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都市の方舟/Arc of The City 金山南ビル美術館棟でオンラインアート展

我々は何に乗り何処へ行くのか? 旧ボストン美術館で開催

 名古屋市の金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)に現代美術作品を展示した「都市の方舟/Arc of The City 我々は何に乗り何処へ行くのか?」が2021年1月、観客限定で開催された。

 一般向けには、2021 年2 月1 日午前10 時から、主催する名古屋市が、公式ウェブサイトに「金山南ビル美術館棟」のページを新設して公開する(併せて、パフォーミングアーツ版の「The Other Side – Nov.2020 | Online Live Performance」= 演出・構成・映像:伏木啓、空間構成・装置:井垣理史、音楽・音響:鈴木悦久、ピアノ:山田亮、出演:髙木理恵、てらにしあい=も公開される)。

 名古屋市の新設ページはこちら。ほかに、N-markのWEBサイトでも公開している。

 映像公開は、米国シリコンバレーにあるベンチャー企業Matterport社の仕組みを使っている。バーチャルツアー、3Dウォークスルーなどとも呼ばれる。

 臨場感あふれる画像で、旧名古屋ボストン美術館での現代アート展示のバーチャル鑑賞ツアーを体験できる。

 Matterport社の仕組みは、2020年、東京国立近代美術館であったピーター・ドイグ展でも活用された。無料のVRリンクを参照。

中川運河ARToC10の出品者らが展示

 今回、出品したのは、名古屋市の中心部と名古屋港を結ぶ中川運河の活性化を目的に、名古屋都市センターが2013年度から取り組む中川運河再生文化芸術活動助成事業「中川運河助成ARToC10」に過去に参加したアーティストらである。

 このプロジェクトでは、リンナイ(中川区)の寄付金を原資に10年間の計画で芸術家などに助成している。

 今回の展覧会では、アーティストらが、中川運河で見せた作品、または新作や別の旧作を出品した。

 名古屋市が展覧会などに短期で貸し出す方針を示し、2021年2~5月、バンクシー展が開かれる旧名古屋ボストン美術館の活用実例案でもある。

 名古屋市が、2018年10 月から未活用となっている金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)の活用策を検討する中で、建物内の映像を制作・公開。今後、事業者がスペースの利用を検討する際の参考にしてもらう。

 今回、展示をオーガナイズしたN-markは、ARToC10の助成団体の1つ。

 筆者は、1月中旬にあった観客限定の内覧会に参加し、取材した。

 

 もともと米国ボストン美術館の作品用に設置したガラスケースの仕切りをなくすなど開放的に変貌させた空間のさまざまな場所に、立体、インスタレーション、絵画など現代美術を配置。多様な展示の可能性を示した。

 N-markによる動画がYouTubeにアップされている。

宮本宗

宮本宗
「星屑の荒野」

 宮本宗さんは1985年、三重県生まれ。2012年、愛知県立芸術大学大学院彫刻領域を修了。

 12基の鉄塔を展示室の床やガラスケース内に展示した。

加藤マンヤ

加藤マンヤ
「フリクション」(2002年)

 加藤マンヤさんは1962年、愛知県豊田市生まれ。 Nottingham Trent University, England. M.A.修了 。

 信号の青、赤がとどまることなく連続的に交互点滅する。

「ダブル・モノローグ」(2008年)

 2つの水槽が並ぶ。それぞれの水槽からもう1つの水槽へと等量の水が交差するように噴出する。

浅井雅弘

浅井雅弘
「Fake Existence[KURONOZ]」

 浅井雅弘さんは1985年、名古屋市生まれ。2012年、名古屋芸術大学大学院同時代表現研究修了。

 KURONOZのシリーズは、幾人ものモデルが黒髪、黒眼鏡、青ワンピース、マスク姿のクローン写真として、リアルかつ浮遊感のある存在/不在として、展示空間の各所に配置されている。

浅井雅弘
「Fake Existence[real-KURONOZ]2021》くろのさん」

浅井雅弘
「wild vegetables」

 精妙に撮られた大根の写真を切り抜いて、床から生えているように見せている。

浅井雅弘
「これはキュウリの写真です」

河村陽介

「アメンボライダー」

 河村陽介さんは 1977年、名古屋市生まれ。2000年、愛知県立芸術大学を卒業。2002年、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)を修了。

 2005年から、フィールドワークの拡張として移動型多目的空間MOBIUMの運営を開始。コラボレーションによる、地域を移動しながらの文化交流を展開する。

 中川運河にふさわしい、水上を移動する自転車である。

野田智之

野田智之
「RHINOCEROS」

 

 野田智之さんは1974年、愛知県生まれ。2000年、大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修了。

 ブルドーザーをイメージしたキネティック・アート。轟音とともに動く。

野田智之
「A dog barks」

 犬が天使を追いかける場面を表したキネティック・アート。

野田智之
「STONES OERFORMERS」

野田智之
「アートドール」

 旧ボストン美術館のミュージアムショップ跡に展示された人形群。

クレメンスメッツラー

クレメンスメッツラー
「運河のリズム・シリーズ」

 クレメンスメッツラーさんは1965年、ドイツ生まれ、愛知県在住のアーティスト。

 古き良き時代の中川運河の写真を基に、イラスト的な表現として展開。懐かしくも未来的な異空間へと変容させる。

クレメンスメッツラー
「運河のリズム・シリーズ」

クレメンスメッツラー
「運河のリズム・シリーズ」

クレメンスメッツラー
「運河のリズム・シリーズ」

武藤勇

武藤勇
「都市ノ泥太郎」

 武藤勇さんは、N-markを運営。中川運河の泥のイメージから、名古屋黒紋付染を手がける山勝染工の協力で、絞り染めによって顔のイメージを表出させた。

坂本和也

坂本和也

 坂本和也さんは1985年、鳥取県米子市生まれ。愛知県在住。2014年、名古屋芸術大学大学院美術研究科美術専攻同時代表現研究領域修了。2017-18年、文化庁新進芸術家海外研修制度で台北に派遣。

 水草をモチーフに、濃密な筆触が増殖、蝟集するオールオーバーな絵画を描いている。

坂本和也

前川宗睦

前川宗睦

 前川宗睦さんは1986年、愛知県生まれ。名古屋芸術大学大学院修了。

 アクリル絵具でカーペットに巨大な自分の足の裏を描いた床置きの絵画。

天野入華

天野入華
「Creatures」

 天野入華さんは1984年、愛知県生まれ。2009年、名古屋造形大学デザイン科卒業。

 銅線を空間に浮遊させたインスタレーションで、植物をイメージした繊細な作品である。

日笠保

日笠保
「ナカガワ・アートキャンプ@旧ボストン美術館」

 日笠保さんは1963年、北海道生まれ。1989年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了。

 ワークショップの成果と思われる、さまざまなイメージが描かれたテントを展開。

 

杉山享平

杉山享平
「女子高生-a」「女子高生-b」

 杉山享平さんは1994 年、三重県生まれ。2018年、愛知県立芸術大学彫刻専攻卒業。

 旧名古屋ボストン美術館の受付を使ったインスタレーション。

企画:N-mark
芸術監督:武藤 勇
会場設営:水野 茂朋、桂川 大
ビジュアルデザイン:伊藤 博和
ウェブデザイン:野田 利也
VR撮影:加藤 良将
特別協力:福島 奏、岡田 青空、久野 裕美子、宮島 和美、尾國 裕子
協力:一般社団法人日本イベント協会中部本部、山勝染工株式会社、エイトデザイン
株式会社、nca|nichido contemporary art、株式会社T&Tアド

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

 

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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