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「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」「アンティゴネ」は中止、「ストレンジシード静岡」も延期

 SPAC-静岡県舞台芸術センター2020年4月3日、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ゴールデンウィーク期間中に開催予定だった「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」ふじのくに野外芸術フェスタ2020静岡『アンティゴネ』の全公演の中止を発表した。同時開催のストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」は延期することを決めた。
 こうした状況下、SPACは何ができるのかを考え、予定された演劇祭の会期中、「くものうえ↑↓せかい演劇祭2020」(World Theatre Festival on the Cloud)を開催する。「ふじのくに⇄せかい演劇祭」の目的である「演劇によって地域と世界が直接つながり交流する」ことを可能な範囲で目指す。プログラムは、4月10日以降順次発表する。

 同感染症の世界的な流行で出入国が大幅に制限され、アーティストの来日が不可能になったのを受け、海外からの招聘作品の上演を断念。大都市圏を中心に国内でも感染者が増加し、都道府県を越えての移動の自粛が要請されるなか、各地から多くの来場者が見込まれる宮城聰演出『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』『アンティゴネ』についても、公演を断念した。

詳細は、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」特設サイト、ふじのくに野外芸術フェスタ2020静岡『アンティゴネ』特設ページ、ストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」公式サイト

宮城聰SPAC芸術総監督のコメント全文

わたしたち SPAC は、わたしたちの周りに「演劇を必要としている」人たちがいることを ひしひしと感じています。
人生を豊かに生きるためには必要だ、という人がいて、また、それがないと水を失った 植物のように精神がひからびてしまうという人もいます。
そのような方々にとって、演劇は精神の栄養であり、魂の水です。
わたしたちはつねに、演劇を必要としている方がひとりでもいるうちは演劇を届け続け なければならないと考えてきました。そして今回の危機が人々をいっそう孤立させるなか、 その必要はますますふくらんでいると感じていたのです。
しかし今、わたしたち SPAC は、今年の演劇祭の中止を決断いたしました。すべての海外 演目の渡航が不可能に なっても SPAC の作品だけは上演する、と考えてきましたが、その砦 も放棄することに決めました。
それは、今、俳優が集まって演劇の稽古をすることが、わたしたちの周りの人たちの身 体的危険を増やす可能性がある、と判断したからです。
演劇、舞台芸術のもっとも基本的な定義は「生身の人と人が向き合うこと」です。いま 生きているヒトのからだが全身から発している膨大な情報を、なるべくたくさん交換し合 うことです。
だから演劇をつくっている者たちにとって、稽古場に集まることを断念するということ は、自分の根を土から引き抜いてしまう ことです。栄養も水も絶たれることです。
しかし今、そうするしかないと判断を下しました。そして、観客の皆さんと、
SPAC のわ たしたちが、ともに「演劇を必要としているのに、演劇を絶たれた」者となりました。わ たしたちは皆さんに演劇を届けることができなくなりました。
そこでこれからは、「演劇を絶たれた状態で、どうやって生き延びるか」を、皆さんとと もに発明しようと思います。
俳優はもはや稽古場ではなく、各自の部屋にいます。これほど物理的に切り離された状 態で、わたしたちは何ができるでしょうか?でも何かできなければな りません。絶望に沈 まず、せかいと繋がり続けるために。精神を枯らさないために。今をもちこたえるために。
地球のあちこちで、やはり演劇を失ってなお耐えている、おおぜいの孤独な魂と連帯す るために。
いまのいま必要な、演劇みたいな何か、を、きっとみつけて、お届けします。
                     2020 年 4 月 3 日
                      SPAC 芸術総監督 宮城聰


「ストレンジシード静岡」 フェスティバルディレクター ウォーリー木下さん のコメント全文

「一旦、止まる。」
主催者である静岡市と協議の上、5月2日~5日に実施予定だったストレンジシード静岡を、延期にすることにしました。 新型コロナウイルスの感染を抑止するためには、人の集まりを減らすことが肝要です。 ストレンジシード静岡の場合は、日本全国から人が集まります。 現時点で全国規模での終息には至っていない点、静岡市が主催する公的イベントであること、不特定多数が集まることなど、この時期での開催は、観客を含めた一般市民のみなさまの安全を考慮すると、実施困難であると判断しました。 しかし2020年度中には、叶うならばこの出演者の皆さんと一緒にストレンジシード静岡を行いたいと考えています。 しばらくは感染者数の推移を見ながら、なるべく早目にその時期を発表いたします。 また、この感染拡大期の中、緊急時における芸術文化への世間の目や関心(もしくは不寛容)はより可視化され、そもそもこの国において、なぜ芸術が必要なのか、という問いかけは今後ますます重要になっていくと痛切に感じました。 静岡市が提唱する「まちは劇場」というプロジェクトは、国内では例のないまちづくりのコンセプトであり、またストレンジシード静岡は、舞台芸術の社会への必要性を投げかける大きな問いかけになるフェスティバルだと自負しています。 だからこそ、ここは、一旦止まり、より強固でより新しいフェスへの一歩を踏み出すエネルギーを溜めたいと思います。 アーティストの皆さんは、膨らんだ想像を萎ませずに心身ともに元気でいてください。 すでに聞いている構想やアイデアにわくわくしていました。必ず静岡で実現させたいです。 観客のみなさんは、静岡の街で行われる「パフォーミングアーツの遊び」を、より安全に楽しめる日が来るまでしばしお待ちください。 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症に罹患されお亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様には哀悼の意を表するとともに、いまだ症状に苦しまれている方々に心よりお見舞い申し上げます。
 
 2020年4月3日 ストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」 フェスティバルディレクター ウォーリー木下



静岡県の川勝平太知事のコメント

残念ながら、今年の「ふじのくに せかい演劇祭」は中止となりました。
しかし、演劇は人の心をつなぐチカラを発揮するものです。人と人が切り離されて孤独に なっているいま、観客は劇場には集まれませんが、 SPAC からは日々メッセージを発信し ていきます。皆さんも、心と心をつなぐために、ぜひアクセスしてみてください。
                   令和2年4月3日 静岡県知事 川勝平太

ふじのくにせかい演劇祭
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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