2020年8月5日の朝日新聞(WEB)、中日新聞などによると、2019年8月から10月にかけて開催された「あいちトリエンナーレ2019」の負担金の一部を名古屋市が支払わないのは不当だとして、トリエンナーレの実行委員会(会長・大村秀章愛知県知事)が名古屋市に対して、約3380万円の支払いを求めた訴訟の第1回口頭弁論が2020年8月5日、名古屋地裁であった。
愛知県が、名古屋市の負担金不払いが不当としたのに対して、名古屋市は、請求の却下と棄却を求め、争う姿勢を示した。 名古屋市の河村たかし市長も出廷。約1時間にも及ぶ異例の長さの意見陳述で、「政治的に偏った作品の展示が公共事業として適正なのか。問題は公金の使い道であり、表現の自由ではない」などと述べた。
名古屋市は、負担金として交付を決めた約1億7千万円のうち、2019年7月までに約1億3700万円は支払ったが、「政治的中立性を著しく害する作品を含む内容・詳細が全く告知されていなかった」とし、市検証委員会の報告を受け、2020年3月に、一部負担金の不払いを決定。残りの3380万円は支払っていない。県側には、2020年3月に減額変更通知が届いたという。
あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」に、慰安婦を象徴した少女像や、昭和天皇の肖像などが燃える映像作品が展示されたことに対して、実行委会長代行である河村たかし名古屋市長が公金の支出を疑問視し、反発。市検証委も2020年3月、未払い分を「支払わないのはやむをえない」とする報告書をまとめた経緯がある。
実行委は、「芸術祭の開催意義は十分に達成されており、市が主張する『事情の変更により特別の必要が生じた』には当たらない」と主張している。
一方、名古屋市は、「司法の公正な判断を仰ぐことが最善」とし、実行委が提訴のための要件を欠いているなどとしている。また、提訴が適法だとしても、不自由展の作品には「多くの観覧者にとってハラスメントに該当するものが含まれている」「公共事業としてふさわしくない作品の展示を助成するのは法令違反になる」「著しく偏向した政治的主張を含み、観覧者に甚だしい不快感を抱かせる作品展示に対し、公金を支出するのは法令違反となる」と反論している。
2020年8月5日の毎日新聞(WEB)などによると、河村市長は報道陣に「今後も可能な限り(裁判に)出席する。大村知事にも出てきてほしい」と話したという。
また、2020年8月6日の中日新聞によると、市側は、大村知事の証人尋問を求める方針。
同紙によると、河村市長、大村知事とも、互いに譲らず、対立を強めている。
同紙によると、河村市長は、法廷に、新型コロナウイルスの感染防止のためのフェースシールドを着けて出席。時々、語気を強めながら、意見陳述書を読み上げた。その中で、慰安婦を象徴する少女像などの展示について、大村知事の公務員としての政治的中立性を問いただし、「法廷で大村知事に説明してほしい」と訴える場面もあったという。
また、訴訟が、コロナ禍で愛知県対名古屋市という不幸な対立構造になったことに触れ、中日新聞のトリエンナーレを巡る報道についても、「一方的、断定的」と批判したという。