報道によると、世界的な左派知識人でイタリアの政治哲学者のアントニオ・ネグリさんが2023年12月15日、フランス・パリで死去した。90歳だった。
高弟のマイケル・ハートとの2000年刊行の共著書『〈帝国〉―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』で知られ、2011年の米ウォール街占拠運動にも影響を与えた。
1933年、イタリア・パドバ生まれ。
同書では、グローバル資本主義の拡大と従来の国民国家の衰退に根ざす今日の帝国的な権力は、人間の日常生活の中へネットワーク的に浸透していると説明。その脅威への抵抗の可能性を「マルチチュード(群衆)」に見いだした。
現代美術をはじめとする文化領域においても、ネグリさんらの思想は問題意識として共有された。
2008年には、東京大学、京都大学、東京芸術大学で来日講演が企画されたが、来日直前に日本の外務省からビザ申請を求められ、来日が断念された。8大学の研究者19人が事実上の入国拒否であり、思想・良心の自由の侵害だとして抗議声明を出した。
著書に、『構成的権力』(松籟社, 1999年)、『未来への帰還』(インパクト出版会, 1999年)、『転覆の政治学』(現代企画室, 2000年)、『ネグリ生政治的自伝』(作品社, 2003年)、『マルクスを超えるマルクス』(作品社, 2003年)、『〈帝国〉をめぐる五つの講義』(青土社, 2004年)、『ヨブ 奴隷の力』(世界書院, 2004年)、『芸術とマルチチュード』(月曜社、2007年)。フェリックス・ガタリとの共著に『自由の新たな空間』(朝日出版社, 1986年)、マイケル・ハートとの共著に『〈帝国〉』(以文社, 2003年)、『マルチチュード』全2巻(日本放送出版協会,2005年)など。