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あいちトリエンナーレ映像プログラム発表

 8月から始まる「あいちトリエンナーレ2019」の映像プログラムの全容が発表された。9月15〜29日、名古屋・栄の愛知芸術文化センター12階、アートスペースAを会場に、国内外の14組の15作品を上映する。今年のカンヌ国際映画祭批評家週間の特別招待部門に正式出品された富田克也監督の「典座−TENZO−」など、日本初上映となる3作品と新作映像1作品を含む。

 愛知芸術文化センターでの鑑賞には国際現代美術展のチケットが必要。8月9日には、名古屋のミッドランドスクエアシネマでの特別オールナイト上映で5作品を紹介する。2000円。

 このうち、吉開菜央さんの「Grand Bouquet」は2018年6月〜19年3月、東京・NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で上映された際、施設を運営するNTT東日本側の要請で一部黒塗りでの公開となり、美術評論家連盟から、改変に対し公開質問状が出されるなど物議をかもした作品だ。今年のカンヌ国際映画祭監督週間では完全版で上映され、今回も完全版。

吉開菜央さんの「Grand Bouquet」
「Grand Bouquet」(2019年)© 吉開菜央

 また、「典座」は映像制作集団・空族の最新作。全国曹洞宗青年会の実際の僧侶が出演し、東日本大震災以後の苦悩とともに仏教や信仰の意義を問う。

 富田克也監督は、甲府市を舞台に地方都市の閉塞感を描いた「サウダーヂ」(2011年)で注目。2016年には、戦後のアジアでの多重的な支配構造と欲望、格差と日本の過去、現在をえぐり出した「バンコクナイツ」でも脚光を浴びた。「バンコクナイツ」は、タイで移動距離4000キロのオールロケを敢行、現地の人々との密接なつながりの中で撮影された。

『典座 -TENZO-』 2019 © 全国曹洞宗青年会
「典座 -TENZO-」( 2019年) © 全国曹洞宗青年会

 「ホドロフスキーのサイコマジック」は、ホドロフスキーが考案したアートとしての心理療法の様子を紹介する映画体験。過去の映像素材も加えてホドロフスキー映画のシーンが心理療法で貫かれていることを解き明かす。クレール・ドゥニの「ハイ・ライフ」は、ドゥニ初のSF映画で、美術監修として現代美術家のオラファー・エリアソンが参加。「空に聞く」(愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品)は、小森はるか監督が東日本大震災後、陸前高田災害FMでパーソナリティを務めた女性を追ったドキュメンタリー。語られることと忘れられてゆくことが丹念に記録され、真摯な「慰霊」の態度が垣間見える。

『ホドロフスキーのサイコマジック』 2019 © Pascale Montandon-Jodorowsky
「ホドロフスキーのサイコマジック」( 2019年) © Pascale Montandon-Jodorowsky

 ミロ・ラウの「コンゴ裁判」は、紛争や虐殺が続くコンゴで当事者たちに本人役で出演を依頼し、演劇として行った模擬裁判。演劇とジャーナリズムが交差し、腐敗、癒着、収奪、強姦、抵抗、虐殺、汚染の事実が浮き彫りとなる。今年のふじのくにせかい演劇祭(静岡市)でも上映された。また、レニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」「美の祭典」は、1936年にナチス政権下のドイツで開催された夏季オリンピック・ベルリン大会の公式記録映画「オリンピア」の第1部と2部。当時の先端的な映像表現と、美的に演出されたイメージ、プロパガンダへの利用などによって批評的な論点を内在させている。

 愛知芸術文化センターでの上映作品は次の通り。
 「ウロボロス」バスマ・アルシャリフ(77分/2017)、「デトロイト」キャスリン・ビグロー(142分/2017)、「共犯者たち」チェ・スンホ(105分/2017)、「A Day in the Aichi(仮)」カンパニー松尾(新作、未定/2019)、「ハイ・ライフ」クレール・ドゥニ(113分/2018)、「夜明け」広瀬奈々子(113分/2019)、「ホドロフスキーのサイコマジック」アレハンドロ・ホドロフスキー(日本初上映、100分/2019)、「空に聞く」(愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品)小森はるか(75分/2018)、「コンゴ裁判」ミロ・ラウ(105分/2017)、「民族の祭典」(「オリンピア」第一部)レニ・リーフェンシュタール(138分/1938)、「美の祭典」(「オリンピア」第二部)レニ・リーフェンシュタール(97分/1938)、「愛と法」戸田ひかる(94分/2017)、「さよならテレビ」東海テレビ放送(77分/2018)、「典座−TENZO−」富田克也(日本初上映、62分/2019)、「Grand Bouquet」吉開菜央(日本初上映、15分/2019)
 
 また、ミッドランドスクエアシネマでの特別オールナイト上映は、8月9日午後9時から10日午前6時ごろまで。
上映作品は、「グレイテスト・ショーマン」マイケル・グレイシー(104分/2017)、「search/サーチ」アニーシュ・チャガンティ(102分/2018)、「メッセージ」ドゥニ・ヴィルヌーヴ(116分/2016)、「典座−TENZO−」富田克也(62分/2019)、「Grand Bouquet」吉開菜央(15分/2019)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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