報道によると、1960年代後半の米国を中心に興隆したミニマル・アートの代表的な彫刻家、詩人のカール・アンドレさんが2024年1月24日、死去した。88歳だった。
DIC川村記念美術館で2024年3月9日-6月30日、「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」が開催される。日本の美術館での初めての個展となる。
名古屋では、愛知県美術館で2022年に開催された「ミニマル/コンセプチュアル」に作品が展示された。
1935年 、米マサチューセッツ州クインシー生まれ。1950年代から、コンスタンティン・ブランクーシの彫刻に影響を受け、1958-59年、フランク・ステラとアトリエを共有。当時のステラの最小限に純化された画面構成にも影響を受けた。
1966年、耐火レンガをつなげて床に1列に置いた「レヴァー」を発表。以後、ブロックのほか金属、石など、素材を加工しないで、そのまま床に広げた作品を発表し、彫刻の形態と配置に新しい可能性を開いた。
常に展示される空間を考慮して現場で構想され、展示空間のサイズ、採光などと関連を持った、サイトスペシフィックなインスタレーション作品となった。
前衛的な詩の作品も発表。ベトナム戦争に反対する運動にも積極的にかかわるなど政治的な関心も強かった。
1970年には「第10回日本国際美術展(東京ビエンナーレ): 人間と物質」の招聘作家として来日。
DIC川村記念美術館での「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」では、同一の形と大きさに加工した木、金属、石のユニットを床に直接置き、規則的に広がるアンドレの典型的な彫刻作品を大きな空間で展開する。
無機質な印象とは裏腹に、実際の作品を前にすると物質の手ざわりや重量感、汚れや傷、錆といった素材そのままの大らかな姿を見ることができる。
上を歩くことも許される能動的な鑑賞体験は、「場としての彫刻」というアンドレの言葉の意味する、作品と空間、そしてそれを知覚する自分の存在を感じる機会となる。
アンドレの詩も、まとまったかたちで紹介する貴重な機会となる。単語を組み合わせて構成されるアンドレの詩は、読むことでも眺めることでも楽しめる。
彫刻に通ずるアンドレの空間的、構造的な認識や、歴史、哲学への興味、原風景である地元クインシーへの愛着、身近な人々との関係などアンドレの思考が反映されている。