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あいちトリエンナーレ 朝日新聞が津田芸術監督にインタビュー

 2019年8月21日の朝日新聞朝刊が、「表現の不自由展・その後」の中止で混乱する「あいちトリエンナーレ2019」の津田大介芸術監督へのインタビュー記事を、オピニオンページ1面を使って掲載した。津田芸術監督の発言要旨は以下の通り。
 展示中止の判断をしたのは、現場職員の危機的な混乱と、観客の安全が理由。ガソリンを使ったテロを示唆した脅迫以外にも、恫喝の電話等もあった。「表現の不自由展・その後」に批判や攻撃が殺到した背景には、日韓関係の急速な悪化、政治家の相次ぐ発言、京都アニメーション放火事件の影響がある。
 平和の少女像と、昭和天皇の肖像が燃える映像作品への批判は同じぐらい強かった。展示内容を検討する際、リスク(インタビュアーは、皇族の処刑シーンを含む小説を掲載した出版社の関係者が殺傷された1961年の嶋中事件、昭和天皇に戦争責任があると発言した本島等・長崎市長が銃撃された90年の事件を例示)はあると認識したが、最終的には、アーティストの表現を守る立場で行動した。行政が運営する美術館で作品撤去問題が起こっている中、2015年に民間施設で開かれた「表現の不自由展」がパブリック・セクターでもできるというモデルケースをつくりたいと考えた。
 日本では、政治家の検閲のほかに、現場が忖度したり、トラブルを避けようとしたりする集団的な自己検閲がある。(「トリエンナーレが表現の自由を後退させたのでは?」との質問に対して)警備など莫大なコストをかけないと表現ができないという現実は、既に表現の自由が後退していることを示しているのではないか。
 「表現の不自由展・その後」再開の条件は5つ。①ガソリン・テロなどの脅迫犯の逮捕②警備強化③電話抗議への対応整備④検証委の中間報告⑤オープンな議論と、何を目指すべきかの認識の共有。
 今回、税金を投入した文化事業に政治家や行政が口を出すのは当然だと考える人が多いということが可視化された。
 残りの会期で表現の自由が何かを示せないと失敗になる。中止になった「表現の不自由展・その後」以外の作品にも光を当て、毀損された表現の自由をリカバリーするため、作家たちと議論する。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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