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国際芸術祭「あいち2022」のテーマを決定 STILL ALIVE

STILL ALIVE 今、を生き抜くアートのちから

 愛知県で2022年に開かれる「国際芸術祭『あいち2022』」の組織委員会が2020年12月22日、芸術祭のテーマを「STILL ALIVE 今、を生き抜くアートのちから」にすると発表した。その後、2021年3月に発表された企画概要(開催期間、企画体制など)はこちら

 「あいちトリエンナーレ」から名称変更した「国際芸術祭『あいち2022』」の芸術監督、片岡真実さんがこの日、記者会見をし、テーマとコンセプトを提示。

 パンデミックからの回復期に開かれる芸術祭として、「いかに持続可能な未来を共につくりあげられるのかを考える」というコンセプトを明らかにした。

 片岡さんは、未曾有のパンデミックを経験したポストコロナの芸術祭となる「あいち2022」のテーマ「STILL ALIVE(いまだ生きている)」を、愛知県出身で世界的に評価されるコンセプチュアル・アーティスト、河原温さん(1932〜2014年)の作品から着想した。

 河原さんは1970年代以降、電報で自身の生存を「I AM STILL ALIVE」シリーズで発信し続けた。

 「あいち2022」は、この「STILL ALIVE」を多角的に解釈する。過去、現在、未来という時間軸を往来しながら、現代美術の源流を再訪すると同時に、類型化されてきた領域の狭間にも注目。愛知県の歴史、地場産業、伝統文化の再発見、生きることの根源的な意味をも考える。

 世界の現代美術の底流をなすコンセプチュアル・アート、文字を使った美術表現やポエトリー(詩)、現代美術とパフォーミング・アーツを横断する表現などにも光を当てる。

 多様なラーニング・プログラムを通して、不確かさや未知の世界、多様な価値観、圧倒的な美しさと出合う場を目指す。

9つのビジョン

 「あいち2022」の全体を構成する9つのビジョンを掲げた。

過去から未来への時間軸を往来しながら「STILL ALIVE」を考える

100万年後の未来における地球や人間の存続を考える

100年後、100万年後の未来にも地球が美しく存続し、人類が平和に生きるための意識喚起や提案を重視。環境問題やサステナビリティへの意識は、「あいち2022」の前身、「あいちトリエンナーレ」が、2005年の愛知万博「愛・地球博」のレガシーとして創設された歴史を継承するものである。

過去の多様な物語をいかに現代に蘇らせるのかを考える

世界各地のローカルな文脈を現代に照らして再考。「あいち2022」では、世界の多様な物語を現代に蘇らせる。

現代を、この瞬間を、どう生き抜くのかを考える

2020年のパンデミックが引き起こした未曾有の健康危機、コロナ禍によって表面化した人種、ジェンダー、民族的な差異に対する差別や不平等は、「命の重さ」を改めて考えさせた。「あいち2022」では、「生きること」と芸術制作が強く結びついた力強い表現を通して、困難な時代の「生」について考える。

現代美術の源流を再訪しつつ、類型化されてきた芸術分野の狭間に光を当てる

コンセプチュアル・アートの源流を再訪する

河原温が「I AM STILL ALIVE」シリーズを始めた1970年代は、視覚的な表現より、概念や意味を重視する概念芸術(コンセプチュアル・アート)が花開いた。愛知県からは河原温、荒川修作など国際的に評価されたコンセプチュアル・アーティストが輩出した。「あいち2022」では、世界各地のコンセプチュアル・アートに光を当てる。

伝統工芸、先住民の芸術表現などを現代芸術の文脈から再考する

愛知県には、地場産業、伝統工芸、食文化など固有の文化的伝統がある。近年では多様な文化圏における近代美術の発展が再考され、工芸と美術を横断する表現、先住民族の芸術表現なども再評価されている。「あいち2022」では、こうした芸術領域を固定概念から解放し、同時代に生きる表現として再考する。

言葉と記号による芸術表現を再考する

河原温は「I AM STILL ALIVE」シリーズのほかにも、日付や起床時間など数字や言葉を使った作品を残している。「あいち2022」では、文字を使った美術表現やポエトリー(詩)の領域にも注目する。

身体表現や五感でアートを体感する

身体表現や五感で体感する表現などは、生きていることを直接的に実感させる。「あいち2022」では、現代美術とパフォーミング・アーツという領域が共存してきたあいちトリエンナーレの歴史を踏襲しつつ、現代美術の文脈で語られてきたパフォーマンス・アートに注目する。個々の領域の枠組みや空間にとらわれず、有機的に融合するかたちを模索する。

生きることは学び続けること。未知の世界、多様な価値観、圧倒的な美しさと出会う

ラーニング・プログラムを通じて、体験や感動を未来に継承

「あいち2022」では、さまざまなラーニング・プログラムを通して、作品をより深く理解し、体験や感動が記憶に刻まれ、人生に生かされる知恵や知識、精神の糧となるよう取り組む。

美しさに心を動かす

国際芸術祭「あいち2022」は、芸術の圧倒的な美しさに感動し、人生のどの一瞬にあっても明日を生きるためのポジティブなエネルギーにつながる、心躍る出会いや体験の場になることを目指す。

 コンセプトの全文は、国際芸術祭「あいち2022」のWEBサイトで読むことができる。

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>文化とメディア—書くこと、伝えることについて

文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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