・シネマ」でベスト1に選ばれた。 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021インターナショナル・コンペティション部門優秀賞受賞。
新作の舞台は、ワイズマン生誕の地でもあるマサチューセッツ州ボストンの市庁舎。カメラは軽やかに市庁舎の中へ入り込み、市役所の人々とともに街のあちこちへ動きだす。
多様な人種と文化が共存する大都市ボストンで奮闘する市長、マーティン・ウォルシュと市役所職員たち。
映し出されるのは、警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生、結婚、死亡記録、ホームレスの人々の支援、同性婚の承認など、数百種類もの行政サービスを提供する市役所の仕事の舞台裏である。
2018~19年当時、トランプ大統領の米国を深刻な分断化が覆っていた。
だが、アイルランド移民のルーツを持つ労働者階級出身のマーティン・ウォルシュ市長(2021年3月23日から米労働長官)と市職員たちの挑戦を通して、「市民のための市役所」の可能性が見えてくる。
「ここではアメリカ合衆国の問題を解決できません。しかし、一つの都市が変われば、その衝撃が国を変えてゆくのです」と、マーティン・ウォルシュ市長。
ボストンが向き合った諸問題は、長年、ワイズマンが多くの作品で取り上げてきたさまざまなテーマに通じるとともに、日本の公共機関が向き合う課題でもある。
人々がともに幸せに暮らしていくために、なぜ行政が必要なのか。<お役所仕事>という言葉からは想像もできない、一つ一つが驚きとユーモアと問題提起に満ちた場面の数々から、米国民主主義の根幹が見えてくる。
ワイズマン監督の作品は概して長尺。この映画も4時間34分ながら、飽きさせない。人間の多様性を信じ、行政と市民が徹底的に対話する場面が象徴的である。
行政を通じて、人々が共に生きるとはどういうことなのかという姿が生態系のようにいきいきと浮かび上がる。
フレデリック・ワイズマン
FREDERICK WISEMAN
1930年1月1日、ボストン生まれ。現在91歳。イェール大学法学部卒業。67年、初監督であるドキュメンタリー『チチカット・フォーリーズ』以降、さまざまな角度から米国を見つめる傑作を次々に発表。本作までにドキュメンタリー監督作は44を数え、世界の最も偉大なドキュメンタリー作家と称される。近作に『パリ・オペラ座のすべて』『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』などがある。2014年にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞(特別功労賞)、2016年にはアカデミー賞名誉賞、2021年にカンヌ国際映画祭特別賞キャロス・ドールを受賞。
監督の言葉
『ボストン市庁舎』を私が監督したのは、人々がともに幸せに暮らしてゆくために、なぜ行政が必要なのかを映画を通して伝えるためでした。『ボストン市庁舎』では、アメリカがたどってきた多様性の歴史を典型的に示すような人口構成をもつ米国屈指の大都市で、人々の暮らしに必要なさまざまなサービスを提供している市役所の活動を見せています。ボストン市庁舎は、こうした市民サービスを合衆国憲法や民主主義の規範と整合のとれるかたちで提供することを目指しています。
ボストン市庁舎はトランプが体現するものの対極にあります。
ボストン市について(公式サイトより)
ボストン市
米マサチューセッツ州北東部サフォーク郡に位置し、1630年に街づくりが始まった米国で最も歴史の古い街の1つ。現在、市民の半数以上を黒人、ヒスパニック、アジア系の有色人種が占める。トップレベルの高等教育機関を抱え、ボストン・レッドソックス、ボストン・セルティックスなどの名門スポーツチームを有する。
ボストン市庁舎
現在の市庁舎は、カルマン・マキンネル&ノウルズ設計により1968年竣工。当時のモダニズムの代表的建築物として知られる。
マサチューセッツ州会議事堂
建築家チャールズ・ブルフィンチによる設計で1798年竣工。フェデラル様式の名作の1つで国定歴史建造物に認定。
バンカーヒル記念塔
バンカーヒルの戦いを記念し、1825年から17年の歳月を費やして建てられた米国最初のオベリスク。
カスタムハウス・タワー
金融街マッキンリースクエアにある金融ビル。17世紀に建設されたカスタムハウスの一部で1915年に追加された。