朝日新聞(WEB)などによると、フランスの現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーさんが2021年7月14日、がんのため、パリの病院で亡くなった。76歳だった。
1944年、パリ生まれ。1950年代半ばから独学で絵画を学び、表現主義的な作品を描いた。1960年代後半以降、短編フィルム作品や写真の制作を始め、1972年、ハラルド・ゼーマンが芸術監督を務めた「ドクメンタ5」に参加。自己や他者の記憶をテーマにし、注目を集めた。
1980年代には、明かりによるインスタレーションで宗教的なテーマに取り組み、国際的な評価を獲得。歴史や記憶、人間の存在の痕跡や不在、生と死をテーマに、世界各地の国際展で作品を発表してきた。
子供の肖像写真に電球の光を当てて祭壇を作った「モニュメント」シリーズ(1985年~)、 大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)などがある。
ボルタンスキー自身がユダヤ系の父を持つことから、肖像写真を集合的に展示する手法は、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺の犠牲者のイメージをも想起させた。
1990~91年にICA名古屋と水戸芸術館現代美術ギャラリーで日本での初個展を開催。その後、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などにも参加した。
2016年、東京都庭園美術館で個展「アニミタス-さざめく亡霊たち」を開催。2019-2020年には、 国立国際美術館、国立新美術館、長崎県美術館の3館によって、大規模な回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」 が開かれた。
香川・豊島で、 2010年に、世界中の心臓音を集めた「心臓音のアーカイブ」、2016年に、森林の中で無数の風鈴が風に揺れ動き、静かな音を奏でるインスタレーション「ささやきの森」を公開した。
2006年、第18回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。