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秋元はづき油彩個展 ギャラリーヴァルール(名古屋)で7月17日まで

ギャラリーヴァルール(名古屋) 2021年6月22日〜7月17日

秋元はづきGallery Valeur

 秋元はづきさんは2016年、名古屋芸術大学美術学部美術学科洋画コース卒業。

 Valeurでの個展のほか、グループ展にも出品。2018年の「FACE2018 損保ジャパン日本興亜美術賞」、2021年の「明日をひらく絵画 第39回 上野の森美術館大賞展」などに入選している。

秋元はづき

 秋元さんの作品を見るのは初めてだが、SNSで公開された個展会場の雰囲気がとても晴朗な感じだったので、早く実見したいという気持ちがあった。

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 会場を訪れると、やはり色彩がとてもきれいで、明るく、それぞれの形象がユーモラスだった。

秋元はづき

 主に、地をアクリル絵具、図は油絵具で描いて強調している。小品は水彩を使っている。

 画面が活気に満ち、玩具箱か宝石箱をひっくり返したように、さまざまな物、すなわち、生き物や無生物、図形のような形象が等価にばらまかれたような空間である。

 見ているだけで元気が出てくる作品で、筆者はこうした作品は理屈抜きに好きである。ちなみに、秋元さんは、ポップアートが好きとのことである。

秋元はづき

 それぞれの形象は、相互に関わりあっているというより、空間的にも意味合い的にもフラットに並べられている感覚に近い。つまり、物語性があるわけではない。

 生き物や自然、鉱石、工業製品など、さまざまなものがあるが、ほとんどが線だけの表現やベタ塗りなどで、あえて現実感や奥行きを捨象しているのである。

 もちろん、地に対して、図が散らばっていて、形象の重なりや、立体的な表現もあるが、空間的な深浅や強弱は際立たないようにしてある。

秋元はづき

 つまり、さまざまな物のすべてが均等に存在を認められている趣きで、縦関係のヒエラルキーがない。それが気持ちのよい絵画空間につながっている。

​ それぞれの形象がまったく関係性がないわけではないが、相互の支配関係、所有関係がなく、対等に自分の居場所を確保して、息づいているのである。

 多種多様な形象、生命力を喚起するような色彩が、いっそう、そうした感覚を強めている。

秋元はづき

 だから、秋元さんが言う「『白』か『黒』でもなく、普遍的で、ニュートラルで、だれも傷つかなくて、『あの世』でも『この世』でもないところ」というのは、分かる気がする。

 秋元さんの作品では、人間が描かれないし、むしろ、人間以外の鳥やヘビなどの生物や、無生物がモチーフである。

秋元はづき

 つまり、人間中心主義でない世界、言い換えると、人間や、自分のことを中心に考える人間中心的世界観ではない生命中心主義、もっというと、動植物や無生物、宇宙をも含むフラットな感覚が秋元さんにはあるようである。

 一見、ファンタジーに見えて、そうした支配でなく横に展開していくような感覚的世界には、現代のさまざまな課題に向き合う中で、考えさせられることが多々ある。

秋元はづき

 画面は、線が強調され、立体感は出さない。むしろ、生物も無生物も躍動する感覚、リズムと色彩相互の関係によって、生き生きとしている世界である。

 この絵画世界がさらに深まることを期待したい。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治) 

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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